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格付け会社は日本のどこを見ているのか

野田政権が示すべき「100日プラン」

2011年9月13日(火)

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 総理就任後、100日間はいわゆる「蜜月期間」だという。しかし、野田総理にその余裕はおそらく無い。未曽有の大震災を能力の無い宰相のもとで迎えてしまったがゆえの「空白の180日」のツケは重く、今は新内閣がそれこそ日次ベースで新しい手を示し、改革の障壁を取り除き、実行して具体的な成果が上げられるかどうかに厳しい目が注がれている。

 国難に立ち向かうため一丸となろうとした国民も、いまや失望や閉塞感という言葉だけでは収まりきれない沈滞した何かを抱えて日々を過ごしている。企業買収の世界では、買収後の統合といった大きな変革を行うにあたっては、前もって準備した計画を強力なリーダーシップとコミュニケーションを通じてとにかくスピーディーに実行していくことが不可欠とされ、その時間的な限界は約100日である。野田新内閣も、「蜜月」としてではなく、変革への「100日プラン」という意味での100日を過ごさざるを得ないだろう。

負債比率で格付けを決めているわけではない

 8月下旬に、米格付け会社のムーディーズ・インベスターズ・サービス(ムーディーズ)が日本国債の格下げを発表した。政府も市場もほぼ無反応であったが、そのことだけを取り上げて格付けの不適切さを説くのは的外れにみえる。格付けや格付会社の問題はまた別に議論すべき話である。反応がなかったのは、単に格下げされることがすべての人々にとって既に「織り込み済み」であり、何も驚きが無かったからにすぎない。かえって、今後の見通しが「安定的」とされたのが話題になったほどだ。また、ムーディーズの指摘も当然なことばかりでやはり驚きは無かった。今回の格下げの最も大きな要因は、ひとことで言えば「政府の能力への疑義」である。

 よく誤解されることだが、格付け会社は負債比率だけで格付けを決めているわけではない。格付けはひとえに債権者の視点からの評価なので、負債比率が悪ければ素晴らしい格付けがつく確率は下がるが、当然それだけでは決まらない。入ってくるおカネと出ていくおカネの状況、持っているおカネ(=資産)の状況、おカネをさらに借りられる可能性や借りる先の状況、そしてこれらをコントロールしながら将来目指す姿を実現していく借入主体のガバナンス能力…。

 こうした要素の集合体として格付けは存在する。そうでなければ、日本国債にいまだダブルA格の格付けがついているはずがない。別に格付けや格付け会社を援護する気はないが、格付けに対して感情的に反発する人に限って、格付けの内容や含まれる要素、その意味と限界などを理解せずに議論しようとするので閉口する。

 話を戻すと、今回のムーディーズの格下げに関するコメントは、良く言えばまっとう、悪く言えばありきたりである(とはいえ、誰も債権者の視点に新鮮な驚きを求めてはいないので、これはこれでよいのだろう)。

 いわく「今回の格下げは、多額の財政赤字と、2009年の世界的な景気後退以降の政府債務の増加を受けたものである。いくつかの要因が債務残高の対GDP比上昇の抑制を困難にしており、これが今回の格下げ要因となった」とし、その要因の筆頭として「過去5年にわたり首相が頻繁に交代したことが、長期的経済・財政戦略を効果的で一貫した政策として実行に移すうえでの妨げとなってきた」ことを挙げている。

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「格付け会社は日本のどこを見ているのか」の著者

松田 千恵子

松田 千恵子(まつだ・ちえこ)

首都大学東京大学院教授

1987年東京外国語大学外国語学部卒業。2001年仏国立ポンゼ・ショセ国際経営大学院修士。日本長期信用銀行、ムーディーズジャパンを経て、コーポレイトディレクションなどでパートナーを務める。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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