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公用語化の前に議論したい、本当に考える教育カリキュラム

英語が喋れるだけが国際化の条件ではない

  • 河合 江理子

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2011年3月8日(火)

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 過去2回にわたり米国の大学教育の強さであるリベラルアーツ教育や米ハーバード大学の卒業生のネットワークについて書かせていただいた。読者の方のコメントで、英語公用語化って何というタイトルから内容が離れてきているという指摘を受けた。

 今回のテーマも読者の方に英語公用語化と少し離れたテーマと指摘される可能性があるが、海外の一部の高校で行われている教育についてご紹介したい。なぜなら、英語の公用語化の意義を考えることは、すなわち日本人の国際化への道筋を考えることなのである。その前提に立ち戻った時、公用語化よりも先になすべきことがあまりに多いというのが私の実感だからだ。

 国際社会で競争していくには、英語の能力だけではなく、議論する能力も試される。そういう意味で「思考力」「分析力」「創造性」を伸ばす高等教育はますます大切になってきている。例としてオランダのインタナショナルスクールと米国の寄宿舎制の高校を紹介したい。

 海外の高等学校では、私が受けた日本の公立高校での教育とかなり内容が異なる。私がハーバード大学やビジネススクールで勉強したようなことまで、今では高校でもカバーしている。これには、さすがにショックを受けた。

 オランダに住む私の甥は、オランダ人の父と日本人の母を持つハーフでオランダで生まれ育った。現地の学校に通い土曜日に日本語補習学校で日本語を学ぶというのが定石だが、彼は父親の意向で小学校から中学卒業まで現地の日本人学校に通った。日本語は難しいので小さい頃からきちっと勉強しておいたほうがいいという意見だった。幼稚園まではオランダ語の方が得意だったものの、中学生になるころには日本語が上達し、短歌で優秀賞をもらうレベルとなった。

 日本人学校の卒業後、英語で学ぶインターナショナルスクールに入学した。オランダではテレビでも英語は吹き替えがない。子供のうちから英語が母国語に近い存在となっているため、ほとんどの国民が流暢な英語を話す。甥も例外ではなく日常会話は全く問題ないレベルであった。

 しかし、高校の授業は日常会話レベルでは易々とついていけるものではなかった。毎日3~5時間費やさねばならないほどの宿題が出る。どの教科でもエッセイと称されるリポートを書かねばならない。英語を書くことさえままならないのに、リポートとなると理解力と分析力が必要となる。英語の授業ではシェークスピアを読み、内容について1000ワードのリポート、歴史ではハイパーインフレとヒットラーの台頭についての考察、物理では実験結果についての分析というように、どの教科でも「思考力」「分析力」「創造性」が求められるのである。

 日本人学校の暗記を基本とする教育を受けてきた甥は、英語よりもこのレポートでつまずいた。ほとんど1年間は、白紙の紙の前で1行も書けずに終わり、その年は落第した。欧州の高校では成績が悪いと進級できないので、落第をしたりドロップアウトしたりする子供も少なくない。私の友人たちの子供たちも高校で落第している。

 しかしながら、これは結果的にはいいと私は思う。日本は、落第せずに高校を卒業でき、そのうえ大学に入学までできてしまう。その結果、大学の勉強についていけない生徒が増えているので、大学で教育のレベルを下げないといけないと聞く。これでは何のために大学に行くのかわからない。

 オランダのインターナショナルスクールでは授業の内容も面白い。多くの科目は日本のものとほぼ同様である。ユニークなのは経済やビジネスという学科もあることだ。ビジネスの教科書を見て驚いたのだが、会計から人事まで、まるでビジネススクールで教えているような内容をすでに教えている。

 試験は私がビジネススクールで学んだようなケーススタディを読み、分析し議論するというもの。レベルはかなり高い。ほとんどの科目は記憶ではなく思考、つまり自分で考えることを基本としている。

 前年にはエッセイが1行も書けずに落第した彼も、翌年は国際バカロレア(大学入学資格試験)の論文では「ソニーとフィリップスのデザインが企業戦略にどういう影響を与えているか」という題で4000ワードの論文を書いた。インタビューやアンケートに基づいた大学生並みの論文である。国際バカロレアは世界122カ国、1746校の大学が採用している共通大学入学資格試験である。この試験には、ビデオカメラの前でする15分間のプレゼンテーションもあるというのだから、私たちがMBAのコースで学んでいた時と同じようなことを高校生に求めているのである。

 この国際バカロレアで注目すべきなのは、一般の教科の他に「コミュニティサービス」と呼ばれるボランティア活動と「Theory of Knowledge」という思索、哲学についての論文作成が義務づけられている点である。社会に目を向けること、社会活動にかかわること、そして人間について考えること、生きるとは何か、思想について学ぶことが重要視されている。生徒たちは学科の他にこれらにかなりの時間を費やさねばならない。このあたりも、日本の教育とは一線を画すところであろう。

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