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武田鉄矢、「当たる要素ゼロ」の映画を語る(動画あり)

超ローカル映画が、奇跡のロングランを続ける理由

2011年6月10日(金)

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「儲からないようにがんばろう!」

―― だから、気仙沼でも福島でもいいんですけど、その映像が世界の人に影響を与えている。

武田 そうでしょうね。

―― で、日本の漁村などが、これだけ秩序が守られて「自分たちでもう1回立ち上がるんだ」とやっている。かたやグローバリズムとは何なんでしょうか。経済誌なども煽ってしまった自己反省も含めて。我々も変わるべきで、「こうやって儲ければいい」とか「こうやれば世界の人に売れる」とかいうのが、経済ジャーナリズムが本質的にやるべきことだったのか。これから起ころうとしているのは、非常に人の密な結びつきと、顔が見える人たちがつながっていく社会というんですかね。そこで、「こうやったら儲かります」とか、結局最後に、その薄っぺらい報道の裏側にあるものが見透かされる時代になってきた気がするんです。だから、儲けてやろうとか、出し抜いてでも売ろうとか、そういうことじゃなくて、「もっと人のために」ですとか、そうすると、最後にお金が後から回ってくる、そんなイメージの社会が求められ、世界で最先端になっていく。

武田 でしょうね。

―― だから日本の田舎がスポットライトを浴びるんでしょうね。これは、放っておいても、世界はだんだんそっちに流れるという気がしてたんですけど、今回の震災で、ものすごい勢いで日本の小さなコミュニティーの強さが世界に注目された。ある意味で美しいですよね。

武田 それを実は、我々の映画も求めていたんじゃないか、というね。「美しい町作り」とか、そういうことじゃなくてね。美しい人間関係とか、美しい絆という、目に見えないモノを美しいと言うことがベースにならないと、見て美しいモノが作れないという、そういう時代が突如、来てしまったんではないか。そんな気がするんですよね。

―― だから、全麹仕込みの生酒を作った寺田(啓佐)さんもそうですね。無農薬リンゴ農家の木村(秋則)さんの知り合いの人から無農薬の米を仕入れて、それを寺田さんが昔ながらの製法で作った。ああいうものが本当に、価値を生み出すなあ、と。

武田 そうですね。価値観でね。大きな価値観の移動でね。「良い人」2人が力を合わせて「良いモノ」を作りましたっていう、そのなんか「良い人」っていうね。それが商品を作っていく前提であると。そういうことが起こりつつある。

 ちょうどまた、この映画をきっかけにして、私とは関係なく、良い人が次々と結び付いていっている。なんか浮力じゃないですかね、映画を取り巻く環境の中で、働いている不思議な遠心力は。向谷地(生良・べてるの家創設者)さんもそうですが、「場だ」とおっしゃいますね。「場を作るんだ」って言う。個性を作るんじゃない。なんか、そういう意味では場を作る。そこでは、徹底的に「排除する」ということを止める。「排除の論理を絶対に使わない」と決心をすると、モノの見方が一変するんですよね。

 ずっと、福島の原発のことを考えてるんですけどね。僕らの音楽の仲間で、やっぱり原発排除論ってありましたよね。で、日本のインテリっていうのは、だいたい原発に賛成すると、インテリの資格を失うんですよ。メディアもそうですよ。

―― 特に武田さんの世代はそうですよね。

武田 もう、そうですね。一生懸命、熱心に反原発をやっているやつがいました。その彼らが口にするのは、世界でも芽生えてきた「原子力暗黒神話」なんですよ。今、原子力にまつわる戦いは、原子力安全神話と原子力暗黒神話が戦っている。でもね、造り酒屋の寺田さんの話に出てくる「排除はよくないぞ」というあの一言を、原子力まで広げると、暗黒神話も良くないし、安全神話も良くないんですよ。両方とも、やっぱり人間を排除しているんです。

 だから、原発に関してはいろいろ問題があったけど、もしですよ、あの原発の施設にたくさんの子供が遊びに行く公園があるとすれば、防波堤はさらに高くなっていたんじゃないか。

 私たちはね、絶対に囁いていましたよ。「みんなに正直に言え」って言いたくなっちゃうけど、原発がある村に対する排除って、絶対どこかにありましたよ。で、密かにつぶやいてましたよね。「あの原発の近くで魚を釣ったら、目が3つあった」とかね。そんな暗黒神話っていくらでも言ってたじゃないですか。そんな暗黒神話と無闇な安心神話の格闘が、逆に今度の人災を生んだ。でも、「良い人」は排除の論理を使わない。向谷地さんがおっしゃるし、寺田さんがおっしゃっていることもそうでしょう。木村さんも同じで「害虫と共に」って言う(笑)。

―― (畑に)害虫が来るから成功したわけですし、(寺田さんの酒蔵も)火落ち菌という、保健所さんが「絶対あっちゃいけない」と言っているものが、あるからうまくいく。

武田 あれ、言い切りましたからね。あれは驚くべき発言ですよね。そういう発想ですよね。で、彼らは片隅の田舎の人で、儲からない商売をやっている人だった。ところがね、地殻変動が起きて、彼らがどうも、ドドドドドーって時代の真ん中に来ちゃったみたいなんですよ。

―― そうですね。べてる(の家・精神障害者の活動拠点)さんもそうです。普通は絶対、彼らを企業は雇わない、って言ったら悪いけど、排除されてきた人たちを集めて、黒字なんですってね、会社が。これだけ世の中で「赤字赤字」っていって、減収減益とかいって、大手企業が東大とかから人を集めて赤字になっている世の中で、誰も雇えない方々を集めて、それでみんなで支え合ってやった結果が黒字。なんなんだろう、っていう気がしてきますね。

武田 べてるさんの目標ってあれでしょ、「絶対に儲からないようにがんばろう」っていうわけでしょ(笑)。このパラドックス、逆説が今、正論として考え直すというか、我々が話題の真ん中に据えても、いいんじゃないか。

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「武田鉄矢、「当たる要素ゼロ」の映画を語る(動画あり)」の著者

金田 信一郎

金田 信一郎(かねだ・しんいちろう)

日本経済新聞編集委員

1990年横浜国立大学経済学部卒業。同年、日経BP社入社、日経ビジネス記者、ニューヨーク特派員、日経ビジネス副編集長などを経て2014年より現職。産業、金融、経済事件を中心に取材・執筆。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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