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アメリカから見た大相撲八百長

新進気鋭の米経済学者は9年前に計量経済学で立証していた

  • 在米ジャーナリスト 高濱 賛

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2011年2月24日(木)

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アメリカ人は高見山が勝つ理由を知っていた

 大相撲中継はアメリカでも、日本と同時に見ることができる。NHK国際放送を流すNHKの子会社「テレビジャパン」で大相撲中継を流している。

 ハワイなどを除けば、それほど熱狂的な相撲ファンが米国内にいるとは思えない。それにもかかわらずSumoを知らないアメリカ人はまずない。侍のような丁髷(ちょんまげ)を結い、臀部丸出しで褌を締めた大男たちが、土でできた土俵の上で「倒すか」、「押し出すか」を決める格闘技。加えて、審判員である行司は、まるで歌舞伎で見るような古式豊かな煌びやかな衣装。呼び出しは羽織姿でかいがいしく動き回る。

 80年代にジェッシー高見山というハワイアンが相撲取りになったときには、アメリカ人はあっと驚いた。当時の米メディアは「初のハワイアン」とは書いたが、「初のアメリカ人」とは書かなかったのを覚えている。

 だが、相撲を日本の伝統・文化を伴う格闘技だとは思っても、アメフトや野球のような健全でフェアな近代スポーツだ、と思っているアメリカ人はどのくらいいるだろうか。ほとんど居ないに違いない。

 今回の八百長疑惑が起こったとき、アメリカの新聞は一見驚くふりをしながらも「やっと証拠が見つかったか」というニュアンスで報道した。こうした姿勢もアメリカ人が相撲をどうとらえているか、と無縁ではあるまい。

 「八百長相撲があるとの疑惑は以前からあった。今回だって東京都知事の石原慎太郎は『騙されたふりをして楽しめばいいじゃないか。歌舞伎と同じだよ』と述べている」(ニューヨーク・タイムズ)。

 「古くは2000年に元関脇・板井が、外国人特派員協会での記者会見で、八百長相撲があったと暴露した。最近では、モンゴル人横綱・朝青龍の八百長相撲が取りざたされたこともある。が、結局、証拠不十分でもみ消されてきた」(ウォールストリート・ジャーナル)。

 東京のアメリカ大使館に勤務したこともある元外交官の一人は、「80年代、日本の力士たちは高見山と対戦すると、わざと負けていた。『日米貿易摩擦をめぐるアメリカの神経を少しでも和らげたい』と考えた誰かが八百長を仕組んでいる――と思っていたアメリカ人も少なくなくなかった」と回想している。図体だけはデカイが技ひとつないハワイアンがあんなに勝てるわけがないと見ていたのである。

論文のタイトルはずばり「勝つことだけがすべてではない」

 前掲のニューヨーク・タイムズの記事は、アメリカ人経済学者が9年前に八百長相撲を計量経済学の手法を駆使して解明していた事例を紹介している。

 記事によると、2005年のベストセラー「Freakonomics: A Rogue Economist Explores the Hidden side of Everything」(フリーコノミクス:わんぱく経済学者が物事に隠された部分を探し当てる)の中に八百長相撲についての記述がある。

 著者である経済学者は、シカゴ大学経済学部教授のスティーブン・レベット博士。実はこの本は、同博士が2002年12月、同僚のマーク・ドゥガン博士と共同で書いた学術論文が下敷きになったている。つまりレベット博士らは、9年前に大相撲の八百長を見破り、なおかつ相撲取りがなぜ八百長をせねばならないかを経済効率数値を使って立証していたのである。

 論文のタイトルは、ずばり「Winning Isn't Everything: Corruption in Sumo Wrestling」(勝つことだけがすべてではない:大相撲における不正行為)。2002年12月に出た学術雑誌「American Economic Review」誌上に発表された。

 2人が、フランスのシラク元大統領のように相撲が醸し出す日本の伝統文化に魅せられたとは思えない。興味を持ったのは、この封建的な体質を引きずりながら、「経済大国・日本」の社会の中で今なお確固たる地位を占めている「国技」に潜む不正行為の有無だった。それを計量経済学の観点から立証しようとしたのだ。

 研究を始めるに当たり、2人の学者は以下のようなHypothesis(仮説)設定した。

 「現実の商業活動で生じている不正行為が経済にどのような影響を及ぼしているのか。公に、あるいは私的な場所において贈収賄を行うことは経済的能率性を弱めている、と信じられている。その結果、政府や企業は、企業で働く従業員が正直になるようなあらゆるインセンティブをつくり出そうと努力はしている。にもかかわらず、不正行為は密やかに蔓延している。組織的な不正行為は経済学上のはっきりしたデータとして捉え難い。従ってこれまで不正行為に関する確たる論文はあまりない」

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