世界の建設機械市場で、ほぼ半分を占める中国。2012年3月期の成長性を巡り見方が分かれている。世界経済を牽引してきた巨大市場が変調する兆しなのか。

「中国市場の伸び率が10%にとどまるのは、なぜか」。コマツが4月の決算説明会で公表した、中国事業に対する見通しが、機関投資家や証券アナリストの間で波紋を広げている。
通常、10%の市場成長は高い伸びと判断されるはず。その数字が懸念を持って受け止められているのは、前日に決算を発表した国内2位の日立建機が「中国市場の伸び率が前期比で24%の増加になる」という強気の予想をしていたからにほかならない。
日立建機は主力の油圧ショベル、コマツはダンプトラックなどを含む主要7建機の数字という違いはあるが、油圧ショベルが建機需要の中核を占めるため、通常は大きな違いは出ない。予測値における14%の差は、日立建機とは対照的にコマツが、今後の中国市場に対しそれだけ慎重な見方をしていることを示している。
「中国市場の予測は非常に難しいが、4月に入り受注の伸びが落ちたのは事実」と、コマツの野路國夫社長は説明する。中国で建機が最も売れるのは春節(旧正月)明けの2月から3月だ。2月の油圧ショベル需要は前年同期の2.1倍、3月は27%増と高い伸びが続いていた。それが4月に入ると、10~15%程度に鈍化した。販売の最盛期が終わった4月の伸び率は、その年全体の伸び率と近い数字になることが多い。だから、「この数字を基に年間の需要予測を策定した」(野路社長)という。
公共投資に異変の兆候
加えて、コマツが予測した10%という数字にはもう1つ、裏づけがある。野路社長自身の感触だ。
実は、野路社長は4月にたびたび中国へ出張していた。そこで感じたのは公共投資の変調だった。
旺盛なインフラ投資を原動力に内需を拡大してきた中国だが、財政による景気刺激策はインフレ圧力となって跳ね返る。実際、消費者物価指数は3月、4月とも前年同月比で5%超の極めて高い伸びになった。金融当局は数度にわたり利上げを敢行、預金準備率もたびたび引き上げて金融引き締めを図っているが、インフレ抑制には至らない。物価高が生活を脅かせば国民から政権批判の声が出てくる可能性がある。
こうした懸念から、3月に開かれた全国人民代表大会では、物価安定が最優先の課題と位置づけられた。中国政府がインフレ抑制を優先してインフラ投資を手控えれば、数年にわたって世界の建機需要を牽引してきた中国市場の伸びが頭打ちになる。
インフラ投資の伸びが鈍化しても都市化に伴う住宅の整備は続く。が、住宅の建設現場で使われるのは小型の建機だ。インフラ工事で使われるのが20トンクラスの中型油圧ショベルだとすれば、住宅建設は10トン前後。単価も安くなり、出荷台数が増えても売上高の伸びは小さくなる。
「中国需要の10%成長」という数字には、「鉄道、空港、道路。過熱気味だった公共投資を落としてくるかもしれない」(野路社長)という警戒感が込められている。
一方で「中国市場が高い成長を続ける」と予測する日立建機。「前年度は50%の伸びだった。今年も20%は堅いと見ている」と三原新一専務は話す。
先進国が3から3%なのに10%で減速はないんじゃないでしょうか。25%なんて数字がそもそも異常。日立が東電化して自社に不利な数字を覆い隠すために変な予測をしただけじゃない?(2011/05/23)