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“税方式”と“保険方式”の誤解を解く

社会保障の財源:カギは負担と受益の関係の強さ

2011年2月25日(金)

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 国会は今、混迷を深めている。特例公債法をはじめとする予算関連法案の取り扱いを巡り、与野党の駆け引きはピークに達している。この混迷の背景には、強すぎる日本の参院の現状があるのではないか。

 日本と同じ議院内閣制を取るイギリスでは、法案に対する上院の権限はもともと限定的で、法案の成立を遅らせる程度のものにすぎない。上院には税法などの予算関連法案の可決を拒否する権限がない(Mirrlees Review 第13章)。また、フランスでは、特に重要な法案を除き、上院と下院の議決が異なる場合は、最終的に下院が議決する。ロシアでは法案の成立につき下院優越のルールがある。

 これに対して日本の参院は、予算関連法案を否決し、予算の成立を阻む権限を持つ。参院で過半数の議席を握る野党は政権を窮地に追いやる力を持つ。もし今、与野党が逆転しても、参院(総議席数242)の第1党は民主党(106議席)であるから、「ねじれ国会」は続く。参院で10議席以上を握る野党(自民=83、公明=19、みんな=11)を合計しても過半数に届かない。

 膠着した日本政治を脱却するには、総選挙(衆議院選挙)で、政権を握る与党が3分の2以上を獲得するしかないが、それは容易ではない。このため、財政・社会保障の再生は「超党派」で議論するしかない。

税を財源にするのが「税方式」ではない

 このような状況において、民主党政権は、超党派協議のたたき台を作成する「税と社会保障の抜本改革」の作業を進めている。なんとか改革を進めてほしい。しかし、社会保障の財源である税と社会保険料についての報道や国会での議論を見ていると、本質的でない議論を目にする。

 財源を消費税などの“税”で賄っているから“税方式”、“保険料”で賄っているから“保険方式”と考えるのは短絡的な発想である。本来は、負担と受益のリンクが強いものを「保険方式」、そうでないものを「税方式」と考えるべきだ。“ ”と「 」の違いに注意してほしい。

 問題の本質は、受益と負担のリンクの強度の違いにある。つまり、財源が税でも受益とのリンクが強い(=負担分が将来返ってくる)ならば「保険方式」の性格を持つ。一方、財源が保険料でもリンクが弱い(=負担分が将来戻ってくるとは限らない)ならば「税方式」の性格を持つ。

 そこで、今回のコラムでは、この社会保障財源である税と保険料の本質的な違いについて考察する。考察を単純化するため、現役期と引退期の2期間しか生存しない個人を想定し、「生涯予算制約式」をベースに進めることにする。

比例労働所得税と消費税の性格は同じ

 税と保険料の本質的な違いを理解するには、まず、社会保障(年金・医療・介護)がない経済において、比例労働所得税(労働所得に一律税率で課税)と消費税が同一の性格を持つことを理解する必要がある。

 最初に、消費税がなく、比例労働所得税のみで財源を調達している経済を考える。このとき、労働所得税率をtwとすると、個人の生涯予算制約式は以下となる。

現役期の消費+引退期の消費(割引価値)=(1-tw)×生涯賃金

…(1)式

 この式の右辺は、生涯の手取り賃金(税引き後)を表す。左辺は、その手取り賃金の範囲内で、現役期の消費と引退期の消費を賄うことを意味する。

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「“税方式”と“保険方式”の誤解を解く」の著者

小黒 一正

小黒 一正(おぐろ・かずまさ)

法政大学経済学部教授

1974年生まれ。京都大学理学部卒業、一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。大蔵省(現財務省)入省後、財務省財務総合政策研究所主任研究官、一橋大学経済研究所准教授などを経て、2015年4月から現職。専門は公共経済学。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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中村 克己 元ルノー副社長、前カルソニックカンセイ会長