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「増税」と対立するのは「反増税」ではない

社会保障費の削減が政治的に主張されない理由

2011年9月1日(木)

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「増税」vs「反増税」は本当の対立軸でない

 今回のコラムに「社会保障費の削減が政治的に主張されない理由」というタイトルをつけた。ただし、筆者は「年金・医療・介護といった社会保障を“大幅に削減”するのが望ましい」と考えているわけではない。

 政治の世界では「増税」vs「反増税」という対立軸が話題になることが多い。だが、これは本当の対立軸ではない。歳出の約半分に及ぶ財政赤字や、公的債務(対GDP)がもはや200%に達しつつある日本の財政状況を踏まえれば、本当の対立軸は「増税」vs「歳出削減」である。

 このため、政治が歳出削減を重視する場合、社会保障予算の削減から逃避することは許されない。現状の財政・社会保障は持続可能でない。特に、社会保障予算は毎年1兆円以上のスピードで膨張している。経済学に「ノー・フリーランチ(ただ飯はない)」という言葉がある。何らかの便益を受けている経済社会が、そのコストを支払わない状況は基本的に維持できない。

 つまり、「反増税」とは「社会保障の削減」を意味するはずである。「反増税」の立場に立つにもかかわらず、社会保障費の削減を主張しない政治は無責任である(当然、増税と歳出削減の両者を進める選択もある)。

 社会保障の削減を主張する政治家や政党は少ない。唯一の例外は、聖域なき構造改革を謳い、年金・医療などの抑制を試みた小泉政権であろうか。だが、その抑制も「削減」には及ばなかった。毎年1兆円のスピードで膨張する社会保障予算を0.2兆円減らし、その伸びを0.8兆円程度に抑制したにすぎない。

 しかし、この程度の抑制でも、マスメディアや医療関係者を中心に「このままでは医療崩壊を招く」との悲鳴が上がった。

若い世代は医療費の抑制、引退世代は医療費増の容認を求める構図

 もし社会保障費の削減を諦める場合には増税が不可避となる。しかし、現行システムのままで増税をすると、引退世代が得をし、若い世代に過重な負担がかかってしまう可能性がある。というのは、今の年金・医療・介護といった社会保障システムは賦課方式を採用しているからだ。引退世代が受け取る社会保障給付は、基本的に、若い世代を含む勤労世代の負担(税や保険料)によって賄われる傾向を持つからである。

 一方、引退世代の人口ボリュームが増加する中で、勤労世代の負担を抑制しようとすると、引退世代が受け取る社会保障給付は大幅に削減されてしまう。

 このような状況に対して、どちらの世代も敏感になっている一つの証拠がある。最近の医療財源に関する調査において、「医療費抑制」(患者の医療利用に制限を積極的に設けて、医療費をできるだけ現状の水準に留めるべきである)を支持する割合だ。20歳~39歳の世代では28.3%が支持するものの、60歳以上の世代ではこれが20%に低下する(図表1)。

 逆に、「医療費増容認」(医療費の増加を抑える政策は必要だが、医療利用の制限が進むのは良くないので、医療費負担が増加することはしかたがない)を支持する割合は、60歳以上の世代では69%にも達するものの、20歳~39歳の世代では59.5%に低下する。

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「「増税」と対立するのは「反増税」ではない」の著者

小黒 一正

小黒 一正(おぐろ・かずまさ)

法政大学経済学部教授

1974年生まれ。京都大学理学部卒業、一橋大学大学院経済学研究科博士課程修了(経済学博士)。大蔵省(現財務省)入省後、財務省財務総合政策研究所主任研究官、一橋大学経済研究所准教授などを経て、2015年4月から現職。専門は公共経済学。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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