前回のコラム 「外資といえども日本IBMは顧客のおかげで国際化した」では読者の方からいろいろなコメントをいただいた。そのうちの1つを紹介させていただく。「グローバルな社内分業体制によって、社員のパソコンのトラブルには中国のヘルプデスクが日本語で対応し、その資産管理は欧州で行い、社員の交通費の精算や暮れの年末調整も中国でやっていることなどを同社勤務の友人に聞いたことがあります。今後は、IBM社にとどまらず国境を越えて英語によるコミュニケーションが益々重要となることが予見される話だったと思います」。
実際コストを抑えるために、日本IBMでは交通費の清算や年末調整などの業務まで、アウトソーシングが進んでいることに驚かされた。 これは世界的な競争にさらされている日本の企業の将来図ではないかと思う。多分コストだけでなく、その地域の従業員の質も業務が集約されるため高度になってきており、日本企業の間でこのような動きは進むと思われる。
コストの安い海外で生産できるものを生産するのはあたり前になってきているが、すでに日本語の壁で守られていたコールセンターなどまでも海外に移動され、日本人はあらゆる面で海外の人々と賃金競争にさらされる厳しい状況を再認識したコメントであった。
さて、今回は英語公用語化を話すうえで必ず出てくる議論の1つである「母語以外の言葉を学習すると母語が完全にマスターできず、それによって論理能力なども充分に育たない」「英語の早期学習は日本語能力や論理性などの育成を阻害してしまう」などの点について考えてみたい。いろいろな意見があるので本当はどうなのだろうかと考えている方も多いのではないだろうか。
日本では、今年から小学校の5年生、6年生で英語の授業が開始されたが、英語に授業時間をとられてしまい日本語の能力が充分に育たないという理由で早期の英語学習に反対する意見を聞く。この問題について言語学ではどのような研究結果があるのだろうか? 言語政策を研究している京都大学・高等教育研究開発推進機構の塚原信行准教授に大変興味ある話をお聞きしたのでご紹介したい。
塚原さんは京都大学でスペイン語を教えているが、社会言語学を専門分野としており、スペイン国内の少数言語地域であるカタルーニャを研究対象としている。この地方のピレネー山中にあるアラン谷と呼ばれる地域での言語教育について実際にフィールド調査をしている。スペインとフランスの国境にあるアラン谷では、アラン語という言語が話されている。アラン語は谷という外部から離れた地形のため消滅せずに残ったのかもしれない。加えて、彼らはスペイン語、カタルーニャ語(スペインのカタルーニャ地方を中心に話されている言語)を話し、フランス語や英語を話す人も多い。

そこではどのような教育をしているのだろうか? アラン谷の幼稚園ではアラン語、スペイン語、カタルーニャ語を学ぶ。 スペイン語もカタルーニャ語もアラン語も、すべてロマンス諸語と言われる、ラテン語から派生した言語であり、この3言語の間では、形態や統語といった要素が似通っている。小学校にはいると、8歳頃にフランス語を学び始めるが、フランス語の授業だけでなく、フランス語で図画工作などを学ぶ。10歳ぐらいになると英語の授業が始まるが、やはり英語で体育などが教えられる。
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筑波大学付属高校を卒業後、米ハーバード大学に留学(環境学特別専攻)、フランスの国際経営大学院「INSEAD(インシアード)」でMBA(経営学修士)を取得。パリのマッキンゼー、ロンドンのシティーでファンドマネジャー、ポーランドで民営化に携る。その後、スイスのBIS(国際決済銀行)フランスのOECD(経済協力開発機構)で職員年金基金の運用責任者を経て、現在スイスで資産運用活動に従事。 日本のファミリーオフィスの海外投資戦略、社会貢献活動に対するアドバイスも行っている。

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