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○○族が消えていく

名づけの「権威」が失墜した時代

2011年3月8日(火)

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 新語や流行語を観察していると、「○○族」という表現によく出会います。古いところでは戦後まもなく登場した「斜陽族」や「太陽族」など(意味は後述)。比較的新しいところでは「夜カジ族」(夜に家事をする人)とか、「席朝族」(出社して会社の席で朝食を食べる人)とか、「一駅族」(通勤の際に健康のため1駅分歩く人)といった言葉が登場しています。

 しかしながら近年では、この表現を使ったメジャーな流行語が登場していません。「太陽族」「暴走族」などに匹敵する存在感を持つ言葉が登場していないのです。そこで今回は「○○族」の変遷をたどりながら、このような表現が衰退した理由や、その背景にある社会変化について分析しようと思います。

斜陽族の40年代、太陽族の50年代

 では最初に「○○族」の歴史を概観しましょう。「家族」「一族」「民族」などの基本語や「郵政族」などの政治用語などは除外して考えます。

 まず1940年代には、太宰治の小説「斜陽」(1948年・新潮社)が契機となり「斜陽族」(終戦により没落した上流階級)が流行しました。なお言葉としての「斜陽」に没落の意味が加わったのはこれ以降のことです。おそらくこの斜陽族が「○○族」という言葉の「始まり」だと思われます。

 そして1950年代は様々な「○○族」が登場しました。まず1951年に「斜陽族」をもじった「社用族」(社費で遊興する人々)が登場。また当時パチンコのブームがあったことから、これに興じる人を揶揄する「親指族」(親指でレバーを引くことから)も登場します。近年言われる「親指族」(ケータイの操作に慣れた人)とは意味が異なります。

 そして石原慎太郎の小説「太陽の季節」(1955年・新潮社)から登場した流行語「太陽族」(享楽的で無軌道に行動する若者)は、当時の社会にセンセーショナルな話題を提供しました。小説や映画(同作品は石原裕次郎の主演で映画化された)の中の話とはいえ、当時はまだエリート視されていた大学生が「ヨットやスポーツカーに乗って遊びほうける」風景が描かれたからです。当時の海岸には、石原裕次郎を真似てアロハシャツやサングラスを身に付けて闊歩する若者も現れたといいます。そのような若者を当時の人は「太陽族」と呼んだのです。

みゆき族の60年代、暴走族の70年代

 1960年代にはファッションにかかわる「○○族」が増えていきます。その代表例は、1964年夏に東京・銀座の「みゆき通り」周辺に登場した「みゆき族」だと思われます。アイビースタイル(米国の名門大学生風ファッション)の男性を中心に、ファッショナブルな若者がみゆき通りに集まった現象を言います。ただ警察の補導などもあり、社会現象としての「みゆき族」は同年秋までに姿を消してしまいました。

 また1967年には東京の新宿駅周辺に、当時米国で流行していたヒッピー文化の影響を受けた若者が集まるようになりました。この若者たちは「フーテン族」を自称していました。ちなみにこの場合のフーテンは「世間をふらふらと生きる人」のことを意味します。

 このほか1960年代には音楽系の「○○族」も増えました。例えば、ベンチャーズの人気に伴い「エレキ族」が登場したほか、モンキーダンスの流行に伴い「モンキー族」も登場しています。

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「○○族が消えていく」の著者

もり ひろし

もり ひろし(もり・ひろし)

新語ウォッチャー(フリーライター)

CSK総合研究所を経て、1998年から新語専門のフリーライターに。辞書・雑誌・新聞・ウェブサイトなどに原稿を提供中。2009年より『現代用語の基礎知識』(自由国民社)で「流行現象」のコーナーを担当。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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