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漁協は「復興の核」たり得るか

【番外編】まず大幅な増資で体制を整えよう

  • 樫原 弘志

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2011年7月8日(金)

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(前回『漁師がサラリーマンになってなぜ悪い』から読む)

 東日本大震災後、漁業復興の核になるのは漁業協同組合(漁協)だと岩手県の達増拓也知事は言う。国も漁船の共同利用など震災対策補助事業の受け皿として漁協の役割に期待しているようだ。

 しかし、漁協は本当に復興の核たり得るのだろうか。

 この10年近くの間、漁協は積もり積もった不良債権や損失の処理のためリストラ、合併に追われ、漁業向けの融資をばっさりと削り落としてきた。やる気のある漁師を応援するどころか、我が身を守るので精一杯だったからである。

 数字を見てみよう。

処理できないまま繰り越した損失は約450億円

 農林水産省の年報によると、2010年3月末現在の漁業向けの全金融機関による貸出残高は1兆1550億円で、10年前の2兆3231億円の半分。漁業界にとってのメーンバンクとも言うべき、漁協、県域の信用漁協連合会、そして農林中央金庫というマリンバンク系統の漁業貸出残高も同じ期間に44%減、7840億円(系統内貸借を除く純残高)に縮んでいる。

 消費不振による魚価の低迷などでこの間、漁業の生産額も減り続けているが、漁業の継続を支えるべき融資の減り方はそれよりも大きい。急激な与信残高減は、漁業不振というより、漁協自体の経営不振に起因し、それが漁業の発展を妨げる悪循環に陥っているといってもいいくらいだ。

 漁協の経営が行き詰まれば、漁師の自立を助けるどころかお荷物になってしまう。危機感を抱いた水産庁が漁協の欠損金対策に本腰を入れ始めたのは2007年のことである。

 全国に漁協はおよそ1000あり、漁師たちから集めた出資金の総額も2000億円ほどあるが、当時、処理できないまま繰り越した損失(欠損金)が450億円ほどに膨らんでいた。漁協を250に集約しようという全国漁業協同組合連合会(全漁連)の構想も、漁協の欠損金の扱い方が妨げになってほとんど進まないままだ。

 当時、水産庁は欠損金が5000万円以上あり、経営内容から判断して10年かかっても処理できそうもない「要改善漁協」を110選び出し、徹底的なリストラ、場合によっては破綻処理を迫ることにした。信漁連による漁協への貸し倒れが増えることに備え、農林中金にも150億円の特別拠出を依頼し、資本注入を拡大する態勢も整えた。

漁協の再建とは峻別すべきもの

 リストラの大きなターゲットになっているのは首都圏では千葉、九州では長崎、鹿児島、そして東北の青森、岩手、さらに北海道という漁業を基幹産業の1つとしている地域の漁協である。経営改善策として、漁協組合員による魚市場への水揚げ手数料の引き上げという対策をとるような漁協もあり、漁師へのしわ寄せはいろんなところで起きている。

 岩手県でも、養殖、定置網の不振などで経営が悪化していた山田湾漁協が2007年末に民事再生手続きを申請し、倒産したが、水産庁の調査ではその当時、岩手県内では11もの要改善漁協が計66億円の欠損金を抱えていた。

 リストラでふらふらになっているところへ今回の大震災で大きな被害が出て、漁協が存続できるかどうかの瀬戸際に追い込まれているのが実情ではなかろうか。

 宮城県でも県内の漁協を1つに集約する目標を掲げて2007年に発足した宮城県漁業協同組合(JFみやぎ)は、前身の1つ、信漁連の自己資本が不足するため宮城県からも5億円の出資を受けている。22億円もあった欠損金の処理は着実に進んでいたが、3月の大震災でこれまでの努力が無に帰するくらいひどい損害を被った。

 漁協のバランスシートは東日本大震災で大きく傷ついた。大いに同情すべきところもある。しかし、被災前からも未処理損失の解消など重い経営課題の解決を迫られていたという事実もきちんと知っておくことは大切である。漁業の復興とは、漁師たちの事業の復興のことであり、漁協の再建とは峻別すべきものだからだ。

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