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地元の人にとって「譲れぬ一線」は何かの議論を

地域ブランディングというアプローチ 【後編】

  • 中嶋 聞多

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2011年5月10日(火)

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 私は常々、ブランドとは何かと問われれば、「記号であり、情報である」と答えることにしている。記号論創始者の一人であるフェルディナン・ド・ソシュールが述べたように、シニフィアン(記号表現)とシニフィエ(記号内容)が不可分に結びついたものがシーニュ(記号)であるとすればそれらがコミュニケートされたときに情報となると考えている。

ブランドの正体

 壁にある×印が、単なる傷やよごれではなく、なんらかの意味内容をもつならそれは記号である。その意味内容が、描いた人から他の人々に伝達されるとき、それは情報となる。ブランドもしかり。ただしブランドの場合、表示義(denotation)に対する共示義(connotation)、すなわちある意味を持った記号に、さらに高次の意味が加わっていくプロセスが重要となる。開いた傘の絵柄は通常は傘を、天候なら雨をあらわすが、景気天気図なら不況を意味することになる。同様に、カラフルなパラソルのマークは、ある有名ブランドのロゴとなり、そこには世代によってさまざまな意味作用を伴うことを考えてみてほしい。ブランドとは、受け手の多義的な解釈を伴う重層的な記号なのであり、情報なのである。

二つのBI

 図1は、ブランド・コミュニケーションのモデルを描いたものである。送り手の側にはブランド・アイデンティティが、受け手の側にはブランド・イメージがそれぞれ存在し、両者をつなぐ「戦略的マッチング」がブランド構築のかなめとなる。ブランド・アイデンティティ、ブランド・イメージともイニシャルはBIとなることから、私はそれらを「二つのBI」と呼んでいる。

 バブル崩壊前、コーポレート・アイデンティティという言葉が盛んにもてはやされた時期があった。CIブームといえばご記憶のあるむきも多いことだろう。従来の企業理念を見直し、マークや色、ロゴなどのデザインを一新する活動からはじまったが、大学や自治体など様々な機関にまで広がっていった。実は今日、企業や地域のブランディングの専門家として活躍する人々の中にも、かつてCIの仕事に携わっていた方々が何人もいる。彼らが口にするのは、幅広い構成員を巻き込んだCI活動の意義と、企業サイドにばかり目が向いてマーケットを顧みてこなかったことへの反省である。

 顧客志向はマーケティングの基本だが、ブランド構築においても顧客のニーズやイメージの把握は重要である。ニーズを包含したブランド・イメージが、ブランド・アイデンティティとともに大切な要素となるゆえんある。さらにブランド構築においては、単なるコミュニケーション以上の戦略的な取捨選択が重要となる。すなわち何を生かし、何を捨てるかだ。私はよくこれを「譲れぬ一線」と表現する。

 かつて田中県政の時代に、信州ブランド戦略会議の座長をつとめていた折、この図をみせて委員の方々に繰り返し語ったのはまさにこの点についてであった。たしかに、周到なマーケティングリサーチによって信州が一般消費者にどのようにみられているか分析することは重要である。しかしまずなすべきことは、ブランド・アイデンティティ、つまり長野県民にとって譲れぬ一線は何か、十分に議論することである。この順序を決して間違ってはならない。

 実は、このように考える契機となったのが、わが国の地域ブランディングの嚆矢となった青森県ABMプロジェクトチームによる 『「AOMORI(青森)」ブランドの戦略的マネジメント手法の確立について』 という報告書であった。これは今日でも地域ブランディングのすぐれた指南書であるが、残念ながら、知事の任期途中の交代などにより実現には至らなかった。しかし、たとえ実行されていたとしても、うまくいかなかったと思っている。ブランド・アイデンティティの議論が十分尽くされていないからだ。もし県民を巻き込んだ議論がおこなわれていれば、白神山地が青森県のシンボルにはなりえなかったことだろう。それは長野県のシンボルが松本城や善光寺となりえないのと同じ理由による。津軽と南部、東信・南信・北信・中信それぞれの地域意識はいまだ健在なのである。

ブランド・エクイティ・ピラミッド

 先に述べたように、ブランドは受け手の多義的な解釈を伴う重層的な記号であり、情報である。米国の著名なブランド研究者であるケビン・ケラーはこれを、図2のような形で整理し、顧客ベースのブランド・エクイティ・ピラミッドと呼んだ。

 エクイティとは資産のことである。このピラミッドは4つの層から構成され、第1層は認知の層、第2層は連想または意味づけの層、第3層は反応の層、そして第4層はブランド・ロイヤルティまたは関係の層とされ、強いブランドは下から上に構築されるため、ブランドの梯子(branding ladder)と表現される。

 さらに第2層と第3層は、理性的側面(左)と感性的側面(右)に二分され、これら6つのブロックはそれぞれ、【第1層】突出性(salience)、【第2層左】効用(performance)、【第2層右】イメージ(imagery)、【第3層左】判断(judgments)、【第3層右】感情(feelings)、【第4層】共鳴性(resonance)と命名されている。

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 このモデルの中で重要なのは、ブランド構築には理性的側面と感性的側面の両面があること、認知→連想→反応→関係という段階が想定できることである。これらの点をおさえた上で、頂上に位置する「共鳴性」に向かって、理性的側面と感性的側面の両面から登っていく戦略を考えればよいわけだ。

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