前回の関東大震災に引き続き、今回は「東日本大震災に伴って登場した新語・流行語」を取り上げます。これらを観察することによって、社会背景を探ろうという試みです。
もちろん震災は現在も進行している出来事です。おそらくこの記事が公開されているころには、新しい出来事が起こっていることでしょう。そのうえ執筆中の現在(3月28日)は、まだ被災された皆さんの生の声が筆者の耳に届きづらい状況が続いています。震災関連語をまとめる時期として早すぎるかもしれません。そこで今回は、現時点で登場している震災関連語の「備忘録」のつもりで書きつづってみました。
メディアによって異なる震災の名称
「今回の震災をどう呼ぶのか」について、マスメディアは若干の混乱を起こしているようです。
一連の災害(地震・津波・原発事故)の端緒となった2011年3月11日14時46分の地震には、気象庁が当日のうちに名前をつけています。地震の正式名は「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」(英文名称:The 2011 off the Pacific coast of Tohoku Earthquake)です。
ただ地震・津波・原発事故などを総称する「震災名」については、現在のところメディアによって呼称が別れています。日経ビジネスオンラインなどは「東日本大震災」。NHKなどは「東北関東大震災」、読売新聞などが「東日本巨大地震」、日本テレビなどが「東日本大地震」という呼称を使っています。
また国内の一部メディアや海外メディアの中には「3.11」という表記を使うところもあります。これは2001年9月11日に起こった米国同時多発テロ事件の通称「9.11」を意識した名づけであるように思います。
公式の名前が「答」とは限らない
似た混乱は、1995年1月17日の「阪神・淡路大震災」でも起こりました。当初この震災はメディアによって「阪神大震災」「関西大震災」「関西大地震」などのように呼称が別れていたのです。
呼称がまとまったのは、政府による呼称が定まって以降のことです。政府が「阪神・淡路大震災」という統一名を定めたのは同年2月14日の閣議でのことでした。
ただ「公式な名称」や「一般に広まった名称」が、万人に受け入れられるとは限りません。例えば2004年10月23日に新潟県中越地方で発生した地震とその災害について、一般には「新潟県中越地震」という名前が定まっています。しかし被災地の新潟県は「被害の規模を認識してもらいたい」という立場から「新潟県中越大震災」という呼称を公式に使っています。
復興事業を進めるに当たっては、その災害名がどれだけ的確であるのかが重要となります。例えば「阪神・淡路大震災」という呼称については、明石市(神戸市の西に位置しており「阪神」に含まれないとも解釈できる)で「被害の実態に即していない」との批判がありました。災害名に含まれる「災害の規模や範囲」の情報は、復興政策に携わる人の意識に影響を与える可能性があります。復興政策を具体化するのに伴い、政府や地方自治体などがどのような呼称を使うようになるのか。今後の注目点となりそうです。
なお執筆時点の情報では、与党・民主党内で「復興庁」の創設構想が浮上しています。この機関の正式名称や業務内容も注目点の一つになりそうです。ちなみに関東大震災(1923年9月1日)の時、政府は「帝都復興院」という名の政府機関を同年9月27日に設立しました。また阪神・淡路大震災の場合、震災から約1カ月後の1995年2月24日に「復興基本法」(阪神・淡路大震災復興の基本方針及び組織に関する法律)を成立させ、即日に施行しています。
海外の視線~日本のために祈りを~
さて東日本大震災の関連語のうち、どうしても注目せざるを得ないのが「海外発信の言葉」です。東日本大震災が「地震・津波・原発事故という三重苦に見舞われた災害である」こと、さらに「日本人が未曾有の大災害に遭っても冷静さを失わなかった」ことが、海外の人たちの興味を刺激しているようです。
今回ほど日経ビジネスオンラインの記事がリアルタイムだと感じたことがありませんでした。このツイッターのデマやネタや各種作戦の盛り上がる様子、自分もその一端を担ってしまったこともあって、非常に生々しい記事だと思いました。ありがとうございます。(2011/03/30)