日立製作所と三菱重工業の提携を巡り様々な観測が流れている。経営統合は完全否定するが、部分的な事業統合の可能性は残る。海外で勝ち残るには、電力など“強い事業”を伸ばす戦略が必須だ。
8月4日、東京・品川にある三菱重工業の本社。この日開かれた取締役会では2011年4〜6月期の決算が報告され、1つ2つの連絡の後、大宮英明社長が用意した紙を淡々と読み上げた。「統合について決定した事実はなく、合意する予定もない」。日立製作所との経営統合を否定する内容だった。

「日立・三菱重工 統合へ」――。東芝の佐々木則夫社長が「経営統合というのが本当ならば、すごい話だ」と話したように、同日付の日本経済新聞の報道は産業界に大きな衝撃を与えた。
だが、話はすんなりとは報道通りにはならなかった。日立の中西宏明社長はこの日の朝、詰めかけた報道陣に対し「午後に発表する」と答えたが、その後発表された両社のコメントは報道内容を否定するもの。その日に統合に関する発表はなされなかった。
もっとも、中西社長の発言からは、両社が経営統合まではいかなくとも、何らかの発表を予定していたことが読み取れる。
原発統合で東芝に対抗?
製鉄機械や水力発電、海外の都市内鉄道…。日立と三菱重工は、これまでも事業ごとに連携し、協業してきた。歴史が古く、「重厚長大」事業を得意とする両社は、「企業文化が似ている」(三菱重工幹部)。必要があれば2社が協力していくという方向性は明確だった。では、今回発表を予定していた内容とは、何だったのか。
「日立さんと三菱重工さんの話は、どの程度まで進んでいるんですかね」。今年6月、ある大手機械メーカーの幹部は、こう口にした。対象となる案件は、原子力発電だった。
震災で起こった福島第1原子力発電所の深刻な事故をきっかけに、日本のみならず世界的に原発への強力な逆風が起こった。原発事業を手がける両社は、事故を契機に急速に連携を模索するようになったとされる。米ウエスチングハウス(WH)を傘下に持つ東芝とは違い、日立と三菱重工の主戦場は国内だ。これから国内で原発の新設需要が起こるとは考えにくく、事業拡大には海外に打って出るしかない。欧米やアジア勢と争い受注を獲得するために事業統合などで規模拡大を目指すのは、それほど突飛な戦略ではない。
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