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社会保障サービスは成長産業に変えることができる!

日本版「管理競争」を検討せよ

2011年2月3日(木)

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 第5回第6回のコラムでは、社会保障費(年金・医療・介護)の抑制が困難である場合、世代間格差の改善を図るためには事前積立を導入する必要があり、消費税率換算で20%の増税が不可避であることを説明した。

 この場合、政府は「大きな政府」になってしまい、非効率となる可能性がある。従って、社会保障(年金・医療・介護)の効率向上を追求する制度設計も重要なテーマとなる。

 その際、期待されるのが、一橋大学の佐藤主光教授や拙著『2020年、日本が破綻する日』(日経プレミアシリーズ)などが提言する「管理競争」という考え方である。

管理競争とは?

 「管理競争」という概念をご存じの読者もいると思うが、簡単に説明しておこう。管理競争とは、その名の通り、政府が管理する競争を言う。「各個人の社会保障サービスへのアクセスを保証しつつ、健康保険組合などの各保険者や、医療機関など社会保障サービスの供給主体への財政的規律づけ(例:包括払い制)を通して、社会保障全体の効率的運用を目指す仕組み」だ。

 この管理競争における重要ポイントは2つある。1つは、「政府の役割の再考とプレイヤーである保険者機能の強化」である。そして、もう1つは、「加入先の選択自由化とリスク調整」である。以下、図1を用いて説明しよう(注:図1は医療保険における管理競争の例であるが、基本的に年金・介護も同様)

 まず、「政府の役割の再考とプレイヤーである保険者機能の強化」について説明する。今の社会保障は、診療報酬などの価格体系を政府が完全に統制しているため、価格メカニズムが機能しない。同時に、医師が、診療報酬の高い薬などを不必要に患者に与えて、診療報酬を増加させようとする誘因などが働き非効率となっている、との指摘も多い。

 このため、管理競争では、各保険者が自ら医療費をコントロールできるよう、報酬体系の決定権限の一定範囲を政府から各保険者に分権化する(注:国民の生命を守る観点から、政府が最低限コントロールする必要がある権限は除く)。そして、政府は、主に「スポンサー」として、被保険者(各個人)の利益を代弁し、健全な市場機能をサポートする役割に特化するのである(後述)。

 次に、「加入先の選択自由化とリスク調整」について。今の公的医療保険などは、加入する保険者を個人が自由に選択できない。このため保険者間の競争が阻害されている。例えば民間保険会社が供給する生命保険の市場では、競争が働いているため、できるだけコストを抑制し、質の高い商品を提供しようとする誘因が存在する。だが、今の公的医療保険にはそのような誘因は存在しない。効率性を高めるためには、保険者間の競争をうながすメカニズムを組み込む意義が大きい。

 管理競争において政府は、「皆保険」を維持するため、各個人に対して必ず1つの保険者を選択するよう義務づける。ただし、各個人は、各保険者が提供する保険サービスの中から最適な保険契約を自由に選択することができる。その際、各個人は、加入する保険者に「一括保険料」を支払う。この一括保険料は同タイプの保険契約であれば均一である必要がある。ただし、異なっても構わない。各保険者の経営努力をうながす指標となる。低い一括保険料を提示する保険者が現れれば、その保険者の人気が高まることになる。なお、各保険者は、診療報酬などについて、医療機関とを自由に契約する。

社会保障の効率向上と公平性を同時に達成する

 ところで、管理競争の枠組みで、ある保険者Aには健康リスクが高い加入者(例:高齢者や有病者)が多く集まるものの、別の保険者Bには健康リスクが小さい加入者(例:若者)が多く集まるケースが想定できる。その場合、保険者Aの経営が厳しくなるのは自明であり、健全な競争をうながすことはできない。

 このため政府は、各個人が支払う「社会保険料」を、スポンサーである政府(中央基金)にいったん集約化する。そして、政府(中央基金)は、この社会保険料を原資に、各保険者にその加入者リスクを調整した「リスク構造調整プレミアム」を配分する。

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「社会保障サービスは成長産業に変えることができる!」の著者

小黒 一正

小黒 一正(おぐろ・かずまさ)

法政大学経済学部教授

1974年生まれ。京都大学理学部卒業、一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。大蔵省(現財務省)入省後、財務省財務総合政策研究所主任研究官、一橋大学経済研究所准教授などを経て、2015年4月から現職。専門は公共経済学。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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