• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

そのとき東京駅は沈黙した

「帰宅難民」の眠れぬ夜

  • 飯山 辰之介

バックナンバー

2011年3月13日(日)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 3月11日14時46分。記者は取材でJR東日本東京駅新幹線ホームの地下を訪れていた。突然の激しい揺れ。「新幹線ホームは頑丈だから崩壊の危険はない」。取材先の担当者の言葉が空疎に響くほど、揺れは予想以上に大きい。運行ダイヤの混乱に対処するため、取材は打ち切られた。列車はすべて運行を中止。国内観測史上最大の巨大地震に見舞われたその日、日本の中枢に位置する「東京駅」で、記者は多くの乗客とともに「帰宅難民」として17時間を過ごすことになった。

混乱する東京駅

【15:00】

 列車は使えない。ともかく弊誌編集部のある白金高輪へタクシーで向かおうと駅の外に出た。そこに再度、大きな揺れが襲う。工事中のビルに設置されたクレーンが大きくしなる。通りの人々がおののきながら道の中央に避難する。

 八重洲北口近くのビルでは、佐川急便のドライバーが途方に暮れていた。荷物を搬入したいが、エレベーターが止まって運べない。「客も避難してしまったようだ。指示を仰ごうにも携帯電話もつながらない」とドライバーはこぼす。

 タクシー乗り場には長蛇の列ができている。乗り場をずらしてタクシーを拾おうとしたが、「今日はだめだよ」と流しの運転手に一蹴されてしまった。携帯電話は不通。公衆電話はつながっているようだ。3台程度しかない電話に数十人が家族や知人の安否を確認しようと群がる。

【16:20】

 大学生や専門生にとって、今は就職活動の真っ只中。東京駅には多数の就活生が集まっている。

 神奈川県湯河原町から企業説明会に来た専門学校の女子学生は帰り道で地震にあった。「東京駅地下通路を歩いているところに揺れが来た。皆一斉に出口に殺到していた。恐怖はあったが、まるで映画のようで現実感に乏しかった」と彼女は振り返る。

 構内アナウンスでは「電車は出ない。可能な限り徒歩で帰宅してほしい」と繰り返され、駅構内は途方に暮れた乗客でごった返している。

【17:00】

 横浜に住む60歳の男性会社員は茅場町の会社で地震にあい、即時解散を言い渡された。だが電車は動いていない。仕方なく歩いて東京駅にやってきたという。この会社員のように、地震後、各自の判断で動くよう会社から指示された人は多いようだ。

 青森在住の30歳中堅建築会社社員は地震発生時、新橋の本社(6階建の一階)で研修を受けていた。地震で研修は即時中止、解散を言い渡され、新橋から歩いて東京駅までやってきた。

 「地震発生時は外に出る人、残る人などバラバラで皆パニックになっていた」という。「私は中越地震を体験したことがある。今回はそれを上回る揺れを感じた」と振り返る。

 日本橋のIT企業に勤める55歳男性社員と2人の29歳女性社員は企業が入るビル8階で地震に遭った。「とにかく外に出ろ」と指示された後、解散となった。「水道管やガス管から水やガスが漏れていたようだった」と男性社員は語る。

 2人の女性社員のうち、一人の女性社員は実家が震源に近い岩手県にあるという。長らく電話もつながらず心配をしていたが、ちょうど取材中に安全を伝えるメールが家族から送られてくる。「安心した。連絡がとれてよかった」と涙を流して安堵した。

 就職活動中の学生も各企業から解散の指示を受けている。
 「みなさん気をつけて帰宅してくださいと言われたが、どうやって帰ればいいのか」と福岡県から今日東京にやってきた学生は途方に暮れる。
 携帯電話は多くの場合不通。メールも受け取れない場合があり、会社から指示を受けられない会社員は多い。名古屋の製薬メーカーに努める男性は「各地の工場や営業拠点がどういう状況になっているのか、情報がなく不安」と語る。

【17:40】

 構内では「運転再開の見込みはたちません」とのアナウンスが流れる。自動改札は機能しておらず、どこも人で溢れかえっている。本格的な帰宅時間に差し掛かり、駅に集まる人々は増える一方だ。携帯電話はますます繋がりにくくなり、八重洲北口では3つの公衆電話に70人を超える人々が列をなしている。

 「NOMURA」のヘルメットをかぶった女性社員は、「解散と言われて駅までやってきたが、ここにいても無駄かもしれない。会社に戻る」と足早に駅を去っていった。

 JR東海の東海道新幹線が再開されたようだ。ホームめがけて乗客が走り出し、一時乗り場は騒然となった。

コメント9

「ニュースを斬る」のバックナンバー

一覧

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

意外なことに、伝統的な観光地が 訪日客の誘致に失敗するケースも 少なからず存在する。

高坂 晶子 日本総合研究所調査部主任研究員