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「観光のまなざし」で読み解く観光振興

  • 黒田 英一

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2011年9月6日(火)

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 3月の東日本大震災後に苦境下にあった観光産業も夏休みに入り、回復軌道に乗りつつある。JTB旅行動向調査では今年夏の旅行は7458万人(1泊以上)が出かける見込みとしており、日本旅行業協会の調査では海外パックツアーも、7月出発4.0%増(前年同月比)、8月出発5.2%増(同)と改善しつつある。全国のレジャー施設も営業を順次再開し、観光産業も需要低迷からようやく脱しつつある。

 観光産業とは、旅行者が職場・住まいから一時的に離れて、旅行先に滞在する間の行動のために調達される一連の財・サービスの産業全体をさす。具体的には、旅行代理店、観光協会、鉄道・飛行機、ホテル・旅館、レストラン・飲食店、スポーツ施設、エンターテインメント施設、旅行ガイドブック出版社などをさしている。

 旅行目的がレジャーや親族訪問であれ、ビジネスであれ、観光産業は取り巻く経済・社会環境に大きく左右されるのはいうまでもない。そのため、今回の東日本大震災では、大震災後の消費自粛ムードだけでなく、原子力発電所の事故以来の食品の安全や節電の問題が消費者の気分に水を差した結果、大きな旅行離れが起きたといえる。

 旅行に人々を駆り立てるプッシュ要因である「休息、リラックス、さわがしい日常からの解放」という心理的動機が強く働かず、プル要因である「魅力ある浜辺、温泉、レジャー施設」も人々を旅行までに駆り立てなかった。「そんな気分ではない」というのが消費者の本音であったと思われる。

 観光産業はすそ野が広いだけに、観光産業の落ち込みは地域経済に多大な影響を与える。例えば筆者の5月下旬の聞き取り調査では、鬼怒川温泉では頼みの交通アクセスである東武鉄道の特急電車が大震災後しばらく不通となり、やむなく一時休業した旅館ホテル、レジャー施設もあり、土産物店や飲食店は開店休業であった。

 そして現在に至っている。観光産業を核として地域おこしに努めざるをえない地域とっては、見方を変えれば今はチャンスではないか。足元を見つめなおし、中長期的な戦略づくりに本格的に取り組む時期だからである。どの観光地も誰もが流行ると聞けば、足湯をつくり、露天風呂めぐりの入湯手形をつくり、お雛様を飾り、よさこいソーランを開催するのが、従来の観光産業のやり方であった。その結果、横並びのため似たりよったりの観光地となってしまったのは言うまでもない。

 そこで、本稿では、他の観光地やホテル旅館と差別化するために、「観光のまなざし」のキーワードを使ってみたい。ようやく平常時に戻りつつあるこの時期、まずは他とどう違いをだすか、の原点をじっくり考えてみたいからである。

事例にみる「観光のまなざし」(gaze)の形成

 観光のまなざしは、イギリスの社会学者ジョン・アーリの著『観光のまなざし――現代社会におけるレジャーと旅行』(加太宏邦訳、法政大出版局、1995年)で一躍有名になったキーワードである。「観光のまなざし」は、「日常から離れた異なる景色、風景、町並みなどにたいしてまなざしもしくは視線を投げかけること」(同書2頁)であり、観光のまなざしが選ばれるのは、「夢想や空想を通して、自分が習慣的に取り囲まれているものとは異なった尺度あるいは異なった意味を伴うようなものへの強烈な楽しみへの期待」(同書5頁)があるとしている。そして、このまなざしは社会的に構造化され組織化され、観光の専門業者がこのまなざしの再生産を後押ししている、とアーリは考える。

 このことを具体的に考えてみよう。一般に、人々が旅行に出たいと思いつき、旅行に行くと意思決定し、旅行の準備をするまでには、次のステップをとると考えられる。

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