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その場しのぎの原発賠償策

2011年5月17日(火)

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東京電力の原子力発電所事故に関する損害賠償のスキームがほぼ固まった。国と電力会社が設立する新機構が東電と損害賠償を支援する。だが、新機構方式は穴だらけで実行の難しいその場しのぎの案だ。

 「結局、その場しのぎだ」

 福島第1原子力発電所の事故に伴う巨額の損害賠償(補償)と、賠償による経営への懸念が広がる東京電力の処理を巡るスキームがほぼ固まった5月初め。霞が関のある官僚は、声を潜めながら処理スキームの内実をこんなふうに明かして見せた。

 固まった処理策は、国と原発を持つ9電力会社が新機構を設立し、資金繰りと資本の面から東電と損害賠償を支援するというもの(下図参照)。東電の上場も維持し、国は機構への資金供給の裏づけになる交付国債を付与。銀行から機構への融資の保証も行って、実質的に東電と損害賠償を全面バックアップする形になる。

 一見じっくり検討した案のようだが、内実は異なる。前出の官僚が続けて解説する。

 「2003年のりそな(ホールディングス)のように実質国有化すれば株主に損失が及び、昨年の日本航空のように破綻させると債権者が大幅減免という損失を受けかねない。前者だと東電など電力に多い高齢者などの個人株主に損を負わせ、後者は銀行や生命保険会社などの2010年度以降の決算に巨額の損失を与えかねない」

 「そうなると、関係者の不満が噴出しかねない。そうした不満を回避しようとすると機構方式で株主、債権者の損失を抑える方法しか残らなかった」

新機構案では即座に債務超過も

 原案はある銀行が書いたと言われるが「民主党内でも全く議論されない」(玉木雄一郎・衆院議員)まま、官邸が目先の影響拡大を避けるために“独走”したと見られる。「この方式なら賠償費用は最終的に電気料金に跳ね返る。税金投入を減らし、将来の消費税増税の障害になるのを避けられる」(民主党のある国会議員)として、財務省が最終案を作ったとも言われる。

 加えて経済産業省もこの案なら現行の10電力・地域独占体制を維持できることで賛同したとされる。実態は、政官業の思惑の産物なのである。

 そのせいか、新機構方式は実際には使い物にならない可能性がある。

 この方式では、交付国債と電力会社が原発事故に備えて負担する保険料などを基に機構が東電に貸し付けか出資を行う。東電は、それに自社利益を加えて損害賠償を行うという。

 だが、最大の問題は、この方式の場合の東電の負担額。政府は5月初め、原発補償の負担についての仮試算を行い、補償規模が5兆円の場合、東電負担は2兆 6000億円、10兆円だと5兆円、残りは東電を含む9社としたとされる。さらに東電は補償総額がどちらの場合でも、負担金と独自の賠償の合計で年間数千億円を支払うとした。

 しかし、そこに壁がある。日本の会計基準では、当年度までに損害賠償を含め負債と確定した額を計上し、不確定の賠償額は注記に載せればいいとされているが、賠償額が大きく膨らむと見られる場合は監査法人がそれを認めない可能性がある。確実と見込める債務がある場合、注記だけでは監査法人自身が提訴される恐れがあるからだ。

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「その場しのぎの原発賠償策」の著者

田村 賢司

田村 賢司(たむら・けんじ)

日経ビジネス主任編集委員

日経レストラン、日経ビジネス、日経ベンチャー、日経ネットトレーディングなどの編集部を経て2002年から日経ビジネス編集委員。税・財政、年金、企業財務、企業会計、マクロ経済などが専門分野。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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