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経営学から見た天才ジョブズの経営の神髄

デビッド・ヨフィー米ハーバード大学教授が分析する経営手腕

2011年8月31日(水)

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 8月24日に米アップルのCEO(最高経営責任者)を退任し、経営の第一線から退いたスティーブ・ジョブズ氏(56歳)──。

 共同創業者でありながら一度は追われたアップルの経営に1996年に復帰。倒産寸前にまで追い詰められていた古巣を蘇らせ、デジタル携帯音楽プレーヤーの「iPod」、スマートフォン(高機能携帯電話)の「iPhone」、タブレット(多機能携帯端末)の「iPad」などのヒット商品を連発。時価総額で米マイクロソフトなどを抜き去って、8月上旬には米国企業で首位に立った。

 「天才」「カリスマ」などの呼称をほしいままにした稀代の経営者の手腕やリーダーシップの特質について、米ハイテク企業の経営戦略研究の第一人者であるデビッド・ヨフィー米ハーバード大学経営大学院教授に聞いた。

(取材構成は、中野目純一=日経ビジネスオンライン記者)

── 一時は倒産寸前の状態にあったアップルは、スティーブ・ジョブズ氏が経営に復帰した後に立ち直り、ここ数年は破竹の快進撃を続けています。米国には米IBMなど、経営危機から再生を果たした例が少なくありません。そうした他の企業とアップルの再生には何か違いがあるのでしょうか。

ヨフィー:その答えは簡単ですね。アップルと他の企業との違いは、ジョブズ氏に尽きます。彼は明らかに並外れた特性と能力を備えた類まれな経営者です。その存在が、他社の再生とアップルの再生を異なるものにしました。

 例えばIBMと比較した場合、経営再建に当たって、社内の人間とは異なる新鮮な視点で会社を見ることができる社外の人間を経営トップとして迎えた点では共通しています。IBMは、RJRナビスコの会長だったルイス・ガースナー氏を招き入れました。ですが、その後の再生の道筋は全く異なっています。

アップルとIBMの再生に見る違い

 IBMの場合は、再生するためにどの方向に進むべきかが明確でした。それはITサービスの事業です。独立した形ではなく、メーンフレームやミニコンピューターといった当時の主力事業に付随した形でしたが、IBMは1993年にガースナー氏がCEOに就任する前から相当な規模のサービス業務を手がけていました。そして、サービス業務にもっと注力して、その分野で確固たる地位を築くべきだという議論が既に交わされてもいた。

 しかしガースナー氏の前の経営陣は、サービス事業に舵を切ることをためらっていた。それを同氏が一気に加速して推し進めたのです。サービス事業に大規模な投資をしたことによって、IBMは事業構造を劇的に転換させることに成功しました。

 現在では同社の事業全体の約6割をサービス事業が占めています。四半世紀前にはその比率は20%くらいでしたから、3倍に増やしたことになります。それも、ガースナー氏が大規模な投資をすることを決断して、サービス事業に急速に舵を切ったからこそです。

 一方、ジョブズ氏が復帰した時のアップルの状況はIBMとは全く違っていました。第1に、アップルには進むべき明確な方向がなかった。米デルのマイケル・デル会長兼CEOは当時、ジョブズ氏はアップルの事業を清算すべきだと勧めたくらいです。それほど危機的な状況にありました。キャッシュを増やせなければ、90日以内に倒産すると言われていた。

6月上旬に開いたイベントに姿を現し、新クラウド型サービス「iCloud」について発表したスティーブ・ジョブズ氏。8月24日にアップルのCEO(最高経営責任者)を退任した

 そこでジョブズ氏は復帰した直後から、アップルの“聖域”の多くにメスを入れました。手始めに行ったのは、仇敵とされてきたマイクロソフトを相手に特許のクロスライセンスと業務提携を締結したことです。

 次に同社のパソコン「マッキントッシュ」のOS(基本ソフト)のライセンスを互換機メーカーに供与することを止めました。

 これは簡単な決断ではなかった。供与したライセンスのいくつかを買い戻さなければならなかったからです。加えて、「アップルが生き残るためには、互換機へのライセンス供与を拡大するしかない」というのが一般的な見方でした。それと正反対のことを彼は実行したわけです。

 さらに彼は、アウトソーシングできる業務はできるだけ社外に委託することを決断しました。これは、すべてを内製していたかつての同社ではあり得なかったことです。今でも研究開発やソフトウェアの開発といった同社にとって非常に重要な機能は社内に残していますが、製品の生産や物流などはすべて社外にアウトソーシングするようになっています。

コメント10件コメント/レビュー

日本では研究開発だけで、欧米以上の製品ができるのだろうか?日本の強みは、欧米が太刀打ちできないハード開発能力だったのではないか?欧米がハードを捨てて来たのは、日本に負けた面もある。日本の企業が、欧米のような企業になれるのか?ハードとソフトの融合だけでなく、研究設計だけではなく、ハイテクハードの製造も「融合」させるべきである。(2011/09/04)

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「経営学から見た天才ジョブズの経営の神髄」の著者

中野目 純一

中野目 純一(なかのめ・じゅんいち)

日経ビジネス副編集長

2012年4月から日経ビジネス副編集長。マネジメント分野を担当し、国内外の経営者、クリステンセン、ポーター、プラハラードら経営学の泰斗のインタビューを多数手がける。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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日本では研究開発だけで、欧米以上の製品ができるのだろうか?日本の強みは、欧米が太刀打ちできないハード開発能力だったのではないか?欧米がハードを捨てて来たのは、日本に負けた面もある。日本の企業が、欧米のような企業になれるのか?ハードとソフトの融合だけでなく、研究設計だけではなく、ハイテクハードの製造も「融合」させるべきである。(2011/09/04)

経営者が前提条件に合わせていかに集中すべきものに絞って自らの時間を費やすかという事が大切であることが、よくわかりました。 唯一、筆者の思い込みによって強調されていると感じた主張は「日本で製造することが高コストである」という所です。本当にそうでしょうか?人件費、土地代などだけで考えるとそうかもしれません。しかし、考えようによっては国内の需要に対して、必要なものを最短で生産して届けられると言う前提に立てば在庫を持ったり予想をして今必要のないものを余裕を持って生産したりする必要も無く、結果的に企業にとってキャパシティを「今必要なものだけに使う」事が実現できるのではないでしょうか?(2011/09/01)

ジョブズ氏を見習うというのは・・・俗に『鵜のマネをする烏は溺れ死ぬ』と言いますが、まさにそれになるかと愚考いたします。(2011/08/31)

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三品 和広 神戸大学教授