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“コシ帝国”に殴り込んだ「つや姫」

1等米比率98%の衝撃、ブランド再構築を迫る

  • 樫原 弘志

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2011年2月2日(水)

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 家も田んぼも山も雪で覆い尽くされた新潟県魚沼市。このあたりでは花き、野菜、山菜のハウス栽培、錦鯉の養殖など農家の多くはコメ以外にも冬の収入源になる仕事をいろいろ手がけている。

 県南魚沼地方で魚沼産コシヒカリ(魚沼コシ)を出荷する6つの農業協同組合(JA北魚沼)の1つ、地元のJA北魚沼も最近、直売所を開業させた。チューリップやユリ、それに菜っ葉類。真っ白な町の中、どこで栽培していたのかと思うほど地元農産品でにぎやかだ。

2等米なんか作ったことないのに…

 その魚沼のコメ農家を最近襲ったショックが2つある。1つは魚沼コシの売れ残りだ。JAが農家から集めて全国農業協同組合連合会(JA全農)新潟県本部に販売を委託した魚沼コシが2008年産から2年連続、売れ残った。売れ残りが出れば、需要が弱いとみなされ、管内のコメの生産数量目標が引き下げられてしまう。減反強化。縮小均衡の道である。

 もう1つは昨年の猛暑による品質劣化。JA北魚沼では1等米比率95%が目標なのに、10年産はその比率が34%に落ちた。猛暑被害は全国に及んだが、それでもコシヒカリ全国平均で1等米は58%あり、新潟の落ち込みは目立つ。

 JA北魚沼の組合員で水稲部会長も経験した篤農家、関武雄さんは、「2等米なんか今まで作ったことはないよ」と悔しがる。「うまみを増すため窒素肥料を抑える肥培管理が裏目に出た。体力が弱って猛暑に負けた」という。長年なじんできた栽培方法だけに農家が受けたショックは大きい。

「魚沼ブランドも大変厳しいところにきた」という関武雄さん(写真:樫原弘志、以下同)

 減収も痛い。2003年産で1俵(60キログラム)当たり3万2000円台もあった手取りが、コメ余りの影響で2009年産、2010年産は2万円台を維持できるかどうかの水準をさまよう。コメだけで生計が立てられた時期もあるが、米価が安いとそうはいかない。関さんの場合、若い頃は出稼ぎ、いまはハウスでの野菜栽培が冬場の収入源である。

魚沼ブランドも試練の時を迎えている

 驚くなかれ、日本のコメの36%はコシヒカリである。新潟県内では76%。JA北魚沼管内では96%にも達する。1955年、福井県で誕生して半世紀以上。最初に本格的普及が始まった新潟県をはじめ全国各地に産地が広がった。魚沼コシを頂点に新潟・岩船、同・佐渡、同・一般、北陸、関東など各地のコシヒカリ価格には大きな差がある。

 2010年12月の相対取引価格でみれば、魚沼が1俵2万1796円に対し、新潟・一般は同1万5442円、富山が1万3864円という具合だ。魚沼コシの評価は段違いだ。

 日本全国、適地か否かを問わず、とりあえずコシヒカリを作るという農家は多い。卸業者が独自商品のブレンド用に使う需要もあり、「寄らば大樹の蔭」でブランドの端っこの方に加わる方は気楽なのだ。

 しかし、魚沼は違う。うまさや品質に違いがあるのに、一緒くたにされるのを嫌って、新潟県産という分類からも分離独立して相場が立つようにしてきたのが食味に自信を持つ魚沼コシがたどってきた道だ。魚沼地区の中でも6つのJAが「『我こそ1番』と競い合っている」とJA北魚沼営農企画課長の森山賢一さんは苦笑いする。

 JA北魚沼は整粒歩合、タンパク含有率などを独自に分析し、農家や地域の栽培成績を分析し、指導にも役立てる。1等米をさらにSS、SA、Sに3区分し、値段にも差をつけ、高品質のコメ作りを誘導している。農家から集めたコメを全国農業協同組合連合会(JA全農)に任せきりにしたのでは農家の手取りが増えないと考え、最高級品を通販業者向けに出荷するなど直販体制も拡大中だ。

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 難しいのは生産面の改革だ。10年度からの戸別所得補償制度の導入で転作作物も限定されるようになり、作付け規模が30アール、50アールなど小さな農家ほど面倒な転作をやめる人が増え、コシヒカリが潜在的に過剰生産、値崩れを起こすリスクは今後もつきまとう。「コシヒカリを栽培する場所を限定したり、うまく栽培できる人をピックアップしたり、1等米の産地として生きる覚悟が必要」と関さんは考えている。

 JAもコシヒカリの生産量抑制に動いてはいる。分析データからは地区や田んぼによって、だれが栽培してもうまいコシヒカリが作れない場所もかなり特定できている。しかし、農家の側にはコシヒカリを作る習慣が染みついていて、ほかの品種への転換などの誘導がなかなか進まない。過度な魚沼コシ信仰がかえって改革を妨げる。

コメント11件コメント/レビュー

うどんの話かと思いきや、米の話だったでござる。確かに今年の米の品質、悪いです。炊きたてでは解からない違いが、2・3日後に解かります。劣化速度が速い。お米のブランド化はTPPの際の強力な武器でしょう。ただ、世界の殆どの地域で食べられているのはインディカ米で、ジャポニカ米を食べてもらえるには日本食ブームに乗った戦略的マーケティングが必要だと思います。TPPは諸刃の剣ですからね。(2011/02/06)

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うどんの話かと思いきや、米の話だったでござる。確かに今年の米の品質、悪いです。炊きたてでは解からない違いが、2・3日後に解かります。劣化速度が速い。お米のブランド化はTPPの際の強力な武器でしょう。ただ、世界の殆どの地域で食べられているのはインディカ米で、ジャポニカ米を食べてもらえるには日本食ブームに乗った戦略的マーケティングが必要だと思います。TPPは諸刃の剣ですからね。(2011/02/06)

山形出身者です。この年末年始に帰省したところ、親から「つや姫」を持たされました。これまで米なんかくれたこともなかったのに。なんでも、山形県内で「帰省してきた人につや姫をあげよう」というキャンペーンをやっていたのだとか。山形駅の改札でも、駅弁の隣でペットボトル入りの「つや姫」が売られていました。▼米に限らず、過去に農産物に対して「帰省してきた人にあげよう」というキャンペーンが行われたことがあるのか寡聞にして知りませんが、低コストで全国各地にばらまけ、口コミも狙える。キャンペーンとしては効率がいいかもしれない、と思いました。▼つや姫は確かにおいしいお米です。自分も何人かにお裾分けしましたが、評判は非常に良かった。しかし今はまだ物珍しいから注目されるけど、来年再来年が正念場でしょうね。個人的にはせっかくのおいしいお米だからがんばってほしいです。(2011/02/03)

TPP対策を農政と農家が「大規模化」意外の切り口で考える上で具体的事例は参考になりました。世界の食料問題の一方には(間接的に)生命の糧を不当な利殖手段にできてしまう仕組みが存在すること大きく関係していると思います(ゴールドマンサックスによる小麦価格操作は意外と知られていない)。結局のところ、経済価値で算定できる部分のみを「コスト」と捉え、運搬にかかるCO2や熱の排出、彼の地で撒かれる農薬や化学肥料の影響など、将来的に予想される地球環境や健康への影響などが輸入農産物の価格には反映されない実態を了とするか否か、消費者に委ねることに将来の世代に対して無責任さを感じます。あの世に行って閻魔の庁で、「東南アジアの子供達に健康被害を与えた」などという身に覚えのない罪状を突きつけられても「濡れ衣だ」と言い切れないことだけはお互いに覚悟するべきでしょう。(2011/02/03)

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