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原発なし、電力7割で生活しますか

幸福とエネルギーの関係、もう1度考えてみよう

2011年3月29日(火)

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 3月11日の東日本大震災以来、東京電力福島第一原子力発電所では、予断を許さない状況が続いている。そこで今回は、元東京大学アイソトープ総合センター長で、東京大学名誉教授の唐木英明氏に、東京電力福島第一原子力発電所の事故と今後のエネルギー社会のあり方について話を聞いた。

(聞き手は山田久美)

―― まず、今回の東京電力福島第一原子力発電所の事故について、率直なお考えをお聞かせ下さい。

元東京大学アイソトープ総合センター長で、東京大学名誉教授の唐木英明氏

 唐木 これまで日本は安全・安心な社会の実現に向けて、国も尽力してきたし、科学技術も発展させてきたと思います。しかし、残念ながら、今回の東日本大地震と大津波は予想をはるかに上回る大規模なものであり、想定外だったと言えるでしょう。それが甚大な被害を食い止められなかった最大の理由だと思います。

 「危機管理」といった場合、まず、危機の“規模”を想定しなければなりません。どのような災害が起こる可能性があるのかといった“前提”を定めない限り、対策を立てることはできません。今回はその前提が覆されたということです。

「止める」「冷やす」「閉じ込める」はどうだったか

 原子力発電所の安全対策の3原則は、「止める」「冷やす」「閉じ込める」です。今回の東京電力福島原子力発電所の事故では、地震の発生と同時に制御棒が動作し、「止める」という機能は、設計通り、完遂されました。しかし、津波によってディーゼルエンジンがすべて停止してしまったため、「冷やす」という機能が麻痺し、その結果、「閉じ込める」という機能も失われてしまいました。つまり、地震対策に関しては成功したものの、津波対策に関しては不十分だったということになります。

 では、今後、どのような安全対策を立てるかが問題です。原子力発電所はすべて沿岸地域にありますから、津波対策は非常に重要なテーマです。

 ここでポイントとなるのが、危機に対する“前提”をどう定めるか、です。前提を厳しくすればするほど費用は膨大になります。これは税金に直結します。

 今回、三陸海岸には、11メートルの高さの防波堤が設置されていました。それにも関わらず、想定をはるかに上回る津波が発生したため、結果的には、災害を阻止することができませんでした。では、今回のような1000年に1度とも言われる大津波に備えて、今後、膨大な税金を投じ、危険な沿岸地域すべてに20メートルの防波堤を設置すべきかどうか。これは意見が分かれるところです。

危機に対する前提をどこに置くか

 その具体例として、「高規格堤防」があります。高規格堤防事業は、100年から200年に1度の大洪水を想定した堤防です。

 これまで、自民党政権の下、利根川や江戸川、荒川などで整備が進められてきました。しかし、特に利根川の場合、全体の高規格化まで約1000年かかるとの試算もあり、建設には長い年月と膨大な費用が必要なことから、民主党政権に移った際、この事業は中止になりました。これは危機に対する前提をどこに置くかの考え方の違いです。

 実際、自然災害には地震、津波、台風、落雷、竜巻、地すべり、雪崩などさまざまなものがありますが、いくら安全対策を講じたとしても、自然災害を完全に防止することはできません。

 このようなことを総合的に考慮して、我々はどのような前提の下、どこまでの安全対策を講じるべきなのか、今ここで国民全員が立ち止まって、真剣に考えるべき時なのではないでしょうか。

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「原発なし、電力7割で生活しますか」の著者

山田 久美

山田 久美(やまだ・くみ)

科学技術ジャーナリスト

早稲田大学教育学部数学科出身。都市銀行システム開発部を経て現職。2005年3月、東京理科大学大学院修了(技術経営修士)。サイエンス&テクノロジー、技術経営関連の記事を中心に執筆活動を行っている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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