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壁面、道路、天井……どこでも発電

その「捨てる熱」が電気になる「熱電変換材料」

2011年2月22日(火)

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 パソコンや自動車、工場などさまざまな場所で問題となっている廃熱。その廃熱を有効利用するための手段として、熱を直接電気に変換できる「熱電変換材料」への関心が高まっている。しかし、既存の熱電変換材料は、高価で毒性の強い重金属が使われることが多く、普及の足かせとなっている。

 それに対し、2010年9月、東北大学金属材料研究所の齊藤英治教授が、安価で無害な絶縁体が熱電変換材料になりうることを実証した。これにより、廃熱はもちろん、身の周りにある不要な熱を簡単に電気に変え、利用できる可能性が急速に高まってきた。

 パソコンや自動車、工場、焼却炉、サーバールーム――。さまざまな場所で廃熱が問題となっている。我々が日々の生活の中で消費している全エネルギーの実に70%が活用されないまま、廃熱となって自然界に放出されているのだ。

 その廃熱を有効利用するための手段として、近年、熱を直接電気に変換できる「熱電変換材料」への関心が高まっている。

 熱電変換材料とは、金属や半導体といった電気を通す物質の一部を温めて温度差をつけると、温度の勾配に沿って電圧が発生するという自然現象を利用して、熱を“直接”電気に変換できる物質のことだ。この自然現象は「ゼーベック効果」と呼ばれ、約200年前に発見された。

 通常、火力発電は石油や天然ガスなどの燃料を燃やし、その際に発生する熱エネルギーを使って水蒸気を発生させ、蒸気タービンを回転させることで発電している。原子力発電も蒸気タービンで発電しているという点では同様だ。

 一方、熱電変換材料であれば、火力発電や原子力発電とは異なり、熱を直接電気に変換できる。そこで、熱電変換材料を使って、これまで捨てられていた熱や身の回りの不要な熱を電気に変換すれば、エネルギー資源を無駄にしなくて済むというわけだ。地球温暖化対策への大きな貢献が期待できる。

重金属が多いことが普及の壁になっていた

 しかし、残念ながら、実際のところ、熱電変換材料は広く一般には普及していない。

 それはなぜか。その大きな理由は材料にあった。既存の熱電変換材料には、希少で毒性が強いビスマスやテルル、アンチモン、鉛といった重金属が多く使われている。価格が高いだけでなく、環境や人体への悪影響も懸念される。また、金属や半導体といった電気を通す物質を主に使っているため、熱伝導でエネルギーを損失し、発電効率が低くなる問題もあった。その結果、用途が限られてきたのである。

 そこで現在、国内外でこれらの問題を解決するような新材料の研究開発が盛んに行われている。

東北大学金属材料研究所の齊藤英治教授

 1つの突破口になり得るとして注目を集めているのが、東北大学金属材料研究所の齊藤英治教授の研究だ。齊藤教授は2010年9月、これまで不可能と考えられてきた絶縁体が熱電変換材料になり得ることを実証した。その結果、廃熱はもちろんのこと、生活空間にあるちょっとした熱も電気に変えて利用できる可能性が出てきた。

 絶縁体は熱伝導によるエネルギー損失も少ない。既存の熱電変換材料が抱えていた問題を一気に解決することができる。そのため、応用範囲も広がり、普及にも弾みがつく。齊藤教授は、絶縁体の優位性をこう語る。

 「大面積化できるのも、大きな強み。例えば、工場の壁面を熱電変換材料で覆えば、工場の廃熱を壁で電気に変換し、その電気を、工場の機器の稼動に使うこともできるようになるかもしれない」。

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「壁面、道路、天井……どこでも発電」の著者

山田 久美

山田 久美(やまだ・くみ)

科学技術ジャーナリスト

早稲田大学教育学部数学科出身。都市銀行システム開発部を経て現職。2005年3月、東京理科大学大学院修了(技術経営修士)。サイエンス&テクノロジー、技術経営関連の記事を中心に執筆活動を行っている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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中谷 巌 「不識塾」塾長、一橋大学名誉教授