「時事深層」

東から西へ、「疎開転職」増加

  • 白壁 達久,蛯谷 敏

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2011年6月17日(金)

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震災後、首都圏を脱出する人の動きが続いている。母子の疎開だけでなく、東から西への転職市場も活性化。人材の流出は、一時的な現象にとどまらないかもしれない。

 「これまで転職地域を首都圏に限定していた技術者が、対象を全国に広げ、内定するケースが目立っている」

 転職支援サービス大手のリクルートエージェントで「製造業・技術職」のキャリアアドバイザーを務める中尾公則氏は、震災後に関西地区や東海地区への転職実績が増えている現状を明かす。同社の調べによると、首都圏の技術者が関西の企業に転職した数は、5月実績で前年同月比約2倍、しかもその勢いは今も衰えていないという。

 地域をまたいだ転職が増える理由はもちろん、東日本大震災だ。震災後、東京電力の福島第1原子力発電所の事故問題で、放射性物質への不安が高まっている。関西方面への“疎開”を決めた家族は少なくない。

放射線量を測る福島の保育園
放射線量を測る福島の保育園。安全性の不安から移住する家族も多い(写真:共同通信)

 もともと、製造業の技術者の引き合いは根強い。技術者は1つの企業に勤め続ける割合が高く、地域を超えた転職希望自体があまりない。そのため、求人倍率が高い状態が常態化していた。

 「技術職は関西では求職者1人につき求人企業数が4.5社、東海では3社以上ある。首都圏では1.5社程度にとどまる」と前出の中尾氏は言う。

 2008年秋のリーマンショック以降は、世界的な不況から首都圏の完成品メーカーを中心に人員が過剰気味だった。一方、中堅・中小の自動車部品や電子部品メーカーが多く集積する東海地区や関西地区では海外輸出も含めて仕事が多く、人員不足が続いていた。だが、それでも技術者の安定志向は根強く、地域間の需給ギャップは埋まらずにいた。それが震災と原発事故で一気に風向きが変わったというわけだ。

 家庭の意見の変化も、こうした「疎開転職」を後押ししている。これまでなら、「妻の友人関係が壊れる」「子供の養育環境を維持したい」などといった家庭の意見が、地域をまたいだ転職の障壁になっていた。


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