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教え子が語るノーベル経済学賞、シムズ教授

マクロ実証研究に欠かせない分析ツールを開発

  • 新谷 元嗣,陣内 了

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2011年10月13日(木)

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 米ニューヨーク大学のトーマス・サージェント教授とともにノーベル経済学賞を受賞した米プリンストン大学のクリストファー・シムズ教授。シムズ教授と師弟関係にある新谷元嗣・米ヴァンダービルト大学准教授と、プリンストン大学で教えを受けた陣内了・米テキサスA&M大学助教授に、シムズ教授の業績や人となりについて寄稿してもらった。マクロ経済学に対する貢献を分かりやすく解説するとともに、教え子ならではの知られざる人物像を語る。

「合理的不注意の理論」など独創的な研究で貢献

新谷元嗣・米ヴァンダービルト大学准教授

 今回のクリストファー・シムズ教授のノーベル経済学賞受賞は、同じ分野の研究に携わるものとして、たいへんうれしく思う。シムズ教授は、かつて筆者がエール大学でPh.D学位審査を受けた時の、3人の審査委員のうちの1人であった。日本人では一橋大学の渡部敏明教授、塩路悦朗教授たちと共に、教え子の1人として認識いただいているようである。

 シムズ教授は、プリンストン大学へ移籍する前はエール大学に10年間在籍していた。当時の経済学部には多くの日本人大学院生が在籍し、私も含めて多くの日本人研究者が彼の薫陶を受けた。授業では上級者向けのマクロ経済学と計量経済学を担当していたが、大変難解で、一度聞いただけで内容を理解できる学生は少なかったのではないだろうか。自身の主張に関して学問的な妥協を許さないという厳しい姿勢を持つ一方で、学生には常に温和で、私に対しても、とても忍耐強く指導していただいた。

 新しいデータが公表されるたびにマクロ経済構造を再検討するという、いわゆる「ベイズ流の統計アプローチ」が、経済分析には最もふさわしいというのが彼の長年の主張だ。例えば、物価が伸び悩んでいるのを観測して、貨幣の流通速度が変化したと判断する作業を繰り返すといった手法である。

“ベイズ流”の観察で教授に日本食をふるまった

 指導をいただいていた当時、シムズ教授が研究室に日本の緑茶を持込んで毎日飲んでいるのを観察し、筆者は彼の好みが日本食であることを知った。そこでベイズ流の考え方を実践した筆者は、今年に入ってから彼を米国の拙宅に招待した際、迷わず寿司の出前を注文したのである。

 シムズの考え方は、すべての学生に浸透することはなかったにせよ、一部の熱烈な支持者を生んだ。現在、世界の中央銀行エコノミストの間で標準的に使われているベイズ流のマクロ経済モデル推定法は、彼の門下生たちが開発したものだ。

 彼のマクロ経済学への貢献は多岐にわたるが、特に独創的な計量的手法を用いた一連の研究は、その後の実証マクロ経済学が精緻化に向かう大きなきっかけとなった。とりわけ彼は、受賞理由となった「多変量自己回帰(VAR)モデル」と、「一般化モーメント法(GMM)」という、現代のマクロ動学モデルの実証研究には欠かせない2つの標準的な分析ツールの開発とその啓蒙に大きな役割を果たした。

 さらに実証的なマクロ経済学だけでなく、理論マクロ経済学の分野においても、政府と中央銀行の統一的な予算制約に基づく一般物価決定理論や、経済主体が経済情報を合理的に取捨選択する合理的不注意の理論など、いずれも先見的な貢献で評価されている。

 合理的不注意の理論とは、例えば、株価や為替レートは常に変動しているが、その変化をずっとモニターを見て追っていては他に何もできなくなってしまう。つまり絶え間のない情報更新には費用がかかるため、日に一度、あるいは週に一度だけしか確認しないような行動をとる、という話のことだ。

 これらのマクロ経済学全般への多大な貢献を考えると、受賞は遅すぎるくらいであった。大学の同僚たちとの会話の中でも、彼の受賞に異論を唱える経済学者は皆無であろうという点で意見が一致している。

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