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思わぬところで「不安特需」

  • 池田 信太朗,瀬戸 久美子,白壁 達久

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2011年5月10日(火)

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カセットコンロから家庭教師まで、震災後に特需が起きた。財布のひもを締めるはずの不安感が、むしろ消費の原動力に。この需要、建材などの「復興需要」とはやや趣が異なるようだ。

 小売業にとって、消費者の「不安感」ほど怖いものはない。先行きが不透明になれば、消費でなく貯蓄に回すのが消費者心理の常。ところが震災後の消費動向をつぶさに見ると、その定説とは正反対の動きがあるようだ。

 オール電化のキッチンでは停電時に煮炊きができない。頼みの都市ガスも大地震では止まる。そんな現実を目の当たりにした消費者が買いに走ったのがカセットボンベや卓上コンロ。50%以上のシェアを持つ岩谷産業は「通常時の3倍以上」(同社広報)という需要に応えて増産に取り組む。

 ホンダの「enepo(エネポ)」は、食卓のコンロで使われるカセットボンベ2本を燃料に電気を起こせる家庭用小型発電機だ。小売希望価格は10万4790円と決して安価な商品ではないが、震災以降、1万台近い注文を受けた。その勢いは震災前の10倍。停電への不安感で需要を伸ばしたことは間違いない。ホンダは増産して対応を急ぐ。

 電力消費のピークとなる夏に向けて「節電」の備えも進む。コンビニエンスストア大手は、相次いで店内照明をLED(発光ダイオード)電球に切り替えると発表。東芝ライテックでは「3月末は震災前と比べて2倍のペースでLED電球が売れた」(広報)という。

“危機”がパートナー探し後押し

 意外な特需に沸くのが結婚仲介業だ。結婚相談所「オーネット」では震災後、資料請求の数が急増。一時的に広告出稿を止めていたにもかかわらず、4月に入ってから資料請求数が前年同期比で10%以上増えた。「震災後の計画停電や就業時間短縮で平日に時間的な余裕ができたという理由もあるが、それ以上に、危機を前にして『やっぱりパートナーが欲しい』と本能に近い思いが芽生えたのではないか」とは同社の分析だ。

 オーネット会員で震災後に結婚を決めた人の数は、3月で対前年同月119.5%。成婚者は東京、埼玉、神奈川、千葉の南関東エリアなど都市部に多い。

 楽天市場では震災後、結婚指輪の売り上げが増加中。「マリッジリング」のカテゴリー全体の売上高は、震災以降の1カ月で前年同期比25%の伸びを見せた。

 パートナーに向かえば恋心にもなる不安感。それがわが子に向かう時、思いもよらぬ需要を生んだ。

 家庭教師派遣事業でシェア3割のトライ(東京都千代田区)は震災後、生徒数が前年同期比14%増に。「被災地も含めた数字であるため、東京都心部の伸びはさらに大きい」と森山真有専務は語る。学研の家庭教師部門にも問い合わせが相次いだ。昨年4月の新規問い合わせが422件だったのに比べ、今年は4月26日時点で524件。前年同月比で24%の伸びだ。

 理由は、親心だ。原子力発電所の事故などに対する不安感で「子供を外に出したくない」という親が増えたらしい。

 小売り各社ともに、被災地は別として、震災直後の足元の業績は堅調だ。先行きの不透明感ゆえに消費する。この“特需”は、しかし需要の先食いの側面もある。やがて一服した後、不安感が消費行動に及ぼす影響は反転するだろう。その時、「特需」を平時の需要につなげる企業の取り組みが問われることになる。

日経ビジネス 2011年5月9日号10ページより

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