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「情報弱者」を救済せよ

  • 原 隆,白壁 達久,小瀧 麻理子(日本経済新聞経済金融部)

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2011年4月14日(木)

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今回の震災ではネットを介した情報の共有や伝達が、被災地支援に役立った。だが、依然として一部の高齢者や外国人は情報が得られない「情報難民」になっている。震災で浮き彫りになった情報格差を埋める努力は、今後も必要だ。

 金融ベンチャーで働く戸川良太氏(31歳)は震災発生から10日後、福島県いわき市に入った。街頭には人の気配がなく、燃料切れになった車があちこちに乗り捨てられている。横転した車からは燃料が抜かれたのか、タンクのキャップが開いたままだ。「震災直後から時間が止まっている」と錯覚するほど、町は静寂としていた。

 戸川氏は震災以来、被災地の様子をテレビで見てショックを受けていたが、自分が何をすべきか、何ができるかも分からない。もやもやとした思いを抱えつつ、普段通りの生活を続けた。

 3月17日の木曜日。1年ほど前から「一心同隊」と称して定期的に集まり、勉強会や飲み会を開いていたベンチャー企業仲間の1人からメールが届いた。「僕ら、このままでいいのかな」。自分と同じ気持ちの友人がここにもいた、と思った。

 動こう。そう考えた戸川氏は即座に一心同隊のメンバーに連絡を取り、救援物資を送ることを決めた。フェイスブックやツイッターで救援物資を募った。届け先はメディアで繰り返し報道されている地域はあえて避けた。

 その結果、報道陣でさえあまり立ち入らない福島第1原子力発電所の周辺地域への援助を決めた。最終的には、事故で避難や屋内待避を余儀なくされているいわき市を選んだ。「僕らはニッチな市場で生きるベンチャー企業の集まりだ。だからこそ、ほかの人の手が届いていない地域で、困っている人たちを支援しよう」。

 最初に届けたのは避難所だった。110人以上から集まった4トン分の物資を届けた。しかし、その後に思いがけぬトラブルが起きてしまう。

電話の向こうで飛び交う怒号

 帰途に就いて間もなく、いわき市で屋内待避している人から救援物資を求める切実な問い合わせがツイッター経由で入ってきた。戸川氏が「避難所に置いたので取りに行ってください」と伝えると、今度は避難所から断られたという連絡が来た。

 被災地の人々でシェアしてもらおうと置いてきた救援物資だ。避難所に連絡して届けた物資を分配してくれないかと話していると、突然、電話の向こう側で怒声が上がった。「俺らのものを渡せるか!」。戸川氏は受話器が置かれたまま約10分間、電話の向こうから聞こえてくる争いの声を聞いた。

 追い詰められた人々には、命に関わる物資を分配する精神的余裕はなかった。戸川氏にはその気持ちが痛切に分かった。しかし、屋内待避し孤立している人たちの存在も気になる。避難所より手の届かない場所で苦しんでいる人たちがいる。次はここだと決めた。

孤立していた自宅難民に向け救援物資を届ける有志のベンチャー企業家たち

 2回目の訪問となる3月27日には屋内待避地域の団地などに行き先を変更。物資も届かず、水も出ず、取り残されていた高齢者の人たちは泣いて喜んでくれたという。

 「物資が足りない」と情報発信できるところには、時間はかかっても何とか物資は届く。だが、苦境を発信できない「情報弱者」にはいつまでたっても救いの手は差し伸べられない。戸川氏は見過ごされていた現実を知った。

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