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浮上走行「時速500キロ」でもリニアじゃないぞ

「アホウドリ」がヒント、速くて省エネの新交通システム

2011年2月1日(火)

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 最高時速は時速500キロメートル。世界最高時速581キロメートルを誇るJR東海の「磁気浮上式リニアモーターカー」と同等の速さを実現しながら、リニアモーターカーの約9分の1のエネルギーで移動できる新交通システム「エアロトレイン」の研究開発が進んでいる。

 1500キロメートル――。これは、アホウドリが1回の食事で移動できる飛行距離だ。我々人間が徒歩で移動する場合、時速5キロメートルとしても300時間、つまり2週間近く、休むことなく歩き続ける計算になる。では、なぜアホウドリはこんなに“燃費”が良いのか。その理由の1つが「地面効果」と呼ばれる自然現象である。

 地面効果とは、地面とスレスレの高さを翼を使って移動する際に、地面と翼の間に挟み込まれた空気がもたらす強い上向きの力のことだ。

地面と翼の間に空気を挟み込む

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 その地面効果を応用して、時速500キロメートルという高速移動を可能にする新交通システム「エアロトレイン」の研究開発が進んでいる。動力に利用するのは太陽光発電や風力発電など自然エネルギーだけ。手がけているのは、東北大学未来科学技術共同研究センターの小濱泰昭教授である。

 飛行機は「揚力」を使って浮上する。翼は、前方から風を受けることで、翼の上の部分よりも下の部分の方が、空気の圧力が高くなる。その結果、翼が下の部分の空気によって押し上げられ、機体が浮き上がるというわけだ。この上向きの力が揚力である。

 ここで機体の高度を上げないとどうなるか。地面と翼の間に空気が集まるため、翼の下の部分の空気の圧力が高まり、揚力が増すことになる。これが、地面効果である。

 地面効果は地面から離れるに従って弱まるため、機体はある程度浮上し、地面効果がなくなった時点で下降し始める。しかし、前進している限り、地面と翼の間に挟み込まれた空気があるので、それがクッション代わりとなって、地面に落下することはない。地面からの高さは、速度が決まればある一定のところで落ち着く。つまり、地面スレスレの高さを飛び続けることができるのである。

東北大学未来科学技術共同研究センターの小濱泰昭教授

 エアロトレインには、機体に4枚の翼が取り付けられており、3方が壁面に囲まれた凹型の専用路「ガイドウェイ」内を浮上走行するように設計されている。

 翼の先はL字型になっており、L字の部分は安全翼と呼ばれる。翼と地面との間、そして、安全翼と壁面との間の計8カ所で、地面効果を発生させるようになっているのだ。安全翼と壁面との間に発生する地面効果は、機体が壁面にぶつかるのを防ぐ働きを担っている。

 推進力は、機体の両脇に取り付けられた2つのプロペラを回転させることで得る。プロペラの動力は、ガイドウェイ脇に設置した太陽電池を利用する。現在は充電池にためて機体に積んでいるが、将来はパンタグラフ式にして、常時、電力供給ができるようにする計画だ。

 一方、自動車や鉄道など地上を走る乗り物は、速度を上げると急速に空気抵抗が高まる。通常、空気抵抗は速度の2乗に比例して増大する。速度が2倍になれば空気抵抗は4倍に、3倍になれば9倍になってしまうのだ。

 それに対し、エアロトレインが極めて少ないエネルギーで高速移動できるのは、地面効果が、空気抵抗を下げる働きを持っているからだ。

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「浮上走行「時速500キロ」でもリニアじゃないぞ」の著者

山田 久美

山田 久美(やまだ・くみ)

科学技術ジャーナリスト

早稲田大学教育学部数学科出身。都市銀行システム開発部を経て現職。2005年3月、東京理科大学大学院修了(技術経営修士)。サイエンス&テクノロジー、技術経営関連の記事を中心に執筆活動を行っている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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中村 克己 元ルノー副社長、前カルソニックカンセイ会長