「ニュースを斬る」

日立と三菱重工、初手から歩調合わず

「統合」報道巡り、対応に濃淡

  • 戸川 尚樹,小谷 真幸

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2011年8月4日(木)

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 「日立・三菱重工 統合へ」―。日本経済新聞が8月4日付朝刊1面トップでこう報じたため、マスコミ各社の記者は早朝から両社首脳陣などに確認取材に走った。日経の記事の内容は「日立製作所と三菱重工業が経営統合に向け協議を始めることで基本合意。2013年に新会社を設立し、社会インフラ事業などを統合する。4日午後に発表する」という内容である。

 だが、この報道を巡り両社の対応には濃淡があった。日立の中西宏明社長は午前6時ごろ、「(4日の)午後に発表する」と報道陣に答えた。ところが、三菱重工側は「本日、当社と株式会社日立製作所との統合に関して、一部報道がありましたが、これは当社の発表に基づくものではありません。また、報道された統合について、当社が決定した事実もありませんし、合意する予定もありません」との公式コメントを発表した。日立側もその後、社長発言とは矛盾するような「一部報道にて、当社と三菱重工業の事業統合に関する記事が掲載されましたが、当社として決定・公表したものではありません」とのコメントを出した。

 本誌記者が午前8時半ごろに日立広報に記者会見のスケジュールを問い合わせたところ、「本日も明日も来週も発表会はありません」と回答。結局、4日時点で今回の件に関する記者会見は開かれていない。

 中西発言からして、両社間で何らかの事業統合を検討する話が進んでいたことは確実だろう。実際に、「日立と三菱重工が、原子力発電事業や火力発電事業で合弁会社を作るのではないか」との噂は以前からあった。両社は昨年7月に水力発電システム事業を統合することで合意。海外向け鉄道システム事業でも協業している。さらに、今年4月には福島第1原子力発電所の支援について、両社が共同で具体策を検討することを発表していた。社会インフラ関連事業に関し、両社の連携機運は着実に高まっていた。

 ならば、いったん日立の中西社長が「午後に発表」と明言しておきながら、なぜ正式発表が延期となったのか。関係者の証言によると、午前中の数時間の間に、予定していた記者会見が飛んだという。そう言われてみれば、両社の公式コメントにも微妙な差が見て取れる。通常、経営統合やM&Aがスクープされた場合、対象となる企業は相互にコメントの文言をすり合わせ、結果としてほぼ同じ内容の文章を発表するものだ。しかし、今回の場合、日立は「統合」の件を完全否定しているわけではないのに、三菱重工側のコメントには「合意する予定もありません」との文言が入り、日立側よりも否定的な姿勢が強い。

 ここに温度差が感じられる。今までの水面下の交渉が、発表前の数時間にすべて白紙に戻るとも考えにくいが、いずれにせよ、初手から両社の歩調が乱れたのは明らかだ。

 「中西さんが早朝、あっさり『午後発表』を認めるなど、どうも今回のスクープは日立から情報が漏れた可能性が高い。しかも、記事内容が日立主導で経営統合が進むかのような印象を抱かせた。そのため、三菱重工側がへそを曲げ記者会見が流れたのでは」。ある関係筋はこう指摘する。

 確かに、報道された「経営統合」「両社の売上高は単純合計で12兆円を上回る」といった表現からは、日立と三菱重工の完全な経営統合が予見される。しかし、日立の連結売上高は三菱重工の3倍以上。株式時価総額でも日立が約2兆1300億円であるのに対し、三菱重工は約1兆2200億円にとどまる。

 三菱重工側に「これでは我が社が飲み込まれる印象が流布される」との憤りが生じても不思議はない。実際、ある大手精密機器メーカーの執行役員は、同日午前、「驚きました。報道が本当なら、企業規模の大きい日立が三菱重工を飲み込んでしまうのですかねえ。でも、重電事業や航空・宇宙事業に圧倒的な強みを持つ三菱重工がそんなことになるとも思えないし…」との感想を漏らした。

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