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消費の現場1 特売が消えた  「震災」と「原料高」が食卓直撃

  • 小平 和良,池田 信太朗,武田 安恵

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2011年5月20日(金)

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家計の味方であるスーパーの特売が店先から消えようとしている。東日本大震災による供給減に加えて、世界的な食料価格の上昇が食卓を圧迫する。供給側のコスト増によるインフレの兆しは、沈滞する消費マインドをさらに弱めかねない。

 スーパーマーケットから「特売」が消えている――。

 全国のスーパーやドラッグストアの特売チラシを分析するチラシレポート(東京都中央区)が収集した2011年3月のチラシ情報は、食卓にかかわる異変を裏づけている。

 同社が公開しているのは、食品など69品目に関する調査。それぞれの商品が、約10万店のスーパーやドラッグストアのチラシにどれだけ掲載されたか、また売価はいくらで掲載されたかを集計したものだ。

普段と変わらないように見えるスーパーのチラシだが、特売商品が次々と消えている

 まず掲載数が大幅に減っている。スーパーのチラシを対象とした調査では、今年2月に比べて、69品目中、60品目で掲載数が減少した。明治の「ブルガリアヨーグルトLB81」は約5800件減の1万4657件、アサヒ飲料の「三ツ矢サイダー」は約3900件減の6895件。震災の影響などもあり調査対象店舗が減った影響もあるが、その減り幅よりも掲載数の減少幅は大きかった。

 掲載価格も「値上げ」した銘柄が多い。2010年12月~2011年2月までの平均掲載価格と3月の掲載価格を比べると、キッコーマンの「本つゆ(1000ミリリットル)」が22円、日清オイリオグループの「日清キャノーラ油(1000g)」が15円、江崎グリコの「2段熟カレー中辛(160g)」が12円と、販売価格が大きく上がっている。

 「特売チラシを作るのに苦労している。今は輸入牛肉など、震災の影響が少なかったもので何とか目玉を作っている状態だ」。関東地方に店舗を展開するスーパーの幹部は頭を抱える。

震災で消えた「特売の原資」

 なぜ特売は消えたのか。

 まず、特売の目玉だった納豆や牛乳など「日配品」と呼ばれるカテゴリーの商品群が東日本大震災以降、店頭から消えた。これらの商品は日配品という名称が示す通り、工場から毎日配送される。そのため、燃油不足など物流態勢の混乱の影響を大きく受けた。加えて、生産のために温度管理が必要な発酵過程を要する納豆は計画停電などで一時、生産中止を余儀なくされた。牛乳は原子力発電所事故の影響で出荷が自粛され、供給量が減った。

 加工食品も厳しい。工場や物流拠点、在庫の損傷で食品メーカー各社は数億~数十億円単位の特別損失を計上している。さらに、供給力の減少をカバーするため、西日本の工場から関東に運ぶなど例外的な物流態勢で臨んでおり、物流費も膨れ上がっている。こうしたコストアップの状況下では、スーパーにとって「特売の原資」となるメーカーの販売促進費は期待できない。

 じわじわと増しつつある家計への負担。震災の影響が薄れるにつれて解消されれば問題は少ないが、この傾向は震災による供給不足が解決されても収まらない可能性がある。というのも、世界的な食料価格の高騰がいよいよ食卓へも波及してきたからだ。

 2010年後半から、食料を含む商品の価格は上昇を続けている。世界の原油市況の指標となるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)価格は一時、1バレル=110ドルに達した。小麦、トウモロコシといった穀物の価格も高値圏にある。国連食糧農業機関(FAO)の発表する主要食料価格指数は2011年に入って、それまでの最高値である2008年6月の213.5ポイントを上回る230ポイント台で推移している。

 中国など新興国での需要増に加えて、リーマンショック後の世界的な金融緩和で生み出された余剰資金が商品相場を押し上げている。「先進国の株式、債券市場が振るわないため、投機資金が新興国絡みの資産に向かいやすい構造が影響している」(ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次・主任研究員)。

消費者物価はプラスが間近だが

 5月に入り、資源価格の世界的な高騰は一服している。過度な価格上昇への懸念から、原油や穀物の価格が下落した。しかし、丸紅経済研究所の柴田明夫所長は「一時的な下落」と分析する。「新興国で食料需要が増加するという構図に変わりはない」ためだ。

 世界的な食料高騰の影響は既に店頭に出始めている。コーヒー豆は4月、ニューヨーク先物市場で14年ぶりの高値をつけた。これに先立ち、国内のコーヒー大手は3月にレギュラーコーヒーの出荷価格を10%超引き上げている。食用油では、大手各社が1月に引き続き4月にも値上げを実施した。

 さらに同じ4月には、政府が小麦の売り渡し価格を18%引き上げた。製粉会社に在庫があるとはいえ、夏以降、パンや麺類など、より幅広い商品に影響が及ぶのは必至だ。

 食品価格の上昇などにより、動きの激しい生鮮食品を除いた今年3月のCPI(消費者物価指数)は、前年同月比でマイナス0.1%となった。依然として物価下落傾向は続いているものの、前年同月比の減少幅は月を追うごとに小さくなっている。総務省が4月28日に発表した東京都区部の4月のCPI(中旬速報値)は前年同月比で、2年1カ月ぶりにプラスに転じた。

画像のクリックで拡大表示

 デフレからの脱却が近づいてきているようにも思えるが、事はそう単純ではない。人口減と高齢化による需要の減少という日本が抱える構造問題は変わらない。総務省が発表している家計調査によると、今年3月の1世帯当たりの消費支出は前年同月比8.5%減と大きく落ち込んだ。この先、増税の可能性が高まってくれば、消費意欲は一層、落ち込むだろう。

 個人消費が振るわない状況では、メーカーや小売りが原価上昇に見合った値上げをできるかは分からない。為替の円高傾向が続いているのが救いだが、円安に振れればメーカーなどはさらに苦しい立場に立たされる。その結果、企業の業績が悪化し、個人消費がますます落ち込むという悪循環にも陥りかねない。“悪いインフレ”の足音がひたひたと迫っている。

日経ビジネス 2011年5月16日号6ページより

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