「田村耕太郎の「経世済民見聞録」」

日本企業は、露大統領選後の変化を先取りしてビジネスチャンスにせよ!

ロシアより愛をこめてその2

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2011年6月13日(月)

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 アメリカの金融機関が仕切った今回のプログラムは、ロシアを短時間で徹底的に理解できるよう設計されていた。客観性を維持するため、ロシア人と外国人が相互に懇談できる。ロシア人のポジショントークの真偽を、他の外国人に確かめることができる。健全な批判精神を持って会合に臨むこととした。

 多くの懇談を終えての結論から言えば、伝統的な汚職や非効率性がロシア経済には色濃く残っている。先進国と比較したら「まだまだ」の状態である。しかし、中国やインド、ブラジルと比較すれば、ロシアは遜色ない。いや、事によっては断然ましになっているのではないか。

 加えて、今回学んだロシア経済の変化の方向性や特色から考えて、日本企業が活躍できる余地は大きいと思われる。ロシアは変わりつつあり、日本にはさらに大きなチャンスである。そう確信した。

政治リスクを過大評価するな!

 ランチはEBRD(European Bank for Reconstruction and Development、欧州復興開発銀行)のロシア局長エリック・ラスムーセン氏と取った。同氏は「ロシア株の株価収益率はインドや中国に比してダントツに低い。これは汚職や規制のリスクが過大評価されているからだ。汚職や無用な規制がインドや中国よりひどいということはないよ」と言う。「ロシア株は新興国の中で過小評価されすぎ。これから上がると思う」と強気だった。

 続いてロシア最大野党連合URFの共同党首レオニド・ゴズマン氏の話を聞いた。もちろん、現政権、現大統領にはとても批判的だった。「次期総選挙でプーチン率いる与党・統一ロシアを倒す」と断言。「今の政治がダメだから、ロシア経済は、潜在力があるにもかかわらず低迷している。汚職をなくし、ビジネスをもっと透明で公平にし、民営化も進める。だから投資してくれ」。

 こういう人物が、命を狙われるどころか、現職の政治家として言論活動できるようになった点は「ロシア政治の変化」と評価できるのではないか。中国ではあり得ない光景だ。ロシア政治の変化に期待が持てる気がした。

 続いて駐露アメリカ大使のジョン・ベイル氏。外交官なので、バランスのとれた発言しかない。よって問い質すしかない。「プーチン首相とメドベージェフ大統領の戦いはどれくらい本気と見るか」と質問した。答は「ペンタゴン(国防総省)と国務省の戦いくらい本気だ」って。これどういうことだ? 多分本気で衝突しているということだろう。

 同大使はこう続けた。「次期大統領に、メドベージェフが再選されようが、プーチンが戻ってこようが、無名の第三者が選ばれようが、アメリカはすべてのシナリオに準備ができている。どのシナリオでも経済の改革や汚職の撲滅は今より進むのではないかとみる」。

経済のサービス化と起業が進む

 ロシア経済の構造を俯瞰すれば「100年前とほぼ一緒」と言える。原材料を輸出し、最終製品を輸入するというものだ。今でもこの構造はほぼ変わらない。

 ただ、変わってきた面もある。可処分所得が高くなり、1人当たりGDPはBRICSで最大となった。これからのロシア経済は、サービス産業のウエイトがより高くなるだろう。現在、ロシアGDPの3分の2は既にサービス産業だ。これからは商業施設やホテル、娯楽産業が有望だと言われる。ロシア人は日本の文化が大好きなだ。日本の小売業や、サービスの質の高いビジネスホテル、カラオケなどが進出すれば有望だと思う。

 もう一つの変化は起業家の増加だ。スコルコヴォ・ビジネススクールの第1期卒業生(2010年卒業)の7割が起業したとのこと。ハーバード大の卒業生でも、卒業後にすぐ起業する者は10%に満たない。卒業生の70%がすぐに起業するというビジネススクールは世界中のどこにもないだろう。しかもコンサルタントや投資銀行からの入社オファーを蹴って、自らの企業を始めた者が多い。もちろんこの学校を国家がバックアップしていることも大きいのだが。

 彼らは、優れた技術を持ちながらも資本主義に慣れていない。彼らのグローバル展開を支援するビジネスも、日本の企業が狙える場所ではなかろうか?

 ロシア国際エネルギー研究所のタチアナ・ミトロヴァ所長とも懇談した。ロシアではこれから省エネ技術がより不可欠となってくる。理由は2つ。第1にエネルギー効率が非常に悪いこと。ロシアのエネルギー効率は非常に悪いので、ほんの少しの改善で大きな効果を生む。第2はエネルギー価格が上昇し続けていることだ。エネルギー価格の上昇により、今までより、各種産業が省エネ技術を求めるようになる。ということで日本の省エネ技術への注目が非常に高まっているとのこと。

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著者プロフィール

田村 耕太郎(たむら・こうたろう)

田村 耕太郎 前参議院議員、元内閣府大臣政務官(経済財政政策担当、金融担当)、元参議院国土交通委員長。早稲田大学卒業、慶応大学大学院修了(MBA取得)、米デューク大学ロースクール修了(証券規制・会社法専攻)(法学修士号取得)、エール大学大学院修了(国際経済学科及び開発経済学科)経済学修士号、米オックスフォード大学上級管理者養成プログラム修了。



このコラムについて

田村耕太郎の「経世済民見聞録」

政治でも経済でも、世界における日本の存在感が薄れている。日本は、成長戦略を実現するために、どのような進路を選択すればいいのか。前参議院議員で、現在は米イェール大学マクミラン国際関係研究センターシニアフェローを務める筆者が、海外の財界人や政界人との意見交換を通じて、日本のあり方を考えていく。

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