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「出荷制限」被害は政府無策の責任だ

「自主的な検査、出荷」を民間に求めた、重すぎるツケ

  • 樫原 弘志

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2011年4月20日(水)

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 福島第一原子力発電所事故以降、関東、東北の産地で広がる農作物の“風評被害の犯人”は誰なのか――。確かに、消費者、流通業者も加担したことにはなるだろう。しかし、政策の不備、リスク・コミュニケーションの不足が拍車をかけたことも間違いない。

 農作物の放射能汚染は、放射性物質を広範囲に拡散させた東京電力に賠償責任があるのは明らかだが、風評被害の広がりを助長した点で、政府の責任も問われるべきだ。検査や管理を徹底すれば、無駄に廃棄する農作物も少なくできるはずである。

仕入れ担当者の言葉足らずが招いた誤解

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 3月21日夕、利根川流域の水田の被災状況を調べた後、農事組合法人・和郷園(千葉県香取市)の本社に立ち寄ってみると、代表の木内博一が真剣な表情で電話をかけまくっていた。聞けば、その日の昼頃、遠隔地にある取引先の生活協同組合の1つから「千葉県産野菜の出荷を取りやめて欲しい」という申し入れがあったという。同業者と情報交換しつつ、販売担当の役職員を集めて対策を協議している最中だったのである。

 前日の20日、東京都の放射能検査で、千葉県旭市産の春菊から、食品衛生法の暫定規制値を上回る放射性物質が検出されていた。その事実が21日、取引先の生協の地元の新聞でも大々的に報道され、驚いた生協の仕入れ担当者が、春菊に限らず、和郷園など千葉県産の野菜を出荷する契約先に電話で一斉に伝えたらしい。

 生協幹部との電話のやりとりで、生協の要請は「自主的に検査をして安全性が確かめられるまで、可能なら出荷を控えて欲しい。難しいなら契約通り出荷してもらって構わない」という内容で、「出荷停止」は急いで連絡した仕入れ担当者の言葉足らずが招いた誤解と判明する。

 しかし、木内のもとには、同じように生協から出荷自粛を申し入れられた同業者から相談が相次いでいた。放置すれば風評被害に甘んじる結果になると考えた木内は、風評被害を助長しかねない生協の行動に厳重抗議した。「強硬策を取って損をするのは我々出荷団体」と分かっていても、農業者としてプライドが人一倍高い木内は生協の言いなりになることをよしとしなかったのである。

風評被害防止への対策を求めて要請活動

 和郷園は香取市周辺の青年農家の集団で、集荷・出荷販売額は20億円足らずだが、加工・冷凍部門の株式会社・和郷や都内に持つ直売店なども合わせると年商50億円もの有力な農業ビジネスグループになる。20年ほど前、木内氏がゴボウをカットして生協に納入したのが評判となり、仲間が次々増えて農事組合法人となった。

 卸売市場に出荷すると、仕入れ量が多い量販店の力が強すぎて、出荷団体は量販店の仕入れスタンスに振り回されがちだ。和郷園は、独自ブランド商品の開発や循環堆肥の使用、栽培管理基準の作成など消費者の期待、ニーズに応える農業の実践を心がけ、市場出荷作物との差別化、直販体制を築き上げてきた。しかし、福島第一原発事故による放射能汚染問題はそうした契約出荷団体も容赦なく風評被害の渦の中に巻き込んでいる。

 「小売業界は慢性的なオーバーストア(店舗過剰)。生産者がその犠牲になることがあってはならない」
 「生産者が集まって政府や流通業界に意見を言うために、生産者適正取引協会(仮称)のような組織が必要だ」

 長い間そう考えていた木内は3月26日、民主党に対する農家の提言組織「食と農の再生会議」で事務局長を務め、さんぶ野菜ネットワーク(千葉県山武市)常勤理事でもある下山久信と、生協のパルシステム生産者・消費者協議会の代表幹事で佐原農産物供給センター(千葉県香取市)常務理事の香取政典らに相談を持ちかけた。

 そして、直販・直売中心の農業を展開する16の団体・法人と共同で千葉県契約取引連合会を設立。下山、香取とともに共同代表に就任して、早速、農林水産省や厚生労働省、国会に放射能被害の救済、風評被害防止への対策を求めて要請活動を始めた。

コメント9件コメント/レビュー

生産者側に立った記事であると思いました。食の安全が原発、放射性物質だけ特別扱いされるのはおかしいとのご意見もありますが、農薬について日本はある程度安全基準をつくり使用してきました。が、放射性物質にはまったくそういったものがありません。野菜が汚染されても冷凍保存で安全になるのでしょうか?半減期が約30年もあり体内で100~200日もガンマ線を出して体内被曝させるセシウム137は?大人はいいんです。せめて、子どもたちやこれから子どもを産む若者、妊婦さんたちの口に入らないようにすべきでしょう。風評被害という言葉に私も最近イラついています。福島産の野菜を(しかもよく洗って検査したものを)「応援」と称して直売したり、福島県知事が「福島の野菜は安全」宣言をするなど、風評被害の産地のものを買うことが正しいというメディアの論調に疑問を感じています。安全性を訴えるのであれば、「○○ベクレル」と数値を明らかにして消費者が納得できる形にして売ればよい。売ったら終わりでなく、人の口の中に入るまでの責任を持つのが生産者の務めだと思います。生産者が政府に求めるべきは、まずは「人の命を守ること」が大前提であり、そのために必要な生産者への補償であると思います。(2011/04/22)

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生産者側に立った記事であると思いました。食の安全が原発、放射性物質だけ特別扱いされるのはおかしいとのご意見もありますが、農薬について日本はある程度安全基準をつくり使用してきました。が、放射性物質にはまったくそういったものがありません。野菜が汚染されても冷凍保存で安全になるのでしょうか?半減期が約30年もあり体内で100~200日もガンマ線を出して体内被曝させるセシウム137は?大人はいいんです。せめて、子どもたちやこれから子どもを産む若者、妊婦さんたちの口に入らないようにすべきでしょう。風評被害という言葉に私も最近イラついています。福島産の野菜を(しかもよく洗って検査したものを)「応援」と称して直売したり、福島県知事が「福島の野菜は安全」宣言をするなど、風評被害の産地のものを買うことが正しいというメディアの論調に疑問を感じています。安全性を訴えるのであれば、「○○ベクレル」と数値を明らかにして消費者が納得できる形にして売ればよい。売ったら終わりでなく、人の口の中に入るまでの責任を持つのが生産者の務めだと思います。生産者が政府に求めるべきは、まずは「人の命を守ること」が大前提であり、そのために必要な生産者への補償であると思います。(2011/04/22)

こういった、後出しじゃんけん的議論には辟易します。元々風評を作ったのはあなた方メディアです。問題が発生した時は一面が黒々となる位に報道し、問題が無くなった時は分からないほど小さく報道する姿勢が大問題です。問題が無くなった時にも一面が黒々となる様に訂正報道をすべきです。それが公正というものです。(2011/04/22)

大変興味深い記事でした。「安全だ」「危険だ」という水掛け論から一歩進んだ、建設的な意見だと思います。自主検査が混乱を招いていること、国や県が主導して検査体制や出荷制限の手順を作るべき、という意見はごもっともです。検査機関によって手法も異なるかもしれないデータを単純に比較できるのか、という疑問もあります。結果的には安全かどうか判断するのは消費者というのはもちろんですが、消費者が判断するための情報が「自主検査」という不安定・不均一なやり方で提供されているのは問題だと思います。(2011/04/20)

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三品 和広 神戸大学教授