政権交代からわずか2年で3人目の首相が誕生する。拙速な民主党代表選びは、国民不在の「政権たらい回し」にほかならない。数合わせで選ばれる首相は「賞味期限1年」の連鎖を断ち切れるか。
菅直人首相の後任を決める民主党代表選は8月29日にも投開票が行われる。東日本大震災からの復興対策、自民、公明両党との協力の枠組み構築など多くの難題が待ち受ける中での次期宰相選び。知名度が高い前原誠司・前外務相が出馬の意向を固めたことで様相が一変、ぎりぎりまで候補者間の神経戦や議員間の多数派工作が続く展開となった。
しかし、「超難局」の国の舵取りを担うリーダー選びなのに、国民の間にしらけた空気が漂っている。代表選を短期決戦にする結果、争点となるべき政策に関する論争もほとんどなく、世論やマスコミなどによる検証を反映する余地も乏しくなり、議員の数合わせという「永田町の論理」のみで決まる旧来型の構図に辟易としているからではないだろうか。
「小沢氏復活」の代表選
民主党の代表の任期は2年。任期満了時には党大会を開き、党所属国会議員や地方議員、党費や会費を納めた党員・サポーターも投票に参加できる。一方、急に辞任した場合は、衆参の両院議員総会で国会議員の投票だけで選出できる仕組みだ。
今回の代表選は、菅首相の辞任表明に伴うものだが、党執行部は告示から3日程度で開く両院議員総会で選出する方針を固めている。その方が、短期間で選べ、政治空白を短くできるというのが大きな理由だ。

震災復興に向けた今年度第3次補正予算案や来年度予算案編成、円高対応などの重要課題を前に、これ以上政治の停滞が許されないのは確かだ。ただ、今回、代表選に意欲を示す面々の政治家としての実績や政治理念、政策スタンスなどが国民に周知されているかといえば、疑わしい。しかも、震災や原子力発電所事故対応の不手際、マニフェスト(政権公約)に掲げた政策の頓挫、与野党の政争など、機能不全の政治への国民の怒りと失望感はかつてないレベルに達している。
政治への信頼を取り戻し、ぶれずに重要課題に向き合う。重責を担うだけの政治家たり得るのかどうかを判断するための時間と機会を国民に用意せず、拙速に選出していいのだろうか。論戦を通じて党内がまとまる。そんな好機をも民主党は失いかねない。
国民不在で進んだ結果、代表選は議員同士の多数派工作の成否に焦点が収斂されてしまった。党内最大勢力のグループを擁する小沢一郎・元代表の支持取りつけがカギとなり、小沢氏の党員資格停止処分の見直しが争点になる始末だ。「小沢さんの復活が近づいた。それが、この代表選の最大の意味だ」。小沢氏に近い議員のこの言葉が、端的に今回の代表選の本質を物語る。
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