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「ぼくたちは風評の中で生きている」

作家・東浩紀が語る東日本大震災(前編)

2011年8月17日(水)

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これは5月2日収録したインタビューをベースに構成してあります。

 11年3月11日金曜日、東日本大震災が起きました。地震そのものによる被災もさることながら、巨大な津波が東北の太平洋岸を襲い、多くの方々の命と街そのものを奪っていきました。さらに、東京電力の福島原子力発電所が被災、1986年の旧ソ連・チェルノブイリ事故以来というレベル7の最悪の放射線汚染事故が発生しました。その後、原発施設の事故の行方は今もまったく先が見えない状態なのは、読者の皆さんもよく知るところです。
 日本を襲った未曾有の大震災と津波。そして原子力発電所の壊滅的な事故。ぼくは、この2つの事象を境に、日本社会は大きなターニングポイントを迎えたと思います。

私が震災直後、東京を離れた理由

 まずは個人的な経験からお話します。東日本大震災が起き、続いて原発事故が露見したのち、ぼくは妻子を連れて東京を離れ、数日間伊豆に行きました。ツイッターでぼくをフォローされている方はご存じかもしれません。

 東京を離れた理由は、原発事故の被害がどの程度のものになるか、あの時点ではなにもわからなかったからです。

東 浩紀(あずま・ひろき)氏
1971年生まれ。評論家・作家。現代思想を主題にした評論活動を展開。代表作に『存在論的郵便的』『動物化するポストモダン』など。09年に初小説『クォンタム・ファミリーズ』を発表。三島由紀夫賞受賞。10年に出版社コンテクチュアズを設立。

 重要なのは「あの時点ではなにもわからなかった」ということです。実際にこれはそうだったはずです。いまでは、原発事故が、当初東京電力と政府が告知したものよりも相当深刻なものだったことが明らかになっています。つまり、事故が露見した最初の数日間、正確な情報は誰も持っていない状況だったわけです。だからぼくは、「安全だ」と言い切れる材料がないのだから、できるだけ慎重に行動しようと思いました。

 ここで誤解を避けるため付け加えておきます。ぼくは当時からこのことを口を酸っぱくして言っているのですが、これは決して、東京が危険だと考えたわけではないのです。ぼくは原子力の専門家ではないし、原発事故についてもなにも情報を持っていないのだから(ぼくは震災後数週間、ツイッターでは「安全」も「危険」も決して断言しないと決めていて、それでかえって叩かれることもありました)、そんな判断ができるわけがありません。ただ「危険とはいえないが、安全ともいえない」と考えただけです。そして「安全とは断言できない」のだから東京を離れる。

 しかし、ご存じのとおり、その行動がツイッター上では「危険を煽っている」と見なされ、叩かれました。あれにはびっくりしました。正直、日本のネットに失望もしました。

 もうひとつ、東京を離れようと思ったわけがありました。ツイッターでの過剰反応に示されるように、震災が起きてからの東京発の情報に漂う空気は明らかにおかしかった。みながなんの根拠もないのに、安全だ危険だと言い合っていた。ある種の熱病に侵された状態だった。だからちょっと離れたところから、メディアやネットの動きを観察しよう、と考えたのです。

「原発事故たいしたことない」と言い続けたエリートたちのパニック

 パニックというと、東京から地方に逃げ出したり、ペットボトルの水を買い占めたり、といったものを連想するかと思います。でも、何の証拠も裏付けもない状態で「大丈夫だ」と断言して動かないのも、一見理性的に見えてやはりパニックです。

 原発事故から1週間から10日ほどの間、ツイッター上では、実に多くのブロガーや知識人が、「事故は大したことない」「すぐに収まる」「放射線も東京までは来ない」「福島も大丈夫だ」「メルトダウンしているわけがない」とツイートし続けました。しかし、あれらの発言にどれほどの根拠があったのか、疑わしいかぎりです。にもかかわらず、彼らは、原発事故について騒ぐ大衆は愚かで、自分たちこそが「理性的」だと言い張っていた。あの光景はじつに醜かった。

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