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応募わずか1社…。新放送サービス、失速の真実

なぜ、「モバキャス」は敬遠されたのか

2011年9月15日(木)

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 その放送サービスには、チャンネルを回す「ザッピング」という楽しみは少ないかもしれない。

 2012年春に始まる携帯端末向けマルチメディア放送「モバキャス」。総務省が8月3日から9月2日の1カ月間、10~15の参入枠を設けて放送局となるソフト事業者を募集したところ、NTTドコモ子会社のmmbi(東京都港区)1社しか申請がなかったのだ。

 総務省が2010年末に行った参入希望調査では、mmbiのほかにKDDIやソフトバンクグループ、大手学習塾などが関心を示していた。だが、9月上旬までに参入に踏み切る意思決定ができなかった。同省は追加募集について、「やるかどうか、はっきりしたことは言えない」と話しており、モバキャスはコンテンツ面で不安を抱えながら、来春の放送開始を迎えることになる。

熱狂から1年、底冷えの新放送サービス

 モバキャスは地上テレビ放送のデジタル化によって空いた周波数帯の一部を使った新放送サービスだ。広範囲にコンテンツを一斉送信できる放送と、双方向にデータをやり取りする通信のメリットを組み合わせたのが特徴で、動画をストリーミング配信する「リアルタイム型放送」だけでなく、電子書籍や音楽などのコンテンツを端末内に保存する「蓄積型放送」も提供できる。

 NTTドコモは2012年春までにモバキャスに対応するスマートフォンを発売し、サービス開始から5年以内に5000万台の対応端末を普及させる計画だ。将来はカーナビゲーションシステムやデジタルフォトフレームなどにも受信機能を搭載し、さまざまな場面で放送サービスを楽しめる仕組みを目指している。

 総務省は免許交付にあたって、放送インフラを運用するハード事業者と、番組の制作や編成に特化するソフト事業者に分けて参入事業者を募集する「上下分離方式」を採用した。このため、ハードとソフトが一体となった従来の地上テレビ放送に比べれば、資金力の低い企業でも参入しやすいビジネスモデルになると見込まれていた。

 実際に、2010年に放送インフラを担うハード部分の事業者を募集した際には、ドコモやフジテレビジョンなどが出資するマルチメディア放送(現mmbi)と、KDDIと米半導体大手クアルコムの合弁によるメディアフロージャパン企画の2陣営が1つの参入枠をかけて争う形になった。

 携帯端末向け地上デジタル放送「ワンセグ」を発展させた国産技術「ISDB-Tmm」を担いだドコモ陣営に対し、KDDI陣営はクアルコムが米国で実用化した技術「メディアフロー」の優位性を訴えるなど、両者の激しい舌戦は通信業界で注目を集めた。

 免許事業者の選定過程では、官主導の進め方に民主党の議員が不満を表明するといった場面もあったが、総務省は最終的にドコモ陣営の計画が優れていると判断。2010年9月にマルチメディア放送がハード事業者の免許を獲得することが決まった。

 それから1年しか経っていないのに、免許争奪戦の熱気はすっかり消え失せ、ソフト事業者の参入がハード事業も獲得したドコモ陣営のみ、という寂しい結果になったのはなぜか。関係者の間で囁かれている問題が、「放送インフラの脆弱性」と「スマートフォンの急速な普及」だ。

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「応募わずか1社…。新放送サービス、失速の真実」の著者

白石 武志

白石 武志(しらいし・たけし)

日経ビジネス記者

日本経済新聞社編集局産業部(機械グループ)、京都支社、産業部(通信グループ、経営グループ)を経て、2011年から日経ビジネス編集部。現在は通信、半導体、家電業界などを担当する。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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