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オバマ政権下で深まる「国内分裂」と「狂気の銃弾」

アリゾナの「政治テロ」の背景に淀む「空気」

  • 在米ジャーナリスト 高濱 賛

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2011年1月25日(火)

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「対立・憎悪・銃」の図式を断ち切れぬ「野蛮国家・アメリカ」

 アメリカはこれまでにも何度となく「政治テロ」にさらされてきた。古くはリンカーンに始まり、ガーフィールド、マッキンレー、ケネディと、いずれも大統領任期中に銃弾に倒れた。大統領候補だったウォーレス(当時アラバマ州知事)とレーガン(当時大統領)は、撃たれたものの、一命だけは取りとめた。

 罪のない市民に対して無差別に乱射する事件は後を絶たず、日常茶飯事と化している。

 1968年に暗殺された公民権運動指導者、マーチン・L・キング牧師の誕生日を祝う1月17日、西部ワシントン州のパレード・ルートに時限爆弾が仕掛けられていた。事前に発見されたため大惨事は免れた。黒人差別過激派の仕業とみられている。

 筆者は、ケネディ第35代大統領暗殺(1963年11月22日)の生々しいテレビ画像を留学先の米大学寮で見た。その後、大統領に昇格したジョンソン副大統領は、大統領に昇格してすぐ「悲劇を乗り越えて団結しよう」と訴えた。遊説中のウォーレス・アラバマ州知事の暗殺未遂(1972年5月15日)は、ワシントン特派員当時、メリーランド州の現場でつぶさに目撃した。

 当時も米メディアは事件をヒステリックに報道し、アメリカ人は泣き叫び、喪に服した。

 いずれの事件においても、直後には、銃規制強化が叫ばれ、大統領の身辺警護体制が強化された。が、2~3カ月もたてば、「喉元過ぎれば熱さを忘れる」のたとえ通り。事件は、精神異常者による単独犯行でケリがつき、憲法修正第2条をタテに「銃の文化」は温存されたまま、今日に至っている。

 この意味において、年明け早々の1月8日、米中西部アリゾナ州ツーソンで現職下院議員を狙った「政治テロ」後の動きも、これまでの政治テロ事件と同じようなパターンをなぞっている。

かってキング師の誕生日のパレードに時限爆弾が登場したことなどない

 が、今回の事件に至る経緯を手繰り寄せていくと、過去とは著しく違うことに気づく。アメリカに漂っている「空気」が当時とは全く違うのだ。

 違いの1つは、保守派とリベラル派との意見対立の溝がかってなかったほど深化していること。そしてその分裂をめぐる話法が、ブッシュ政権が発足して以降、先鋭化し、暴力的になっていることだ。しかもそれが組織化され、裾野を広げ、アメリカ社会のメーンストリーム(主流)に浸透している。

 ケネディのときもウォーレスのときにも、人種問題をめぐっての保守・リベラル間の意見対立はあった。だが、今の亀裂とは問題にならないほどマージナル(周辺的な)なものだった。メディアの中にそれを煽る動きはなかった。ところが、今は、「対決と憎悪」がむき出しになっている。それがアメリカ人の茶の間に容赦なく飛び込んでくる。

 この傾向は、2年前に史上初の黒人大統領、バラク・オバマが登場してからさらに強まっている。かってキング師の誕生日のパレードに時限爆弾が登場したことなどなかった。黒人やヒスパニック系に対する一部保守派白人の憎悪の念がストレートに表面化してきているのだ。

選挙最中に飛びかった暴力的なレトリック

 今回、狙撃されたガブリエル・ギフォーズ下院議員はアリゾナ州下院選第8区選出(40歳、当選3回)の民主党穏健派議員だ。先の中間選挙では、共和党のジェフ・ケリー氏が対立候補だった。ケリー氏はイラク戦争に参戦した元海兵隊員で、政治歴はゼロ。民主、共和両党が拮抗するこの選挙区では当初から接戦が予想された。

 予想通り、選挙はギフォーズ候補が全有効投票の48.7%、ケリー候補が47.4%。「対決と分裂」を象徴する選挙だった。

 草の根保守の「ティーパーティ」(「茶会」)はケリー候補を最重点候補に指定した。「茶会」の広告塔を自任したペイリン前共和党副大統領候補は同選挙区に何度も足を運んだ。

 そのペイリン氏のウェブサイト上には選挙中、こんな物騒極まりないレトリックが掲載された。

コメント9件コメント/レビュー

時たま、日本でもいわゆる愛国青年的な人がテロを起こす事がありますが、アメリカの場合、“銃"という多人数に対して容易に殺傷できるツールがあるのが問題なんでしょうね。(2011/01/27)

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

時たま、日本でもいわゆる愛国青年的な人がテロを起こす事がありますが、アメリカの場合、“銃"という多人数に対して容易に殺傷できるツールがあるのが問題なんでしょうね。(2011/01/27)

日本の暴力化傾向も同様な分析が可能かもしれません。興味は身の回りのこと。孤独と貧困。違うのは、毅然としたオバマ大統領と腐りきった日本政府。他人を軽視する。他人の命も軽視する傾向は益々増大している。(2011/01/26)

なるほどアメリカにおける党派対立は深刻である。この記事中、登場する民主党関係者は穏当で知性と思いやりがある人物として、共和党関係者は教育水準が低く知性どころか品性にも欠ける人間として描かれている。また、この記事では共和党側の反民主党ネガティブキャンペーンを『無教養で品のないアジを繰り返し』『「数の力」で劣る側は、過激なレトリックで自分たちの正当性を訴え』と描くが、私の知る限り同程度には品性下劣だった民主党系の反ブッシュ政権キャンペーンは存在しなかったことになっているようだ。まさしく、筆者が言うところの分裂を押し広げるような悪質なネガティブキャンペーンの見本と言うべき記事である。少なくともこのような記述がアメリカの党派的対立を静める役に立つことはないだろうし、これが民主党系の一般的な認識であれば、アメリカで党派対立が収まることはほとんど望み薄だろうと読んでいて思った。(2011/01/25)

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