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030|巨大技術は化け物となる
いま読み返したい『スモール・イズ・ビューティフル』

2011年4月12日(火)

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 「限定された目標に向かっての成長はあってもよいが、際限のない、全面的な成長というものはありえない。」

 十数年前にある恩師から紹介されて初めて読んで以来、私の思考に多くの影響を与え続けている1冊の本があります。1973年に発表された、 E.F.シューマッハ著『スモール・イズ・ビューティフル』です。

人間とはブレーキの効かない生き物

 シューマッハは1911年ドイツ・ボン生まれ。英オックスフォード大学で学んだ後、戦後、英国に帰化し、1950年から英国石炭公社の顧問になりました。彼は1960年代から「近い将来におけるエネルギー危機」や「行き過ぎた資本主義社会の崩壊」を警告し、それはたちまち現実のものとなりました。

 人間とはなかなかブレーキの利かない、逆戻りのできない生き物です。50年も前から叫ばれ始めていた様々な忠告には耳を傾けることなく、際限なくエネルギーを使い続け、あらゆるものを作りまくってきました。とどまることを知らない技術開発。もちろん成長は悪いことではないのですが、再度「なぜ生きているのか」「どう生きていくべきなのか」という課題に対し、こころの底から向き合わなくてはならない時期が来ていました。

 そんな中、私たちは3月11日を迎え、福島原発問題に直面しました。

 1990年、私がロンドン大学キングスカレッジで英語を勉強していた時に出会ったイギリス人教授は、授業の中で「日本ほどのブレイン国家はない」と、当時の日本の技術、生産、発展ぶりを絶賛していました。「日本がブレイン国家? 本当だろうか」。成長はどこまでも続くかのように思われていた時代でした。

 しかし日本経済の流れはその直後のバブル崩壊によって大きく変わっていくことになります。徹底した原価低減、パワーマネージメントの導入を余儀なくされ、会社は柔軟性に欠けた体質に変わっていきました。

 『スモール・イズ・ビューティフル』の中でシューマッハは次のように述べています。

 「奇妙なことであるが、技術というものは人間が作ったものなのに、独自の法則と原理で発展していく。そしてこの法則と原理が人間を含む生物界の原理、法則と非常に違うものなのである。自然界のすべてのものには、大きさ、早さ、力に限度がある。だから、人間も一部である自然界には、均衡、調節、浄化の力が働いているのである。しかし、技術にはこれがない。というよりは、技術と専門家に支配された人間にはその力がないというべきであろう。」

 どのような時代においても、時には流れがあり、バイオリズムがあることは世の中の原理でしょう。シューマッハはまた「ふるさと派」と呼ばれるコンセプトを掲げ、急激に進展する都市化は抑えるべきであるという考え方を示しました。

 すべてが予測されていたということです。警告がなされていたにもかかわらずそれを無視して50年が経ち、環境や資源、さまざまな問題が明らかになってきました。人間にふさわしいスピードをはるかに超えて展開された近代化、資本化、消費社会がもたらしたあまりにも大きな弊害。

映画『2001年宇宙の旅』が意味するもの

 私たちはもうこれ以上同じ間違いを繰り返してはいけない。

 『スモール・イズ・ビューティフル』と同時代、1968年のSF映画最高傑作、スタンリー・キューブリック監督の『2001年宇宙の旅』。この映画もまた、人間の技術がつくり出すものに対する強烈なメッセージを含んでいました。

 冷戦時代の1961年5月。宇宙開発でロシアに遅れをとったアメリカのケネディ大統領は国民を前に劇的な演説を行いました。それは1960年代が終わるまでに、人類を月に着陸させ、無事に帰還させるというものでした。アポロ計画です。この政治戦略的な思惑から始まった「ムーンレース」、それは巨大化した技術競争でもありました。米国政府はNASA(米航空宇宙局)に対し膨大な予算をつぎ込んで行くことになったのです。

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