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031|優しいニッポン
明日につながるおばあちゃんの言葉

2011年5月10日(火)

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 「原発、東京に持って返ってくれよ」
 「どうしてくれるんだよ」
 「子供の人生を返してくれ」

 ある日のニュースでした。福島の避難所を訪れ、謝罪する東京電力社長に怒声が飛び交う中、1人のおばあちゃんが社長にかけた優しさに満ちあふれる言葉が頭から離れません。

 「からだに気をつけて。お互い様だから」

極限状態なのに他人を気遣える日本人

 私はこの言葉の中に日本の将来を見た気がしました。

 最も「核」に敏感でなければいけなかったこの国が、そして我々一人ひとりが、なぜこれまで原子力発電所に対してもっと真剣に考えることができなったのでしょうか。責任はどこにあるのか。

 毎日つらいニュースを聞かされる中で、避難所生活という極限状態にありながら他人を気遣うことができる人間の素晴らしさに衝撃を受けました。まるで仏のようなおばあちゃんの言葉には、東京電力社長だけでなく、救われるような気持ちになった人が多かったのではないかと思います。今回はこの日本の優しさについての話です。

 「日本は優しい」

 私がこのことをこころから実感したのは、11年間の海外生活を終えて日本に帰国したその日のことでした。

 母国で日本語が通じるとはいえ、また新しい国で、家探しからの再スタートです。沢山のスーツケースを抱えて成田からバスとタクシーを乗り継ぎ、クタクタになってホテルにたどり着いたとき、フロントのおじさんはこう言って迎えてくれたのでした。

 「それはお疲れになったでしょう」

 短いその言葉に、心の底からホッとしました。それは、とんでもなく長い旅とも修行とも言える時間を過ごしてやっと日本に戻ってきた私と妻には、「11年間お疲れさまでした」に聞こえたのです。

 私たちがどれだけ頑張ってきたか、どれだけつらかったかを見抜いているかのような一言でした。

「人間のあり方」を提示した

  相手を思い、相手の気持ちを察する能力に長けている。これは長くお世話になったドイツ人が最も苦手とすることで、そのような優しさに触れたのは本当に久しぶりのことでした。それから1カ月あまり、新居が見つかるまで滞在したホテルで、街で、人に接するたびに「ああ、ここは日本だ。なんて優しい」と感動は続きました。

 久しぶりの日本は、優しいと同時にシャイで人見知りでした。見知らぬ人にも比較的気軽に声をかける欧米とは違い、日本では朝会った人に「おはようございます」と挨拶をすると、どこか恥ずかしそうに「おはようございます」と返ってきます。その声は決して大きくなく、元気ではないのですが、優しく丁寧で「情」を感じさせてくれるものです。

 シャイな中に感じられる、人間として大切なもの。これは日本独特のもので、「情」を外国人に説明するのは難しいかもしれません。この静かな優しさ、「情」は西洋の強さの真逆の感覚であり、時としてネガティブな弱さととらえられてきたものかもしれません。

 今回の震災において、海外メディアは史上類を見ない大きなアクシデントの中でも大きなパニックが起こることなく、また強奪など人間によって起こされる2次的な被害もほとんど無かった日本という国に驚き、賞賛しました。

 危機的状況の中にあっても秩序が保たれる、その国民性がクローズアップされ、敬意を持って報道されることがほとんどだったようです。たとえどんな状況であろうと、人を思いやるこころを忘れない姿勢。ほかの多くの国の人にとっては考えられない、「人間のありかた」を世界中に提示したのでした。

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