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意外な反応を見せたエネルギー市場

震災とリビア空爆で分かった世界的情勢の変化

2011年4月5日(火)

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 今回発生した東日本大震災後に対してエネルギー市場は、かなり意外な反応をした。仔細に見てみると、ここ10年くらいの世界的エネルギー事情の変化を象徴するような反応だった。

 今から3年9カ月前の2007年7月、中越沖地震で東京電力の柏崎刈羽原発が7基全部停止したとき、代替の火力発電所用燃料として東京電力が血眼になって液化天然ガス(LNG)の買付に乗り出した。

 当時、同社に調達を依頼されたある大手総合商社は、スペインのイベルドローラやユニオン・フェノサ(電力会社)、ガス・ド・フランス、BG(旧ブリティッシュ・ガス)の米国拠点といった大口ユーザーや、アルジェリアのソナトラック(国営炭化水素公社)等のサプライヤーに軒並み打診し、玉をかき集めた。その結果、日本向けLNGのスポット価格が(百万BTU当り)10ドルから一挙に20ドル超に暴騰した。ガスの液化設備に莫大な投資を必要とするLNGは、20年程度の長期契約が伝統的な販売方法である(それが融資の担保になる)。そのためスポットで取引される量は極めて少なく、容易に暴騰する。

今回もLNG価格は暴騰すると思っていたが…

 今回、東京電力は、福島第一原発などの代替発電所として、計画停止や定期点検中だった横須賀火力3、4号機(石油焚き)、品川火力1号系列第1軸、横浜火力7号系列第2軸(以上ガス焚き)などの運転を再開する。したがって筆者は、LNG市場でもてっきり以前と同じことが起きると思っていた。

 ところが、LNG価格は震災前の10ドル前後から11ドル台と、わずかな上昇にとどまった。その理由は2つある。(1)2007年に比べて、供給が潤沢で、スポット市場といえど買い手市場になっていることと、(2)サプライヤーやメジャー(国際石油資本)が日本支援という観点から、従来のように足元を見て値段を吊り上げるようなことをしなかったことである。

 (1)については、昨年12月に、世界最大のLNG出荷国であるカタールが、すべてのLNGプロジェクトを完成し、年間生産能力7,700万トン体制(世界シェア30%)に入ったことが大きい。そのほか、2000年代に入って技術の進歩やエネルギー価格の高騰で、北米のシェールガス(頁岩層から採掘される天然ガス)の生産が飛躍的に増加した「シェールガス革命」や、2008年のリーマン・ショックや昨今のユーロ危機による世界景気後退の影響もある。

 (2)については、多くのLNGサプライヤーが、日本救援という観点からいたずらに価格を高騰させない立場をとり、欧米メジャーもコーポレート・レピュテーションの観点から、これに追随した。こうしたことは過去になく、非常に予想外だった。これはサプライヤーに「新セブンシスターズ」(ペトロナスやガスプロム等)と呼ばれる国営石油会社等国家を代表する企業が多く、政治的判断で行動できたのが一因である。

 中越沖地震で停止したのは東京電力の柏崎刈羽原発だけだったが、今回は東京電力や東北電力の東日本太平洋側が火力も原子力も軒並み壊滅的な打撃を受けた。そして、ほぼすべての電力会社が燃料確保に乗り出し、とりわけ東電は24時間体制を組んで調達したため、総合商社の燃料部門は真夜中でもメールが飛んできて、その対応に追われた。しかし現在は、船舶運送費の便乗的な値上げや、放射能を恐れて日本に寄港したがらない船舶があるといった問題はあるものの、状況はかなり落ち着いてきている。東京電力は4、5月のLNGについては、主として日本の他の電力会社や韓国からの融通で確保した模様である。

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「意外な反応を見せたエネルギー市場」の著者

黒木 亮

黒木 亮(くろき・りょう)

作家

1957年、北海道生まれ。早稲田大学法学部卒、カイロ・アメリカン大学(中東研究科)修士。銀行、証券会社、総合商社に23年あまり勤務して作家に。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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