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9月29日、オリンパスの取締役会の前日のこと。オリンパスの外国人社長だったマイケル・ウッドフォード氏は、11年に渡って社長・会長として同社に君臨してきた菊川剛会長から、CEO(最高執行責任者)の座を奪うことに成功した。
これで改革を思うように進められる。そう思ったウッドフォード氏だが、菊川会長に素直に「禅譲」する気はなかった。
翌30日の取締役会で、私は確かにCEOになった。菊川会長は「経営会議には、もう出席しない」と発言した。これは、私がオリンパスの社内にいながら、会社を良い方向に変えるための最後の手段だった。「少し望みが出てきた」。そう思ったが、実は問題が解決には全く向かわないことが、直後に判明する。

1960年生まれ。81年、オリンパス英子会社に入社。2004年10月、オリンパスメディカルシステムズ取締役。2008年4月オリンパス・ヨーロッパホールディング社長、2011年4月オリンパス社長。10月14日に解任される。(写真:永川 智子、以下同)
菊川会長がこの会議の終盤に、こう切り出した。「マイケルが次のこと(買収に伴うガバナンスの問題)を議論したいそうです」。そう発言すると、経営陣から矢継ぎ早に質問を浴びた。
ある役員は、「ジャイラス買収の件はあなたも知っていたはずだ。どうして今さら、この問題を持ち出すのか」と聞いてきた。
「買収自体が問題なのではない。7億ドル近いカネが、ケイマン諸島にある実態の全く分からない相手に支払われたことを問題にしているんだ」。そう言うと、彼は押し黙った。するとまた別の出席者が質問を投げてきた。
「あなたは(菊川会長への9月26日付の手紙では)今日の取締役会に欠席すると言っていたじゃないですか」
「確かにそうです。でも、その真意は、必要な情報もないまま、取締役会に出るわけにはいかない、という意味で書いたまでです」
「あなたは、監査法人にも一連のメールと資料を送りましたね。なぜ、そんなことをしたんですか」
社長である私に対し、本来ならあり得ない質問だった。出席した取締役は、私も同じ「菊川会長のプードル」だと思っていたのかもしれない。それまで私に表面上は丁寧に対応していたが、あの瞬間、何かが変わった。
そしてハッと気づいた。私がCEOになっても、オリンパスの全役員は菊川会長の命令で動いている。自分で考えて、企業にとって最適な行動を取るわけではないのだ、と。
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