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「床に蓄熱」で電力需要ピークカット

「状態変化」を利用する冷暖房システム

2011年5月19日(木)

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 3月11日の東日本大震災に伴う東京電力の福島第1原子力発電所の事故などにより、電力不足が危惧されている今夏。節電対策が最重要課題となっている。特に、家電製品の普及により、年々増加の一途を辿っている家庭の電力消費量の低減は急務だ。

 このような中、住宅における最適なエネルギーシステムの研究に取り組んでいる東京大学工学系研究科の前真之准教授が、現在、注力しているのが、「蓄熱材」を用いた床の冷暖房システムの開発だ。

 3月11日の東日本大震災に伴う火力発電所の被災、東京電力の福島第1原子力発電所の事故、そして、中部電力の浜岡原子力発電所の稼動の全面停止により、電力不足が危惧されている今夏。節電対策が最重要課題となっている。

 特に、家電製品の普及に伴い、家庭での電力消費量は近年、増加の一途をたどっている。その中で、大きな割合を占めているのが、エアコンなどの空調、家電や照明器具、そして、給湯だ。

 住宅における最適なエネルギーシステムの研究に取り組んでいる東京大学工学系研究科の前真之准教授は次のように語る。

 「住宅と設備の高性能化、高機能化に伴い、我々は夏涼しく、冬暖かく過ごすことできるようになった。快適性が向上する一方で、エアコンの電力消費量は増加傾向にある。日本の住宅の冷暖房システムは見直しが必要だ」

東京大学工学系研究科の前真之准教授

 そこで、新たな冷暖房システムの可能性を探るべく、現在、前准教授が注力しているのが、「潜熱蓄熱材」を用いた床の冷暖房システムだ。

 熱をためることができる蓄熱材には、「顕熱蓄熱方式」と「潜熱蓄熱方式」がある。顕熱蓄熱方式では、水やコンクリート、レンガなどが蓄熱材として使われている。入手は容易だが、容積効率が低い、温度レベルを一定に保つのが難しいといった短所がある。

 一方、潜熱蓄熱方式とは、ある温度領域で熱をため続け、その温度領域を超すと、固体から液体、あるいは液体から固体などに状態変化する物質に蓄熱するというものだ。硫酸ナトリウムや酢酸ナトリウムなどが蓄熱材として使われている。

安価な夜間電力を使う

 例えば、氷が入った水は氷が溶け切るまで、0度近辺を保ち続ける。同様に、仮に潜熱蓄熱材が溶けて、固体から液体になる温度、すなわち融解温度が25度とすると、外部から熱を与え続け、潜熱蓄熱材が溶け切るまで、潜熱蓄熱材は25度近辺を保ち続ける。つまり、温度レベルを一定時間、一定に保つことができるのだ。

 潜熱蓄熱材の融解温度や凝固温度は、材料の種類や配合の仕方によって自由に設定することができる。

 前准教授が研究開発中の潜熱蓄熱材を用いた床の冷暖房システムは、次のような仕組みだ。

 約23度と約32度で状態変化する2種類の潜熱蓄熱材で、複数本の細い配管を挟み、それを床一面に敷き詰める。そして、エアコンに利用されているヒートポンプの原理を使い、空気の代わりに水を用いて、夏は冷やし、冬は温めて配管内を循環させるのだ。

 例えば、夏季、20度の冷水を配管に流したとする。すると、液体状の潜熱蓄熱材は凝固するまで冷熱をため続ける。そして、凝固後、冷水を止めても、融解して完全に液体に戻るまでは、冷熱を放出しながら、長時間にわたり、融解温度を維持し続けるのである。

床パネルの断面。「PCM」とは潜熱蓄熱材のこと。ここでは融解温度が23度と32度のものを使っている

 同システムのポイントは、ヒートポンプを、深夜23時から翌朝7時までの時間帯に稼動させるということにある。安価な夜間電力を使ってヒートポンプで冷水や温水を作り出し、それを蓄熱材に蓄冷、あるいは蓄温する。そして、電力消費量の多い日中、その蓄熱材の放熱によって、室内を冷暖房するのである。

 実は、オフィスなどでは、ヒートポンプを使った夜間の蓄熱は一般化しつつある。それを、朝の始業時や、日中の電力需要のピーク時に使うことで、電力料金の大幅な削減、エアコンの起動負荷の軽減、電力需要の平準化、そして、冷暖房設備の小型化を図っているのだ。

 このやり方を、エアコンの電力消費量が増え続けている住宅に、潜熱蓄熱材を使って応用しようというのが前准教授の取り組みだ。

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「「床に蓄熱」で電力需要ピークカット」の著者

山田 久美

山田 久美(やまだ・くみ)

科学技術ジャーナリスト

早稲田大学教育学部数学科出身。都市銀行システム開発部を経て現職。2005年3月、東京理科大学大学院修了(技術経営修士)。サイエンス&テクノロジー、技術経営関連の記事を中心に執筆活動を行っている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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