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バブル崩壊が「ものづくり」の見直しを導いた

そもそも「ものづくり」は「農業」を表した

2011年10月11日(火)

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 日本の製造業について語る際、「ものづくり」という表現をよく見聞きします。「日本はものづくり立国を目指すべきである」とか「日本はものづくり大国である」といった表現を見たことがあるでしょう。

 すごく当たり前に見かける表現なので、ものづくりが「最近十数年の間に浸透した新語だ」と指摘すると、読者の皆さんは驚くかもしれません。新語であることを知らなかった人は、試しに手元の辞書を調べてみてください。ものづくりと製造業を結びつける解説は、ほとんどの場合、見当たらないはずです。

 それにもかかわらず、さも昔から存在する日本語であるかのように振る舞う、ものづくりという言葉。この言葉は一体、どういう経緯で現在のような存在感を獲得したのでしょうか?

 今回の「社会を映し出すコトバたち」は、「ものづくり」を取り上げます。ものづくりの意味、メディアでの言及数の推移、ものづくりを取り巻く論点などについて分析します。

意味が「農業」から「製造業」に移行

 そもそも「ものづくり」とは、どんな意味なのでしょうか。

 例えば広辞苑で「物作り(ものつくり)」を引くと次の解説が載っています。(1)耕作をすること。農作。また、農夫。(2)小正月の祝いの行事(解説文は筆者による抜粋)。つまり伝統的な意味でのものづくり(ものつくり)は、農業や農業従事者を指す言葉だったことが分かります。言い換えると、昔のものづくりは、製造業を意味してはいなかったのです。ちなみに農耕や農夫という意味の「ものづくり」は、すでに平安時代には登場していました。

 江戸時代には「一物作り(いちものづくり)」という思想も登場しました。これは「農夫は国の基本である」という考え方のこと。「一作二商(いちものづくり、にあきない)」と表現して、「農業などの生産業こそが国の基本であり、商業はその次である」という意味を表すこともありました。日本で伝統的に、生産者を大事に扱う価値観が存在したことを思わせます。

 ものづくりが「現代的な製造業」のことを指すようになったのはごく最近。ざっくり言えば、1990年代の後半になって急速に広まりました。詳細は後述します。

 現代的意味のものづくりを掲載している国語辞典は、まだ一部にすぎません。その中の一つ、デジタル大辞泉(小学館)は、ものづくりを次のように定義しています。「物を作ること。特に、熟練した技術者がその優れた技術で精妙(せいみょう)を極めた物を作ること」。 ここで、ものづくりは「職人的技巧を伴う製造行為」を意味しています。

バブル崩壊後の日本が重宝した「ものづくり」

 では、現代的なものづくり概念が普及した様子について分析してみましょう。例によって新聞記事――朝日・毎日・読売の1997年以降の記事について、見出しと本文に「ものづくり」または「ものつくり」が登場する記事数――での登場数を調べて見ました(産経はデータベースの掲載開始が1992年以降のため対象外としました)。ここではひとまず2007年までのデータを示します。

 グラフを見れば、1990年代後半の増加ぶりが一目瞭然です。1987年、ものづくりが登場する記事はわずかに4件にすぎませんでした。ところが1997年には147件となり3けたに突入。2001年には1098件となり4けたに突入しました。ちなみに2007年における登場記事数は1814件でした。

 さらに今回は分析の幅を広げるため、別の切り口も用意しました。amazon.co.jpで「ものづくり」をキーワードに書籍検索を行った結果を分析してみます。発行年ごとに書籍数をまとめたグラフを以下に示しました(注:「ものづくり」をキーワードに検索した場合、書籍名・著者名・解説文などに「ものづくり」を含む書籍が検索できます)。

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「バブル崩壊が「ものづくり」の見直しを導いた」の著者

もり ひろし

もり ひろし(もり・ひろし)

新語ウォッチャー(フリーライター)

CSK総合研究所を経て、1998年から新語専門のフリーライターに。辞書・雑誌・新聞・ウェブサイトなどに原稿を提供中。2009年より『現代用語の基礎知識』(自由国民社)で「流行現象」のコーナーを担当。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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