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アメリカの「誰が」推進したいのか

国民に、目隠しをしたまま交差点を渡らせてはならない

  • 三橋 貴明

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2011年4月4日(月)

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 本連載は今回が最終回である。

 民主党の菅直人内閣は、参院予算委員会において、環太平洋経済連携協定(TPP)参加問題について、当初の6月判断を先送りする考えを示した。東日本大震災という大災害からの復興という、喫緊の課題に直面している以上、当然である。

 とはいえ、経済産業省や外務省、及び日本国内のTPP推進派は、TPPについて諦めたわけでも何でもない。95年の阪神大震災後に、一気に日本で各種の規制緩和が進んだことを思うと、半年以内に、

「震災から復興するためにも、日本経済の強化が必要だ」

などの、イメージ優先の理屈を編み出し、「復興のためにこそ、TPP推進」といった論調が、新聞に載り始めることになるだろう。日本国民は、今こそイメージにとらわれることなく、冷徹な視線でTPPをはじめとする各政策について理解しなければならない。

4カ国締結済み協定が公開されていない

 本連載第1回より、筆者はTPPについて「平成の開国です」などとイメージ優先で事を進める政府を批判してきた。もちろん、各種の情報がきちんとオープンにされ、国民的な議論が巻き起こった上で、日本国民がTPPを選択するというのであれば、それはそれで構わない。

 とはいえ、現実には(信じられないことに!)いまだにTPPの現行協定、いわゆる「P4協定」の正式な日本語版がオープンにされていないのだ。今さらであるが、TPPとは「これから結ばれる協定」などではない。シンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイの4カ国が、すでに締結済みの協定なのだ。4カ国が締結済みP4協定を国民に公開することは、この種の協定を検討する際には基本中の基本であろう。

 ところが、故意なのかどうかかは知らないが、民主党政権はいまだに現行のP4協定について明らかにせず、「平成の開国です」などと、イメージを優先させることを続けている。国民は現行協定を日本語で読むことなく、「平成の開国」などのフレーズを頼りに、TPPについて検討しなければならないのだろうか。

 適切な情報を、適切なタイミングで政府が提供することは、民主主義の基本だと思うわけだ。少なくとも、民主党政権による現在のTPP検討手法は、民主主義の基本を疎かにしていると断ぜざるを得ない。

 本連載も最終回ということで、TPPとは「結局、何なのか?」についてまとめておきたい。ここで言うTPPとは、シンガポールなどが締結済みのP4協定の話ではない。2009年の、アメリカによる参加表明以降のTPPについてである。

 アメリカにとって、日本が入らないTPPなど、ほとんど意味をなさない。何しろ、連載第1回で見た通り、現状のTPP参加国、参加加盟国のGDPを合計すると、日米両国で9割のシェアになってしまうのである。また、第2回でご紹介した通り、アメリカが輸出倍増計画による自国の雇用改善を望んでいる以上、現行のTPPの目的が、

「日本にアメリカの農産物やサービスなどを輸出する」

ことにあるのは明白だ。

アメリカの関心事項は金融や投資

 第6回で見たように、アメリカの新たな構造改革要求の場である「日米経済調和対話」における「アメリカの関心事項」と、TPPで検討されている24の作業項目は、見事なまでに一致している。ご丁寧なことに、元々のP4協定には存在しなかった「サービス(金融)」や「投資」までもが、24の作業部会の中に含まれているわけだから、まさに何をか言わんや、である。単純に、日米経済調和対話において、アメリカの関心事項に金融や投資が入っているからこそ、作業部会の方にも加わっただけなのである。

 さて、前回までをお読みいただいた読者は、アメリカが「TPPで何をしたいのか?」については、概要をご理解いただけたのではないかと思う。次に問題になるのは、「誰がTPPを推進したいのか?」である。

コメント20件コメント/レビュー

確かにワンフレーズポリティクスのようなイメージ戦略で進むのは問題ですが、それって以前からあったことなので、別に今更感が否めません。投資における輸出が可能になる点も問題な部分はあるにせよ、ITなんかは別に法人や枝があるのだから、そんなの問題にしても意味がないですよね。仮にサービスを輸出するにしても、日本の国民性や慣習からすると、あいません。金融にしても一部違うにせよ、ほとんど一緒かと。TPPの中身の議論がされず、肝心な話がされていないのは問題で、筆者には大きく同意しますが、それって別にこの件に始まったことではないので、そもそもなんでそういう事になったのかっていう分析をしないと意味がないような気がします。(2011/04/19)

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いただいたコメント

確かにワンフレーズポリティクスのようなイメージ戦略で進むのは問題ですが、それって以前からあったことなので、別に今更感が否めません。投資における輸出が可能になる点も問題な部分はあるにせよ、ITなんかは別に法人や枝があるのだから、そんなの問題にしても意味がないですよね。仮にサービスを輸出するにしても、日本の国民性や慣習からすると、あいません。金融にしても一部違うにせよ、ほとんど一緒かと。TPPの中身の議論がされず、肝心な話がされていないのは問題で、筆者には大きく同意しますが、それって別にこの件に始まったことではないので、そもそもなんでそういう事になったのかっていう分析をしないと意味がないような気がします。(2011/04/19)

TPPに反対している方々は、近い将来、経済的に中国の属国になることを望んでいるのでしょうか?私は、強引にルールは作るけど、出来たルールがちゃんと守るアメリカの方が、ルールは一切無視の独裁国家である中国より、長く付き合えると思いますが。あるいは、経済的に自主独立(むかしの非武装中立?)が可能な方策があれば、是非、提示して頂きたいと思います。私は、近い将来、アメリカと一緒になって中国をTPPに引き込んで、同じ価値観で貿易出来るようにした方が良いと思います。(2011/04/06)

著者本人の人格やNBOの編集方針にまでケチを付けるようなアンチが大量に発生する、非常に貴重な連載でした。感情的で、全く論理性に欠けるアンチが湧けば湧くほど、知りたくなる。そして自分で調べた結果、なぜ人格攻撃や読むに値しないなどと切り捨てる極端な反論が多く寄せられるわりに読むべきとする意見が多いのか、納得する人が多くなるのだろう。三橋氏および日経ビジネスオンラインの関係者の方には、貴重な意見を読む機会を作っていただいて感謝している。(2011/04/05)

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