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日本の漁業は高収益化できるか

東日本大震災後の漁業とクラスター化

  • 岡本 義行

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2011年8月30日(火)

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 東北大震災によって水産業は甚大な被害を受けた。しかし、単なる被害の復旧では、この地域における水産業の復興はかなわないと思われる。というのは、日本の水産業が抱える課題、乱獲そして低い生産性という課題がそのまま解決されずに残るからである。

 日本の漁業は1980年代から90年代にかけてのピーク時と比較して、漁業生産量で3分の1弱、生産額でほぼ半額、そして漁船数で半数弱に減少してしまった。また、漁業就業者数はピーク時の2000年で26万人であったが、2010年には20万人となっている。

 魚が育つ前に漁獲して捨てられることもあるという乱獲は、漁業権や許認可にかかわる問題であり、既得権の問題でもある。われわれが最も不得意とする政治的な問題解決が図られる必要がある。実際、復興策として宮城県知事は漁業権を棚上げにした特区制度を提案しているが、漁協は反対しており、漁業権を巡る知事と漁協との対立は日本の漁業の象徴である。漁業に関するルールの改革は、震災の被害とは別に、日本の漁業が産業として生き残るためにはどうしても解決しなければならない。

 この問題とまったく切り離すことができないが、日本の漁業は産業として生産性が極めて低く、したがって漁業者はリスクの割には儲からないという特徴がある。実際、宮城県で罹災した漁民の30%は漁業から離れるということを決め、10%ほどが迷っているという。世界でも有数の漁場を前にしていながら、新たな投資をして漁業を継続することができない背景には、日本の漁業が大きな課題を抱えているからである。

 年収300万円にも達しない漁民が高額な船や漁具に新たな投資をすることは難しい。こうした漁業を取り巻く状況の中で、若者は漁業を事業承継しようとしない。もう一つの問題は経営や事業のあり方である。漁業の生産性は世界中どこでも低いわけではない。漁業先進国のノルウェーと比較すると、日本の漁業の生産性は4分の1ほどに過ぎない。高い付加価値の得られる漁業への転換が急務である。消費者までのサプライチェーンをマネジメントできる体制を形成する制度と漁業クラスターは参考になるだろう。

甚大な被害と重茂の事例

 漁港数の多い宮城県と岩手県にはそれぞれ142と111の漁港がある。そのうち108が被災したといわれる。宮城県から岩手県にはリアス式海岸が続き、自然の良港が数多く存在する。そこに公共事業として港湾設備が建設された。漁船が2、3艘の漁港もあるといわれている。

 岩手県山田港では90%の船が被害を受けたが、多くの港で漁船ばかりでなく、岸壁の破壊や沈下、隣接する市場の建屋の崩壊、養殖用の漁具流出などに大きな被害を被った。また、津波によって陸上の住宅や車両が海に引き込まれ、海が漁場として役に立たなくなった地域もある。製氷工場、加工工場、造船所などの関連産業も大きな打撃を受けている。漁業者自身も仮設住宅などで生活しており、漁業を始めるメドさえ立っていないところもある。

 いち早く復興に取りかかった地域もある。岩手県宮古市の重茂(おもえ)では780艘の漁船が14艘になってしまった。漁協が音頭を取って操業を開始するための準備を急ピッチで進めている。重茂漁港はワカメ養殖・天然ワカメの収穫、ウニやアワビ漁が主要産業であり、年間3000万円を稼ぐ家庭もあった。漁業従事者に若者の後継者もいる漁協である。

 重茂は漁船を漁協が購入して、操業を再開しようとしている。個々の漁民が漁船などに新たに投資することは容易ではない。重茂漁業は事業を集約化して組合員に対して一定期間貸し付けるという「共同運営方式」を採用することに組合員は合意した。漁師には借金をさせないというものである。つてを頼って中古船を購入し、6月10日には150艘を保有することとなったが、600人の組合員で十分ではないため共同利用する。収益も平等に配分するが、組合員を雇用して組合員が地域を離れないように努めている。

 重茂漁港のように、期せずして集団化が進んでいるところは良いほうである。多くは集団化どころかまったく操業開始のメドは立っていない。宮城県知事が提案している「特区制度」も、漁業権を棚上げにして、株式会社の参入を促そうというものである。

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