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武田鉄矢、「当たる要素ゼロ」の映画を語る(動画あり)

超ローカル映画が、奇跡のロングランを続ける理由

2011年6月10日(金)

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「グローバリズムは無力だった」

―― 確かに今、経済誌をやっていても、非常に大きな転換点が来ているように思います。日本も、そしてグローバル経済も「規模を追い求めて、効率よくやって儲ける」というものが限界に来ているのではないかと思わされることが多いんです。そして、日本の地方を見ると、すばらしい経営や経営者が多い。今、少子高齢化というと、「地方がダメだ」「田舎は非効率だ」ということになる。でも実はそうじゃなくて、そういう地域が一番、人がつながっていて、そこに新しい可能性があるのではないか。日本が今、新しい時代のモデルを、地方で作ろうとしているような気がしますね。ウォルマートみたいな世界的な小売店もいいけど、田舎にあるパパママストアってすばらしい。実はこれから高齢者はむやみに動かなくなりますから、その方が経営として未来的とも言える。世界がこれから少子化高齢化していく時、日本の地方が実は最先端になるんじゃないかって…。

武田 世界のね。

―― 世界の。そこにもってきて3・11があって、ある意味「焼け野原」になってしまった。だけどそこに、大きな可能性を感じてしまう。なにか今、本当に、日本の小さな町から未来が始まっているのではないかと感じるんですよね。

武田 今まで、経済的にマイナスだって言われてきたものが、実はプラスの材料になるのではないか、と思いますね。それは「ナショナリズム」ではなくて、「ペイトリオティズム」。「愛国心」と訳すより「愛郷精神」が近いんじゃないかな。うーん、なんかそういうものが、実はすごく大きいエネルギーになってね。なんか純度が高いんですよね。ナショナリズムというのは、いろんな不純物を含んでしまうんですけど、愛郷精神というのは、非常に透明度が高いんです。それを、すごくバカにしながら生きてきた近代化(の時代)だったんだけど、結局、「石巻を離れません」とか「気仙沼をもう一度」とか言う。オリンピックが開けないような町、村の方が、立ち上がる力が本当は強かったんじゃないか。

 それと、世界がもっとも唖然としたのは、「パニックを起こさない人々」っていうのかな。そういう「人間の傑作」のような人たちが、実は田舎にいっぱいいるぞ、という。それはもう、拾うと無限に拾えるんだけど。

 コンビニが津波をかぶって商品が床に散乱している。その散乱した商品を拾ってレジに並ぶ人たちがいる。これ、どこの世界でも全く見られなかったし、探すとすると阪神淡路(大震災)ぐらいしかなかった。ガラス窓は割れてるから、手を入れれば盗めるのに、ガラス窓から手を入れるヤツが1人もいなくて、延々とレジの前に並んでいる。

 それを見てからずっと今も考え続けているんですけど、3・11で地方がガタガタになった、その秩序がなくなった瞬間に、ものすごい勢いで「見えない秩序」が働く。その見えない秩序に対して、国際社会は驚いた。ハーバードの頭のいいサンデル教授でも唖然としていましたよね。「なぜ暴動が起きないんだ」と。東京でもそうですね。100万人単位の帰宅困難者が、なんだか水牛の群れよろしく、自宅方向をめがけてみんな帰って行っている。その間に暴動1つ起きない。その日本の見えざる秩序は、一体どこから遠心力のように、日本国民に働いているのかっていうのは、解かなければならない謎ですよね。

―― 普通は国が法律で縛らなければいけない。

武田 そう。そうなんです。

―― だけど日本の場合は、それが必要ない位の人たちの集まりだということなんでしょうね。ですから、今まで日本は「官」というものに強く支配されてきましたけど、でも実は「民」がものすごく強いのかもしれませんね、特に地方が。あと今、武田さんがすばらしいことをおっしゃったと思うんですね。愛郷精神の話ですが。

 うちのある記者から、こんな話を聞いたんです。気仙沼で漁業をしていた方が、もちろん完全に流されてしまっている。だけど、今後もその地で漁業を絶対にやるって言うんですね。もちろん、歴史を振り返れば、何十年かでまた同じような津波が来ることは分かっています。それでも絶対に漁業をやるという。今回、もちろん土地を去った人もいるでしょうけど、そうすると、どんどん純度が上がっていくわけですね。愛郷精神のある人が残って。日本の地方って、そういう歴史を繰り返してきたんでしょうね。すごい純度ですよね。

武田 不純物がない。これからの1つの理想型を、この震災で残せたのではないか。生き残った人たちが、何かすごい秩序を持っている。その秩序に従っていけばいいんだ、と。中国の人も感動しているらしいですね。この間、テレビを見ていたら、中国の人たちは日本国民に尊敬の念を持った。一方、日本政府に対しては、「初動が遅い」と半分呆れ返っている、と。その見方は少し浅くて、もともと実は、この国の人たちって、官が主導してなかったんじゃないか、という気がするんですよ。

―― なるほど。

武田 官が主導しなくても、この国の人たちには、自分の郷里の未来に関して、思い描く力も、実は備わっていたんではないか。お上というのは、絶えずグローバリズムを意識する。だけど、お上が主導するグローバリズムっていうのは、実は、すごく無力なものだったんではないかという気がしてるんですよね。

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「武田鉄矢、「当たる要素ゼロ」の映画を語る(動画あり)」の著者

金田 信一郎

金田 信一郎(かねだ・しんいちろう)

日経ビジネス編集委員

日経ビジネス記者、ニューヨーク特派員、日経ビジネス副編集長、日本経済新聞編集委員を経て、2017年より現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官