• ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版
  • 日経BP

027|急いでやる仕事にろくな仕事はない
寝かせるマネージメント

2011年1月11日(火)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 年末のある日のことです。マンションのエレベーターで乗り合わせた若い主婦が、行き先階のボタンをゲームのごとく早押しし続けていました。いらつく主婦。閉まらないドア。たかが2~3秒のことなのに待つことができない。エレベーターのボタンは、そのような早押しには対応せず、結果エレベーターは動いてくれません。

 それはまったく美しくない光景でした。何を急いでいたのでしょうか。その指の動きを見ていると、もしかして特に急ぎの用があるわけではなく、彼女はいつもこうなのではないかと思いました。

 なにごとも早く済ませないと収まらず、とにかく進まないと落ち着かない精神状況。現代病のひとつではないかと思われます。

 夫は忙しい仕事、主婦は子育てや家事に追われる毎日。会社や社会のシステムと相まって有給休暇もろくにとることができず、ゆっくりとした時間の流れを味わうことの大切さや価値をも忘れてしまいそうな毎日は、少しは良くなっているものの、私の父が働き盛りのサラリーマンだったずっと以前から変わっていない日本のライフスタイルです。

アイデア、デザインをどう熟成させるか

 「負けてなるものか! よりはやく!」「忙しい=急ぐ」の方程式。これは正しいものなのでしょうか。

 急いでやったものは長持ちせず、あっという間に風化していくはずです。世の中が豊かになり、これからは次世代の文化やライフスタイルを考えるべきタイミングだというのに、なぜ我々はこの方程式を見直そうとしないのか? なぜ変えることができないのか? 本来の日本には、時間の試練に耐えうる、より良いものを創造し伝えていこうとする思想があったように思えるのですが。

 日本の自動車メーカーからアウディに移籍した私が、驚かされたことのひとつに「急がない姿勢」があります。

 たとえばプロジェクトの進行途中で、非常に先進的かつ画期的なアイデアやデザインが生まれたとします。メンバーの誰が見ても「これはいいぞ」と思えるようなものです。

 日本の企業なら、そのようなものが出たら一刻も早い開発を目指して「それっ! 急いでつくれ!」ということになり、その日から無理矢理なスケジュールが組まれるかもしれませんが、アウディは違っていました。

 アイデアが先進的・画期的であればあるほど、そのデザインモデルはそれなりの検証を済ませると、それ以上は検討されることなく「倉庫行き」となっていたのです。素晴らしいものほど、急いで手を付けずに一度「しばらく寝かせる」という発想です。そのアドバンスレベルが高ければ高いほど長く寝かせ、ワインのように熟成を待つのです。静かに寝かされていたアイデアは、時間の経過の中で忘れられた頃、再び倉庫から持ち出されてきて、更なる冷静な目でデザイン検証がなされるのでした。

 「急がないマネージメント」「寝かせるマネージメント」です。

 眠りから覚めたモデルはある時はより成熟し,さらに新たなアイデアがブレンドすることで洗練さが増します。

 「やっぱりこれいいね!」。こんな言葉がデザインの信頼度を上げ、やがて大きなダイナミズムを生むことになっていくのです。デザインを積み上げて行くとは決して直感的ではなく、時の試練が必要なのです。私の担当したアウディ「A6」も「A5」、「A7」もこんな時の試練をくぐって来たモデルなのです。

「未来の日本をデザインしよう」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

変化を受け入れやすい組織体質があればビジネス上の“地殻変動”が起きた際にも、他社に半歩先んじられる。

井上 礼之 ダイキン工業会長