「日本キラピカ大作戦」

海水の温度差で電力ができる

約5度の海洋深層水が生み出すエネルギーと新産業

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2011年11月1日(火)

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 海水の温度差を利用して発電する海洋温度差発電は、太陽光発電や風力発電と同じ再生可能エネルギーでありながら、基幹電力となりうる安定供給可能な電力だ。そのため、にわかに脚光を浴び始めている。

 日本では、佐賀大学海洋エネルギー研究センターとベンチャー企業のゼネシスが長年にわたり、研究開発を進めてきたが、ここにきて、米国とフランスが相次いで参入。現在、どこが一番先に実証プラントを作るかで先陣争いをしているという状況にある。

 「数年前までは日本の独壇場だった海洋温度差発電だが、ここ2〜3年、米国とフランスの追い上げが激しい。何とか米国やフランスよりも先に実用化にこぎつけたい」

 こう意気込むのは、ゼネシスの岡村盡氏だ。

 ゼネシスは長年にわたり、世界で唯一、佐賀大学海洋エネルギー研究センターと共同で海洋温度差発電の研究開発を続けてきたベンチャー企業だ。

水温の差は20度以上

ゼネシス・エンジニアリンググループの岡村盡氏

 太陽から降り注ぐエネルギーの約7割は海に吸収され、表層の海水を温めている。熱帯や亜熱帯地域では、表層水の温度は27〜29度にも達する。一方、深海をゆっくりと循環する深層水の温度は、世界のどこへ行ってもほぼ同じで、水深1000メートルで約5度だ。その差は20度以上。この表層水と深層水の温度差を使って発電しようというのが、海洋温度差発電である。

 仕組み自体は簡単で、原子力発電や火力発電と同じだ。原発では、原子炉で水を沸騰させ、その蒸気を使ってタービンを回して発電している。タービンを回し終わった蒸気は海水によって冷やされて水となり、再び原子炉に送られる。

 一方、海洋温度差発電は、沸点の低いアンモニアなどを、温かい表層水を使って加熱して沸騰させ、その蒸気でタービンを回す。タービンを回し終わった蒸気は、冷たい深層水を使って冷却し、液体アンモニアに戻す。そして、再び表層水を使って沸騰させ、タービンを回すのである。

 海洋温度差発電の動力源は、無尽蔵に降り注ぐ太陽エネルギーだ。そのため、CO2をほとんど排出しないのはもちろんのこと、表層水と深層水の温度差は季節や昼夜、気候にほとんど左右されることがない。つまり、太陽光発電や風力発電と同じ再生可能エネルギーでありながら、基幹電力となり得る安定供給可能な電力なのである。

沖縄県と東京都の小笠原諸島のみ

 実は、海洋温度差発電の歴史は古く、原理が最初に考案されたのは1881年のこと。フランス人が考案した。そして、発電に初めて成功したのもフランスの化学者で、1930年のことだった。その後、第一次オイルショックを機に、フランスに加え、米国、日本が相次いで、海洋温度差発電の研究開発に着手した。1970年代には、東京電力や九州電力が実証実験を実施し、発電に成功している。しかしながら、その後、原油価格の低下やエネルギー政策の転換などに伴い、日本をはじめフランス、米国でも開発予算が削られ、研究開発は下火となってしまった。

 そうした中、唯一、地道に研究開発を続けていた人物がいた。それが、佐賀大学元学長の上原春男教授である。

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著者プロフィール

山田 久美(やまだ・くみ)

 科学技術ジャーナリスト。都市銀行システム開発部を経てフリーに転身。月刊誌やウェブサイトでハードウエア、ソフトウエアのレビュー、IT関連の記事を多数執筆。2005年3月に技術経営(MOT)修士取得。現在はサイエンス&テクノロジー関連、技術経営関連の記事を中心に、執筆活動を行っている。研究者の研究内容を聞くのが最もワクワクする時間。希望ある未来社会を実現するためのサイエンス&テクノロジーの追求をライフワークにしている。Twitterアカウントはこちら



このコラムについて

日本キラピカ大作戦

 日本はCO2排出量の削減や高齢化、需要不足など、大きな課題に直面している。そのため、日本全体に閉塞感が漂い、希望ある未来社会が描きづらくなっている。しかし、これらの課題はいずれ世界のすべての国が直面するものでもあり、今の日本を「課題先進国」と位置づけることもできる。
 「これは日本にとって千載一遇のチャンスである」と言う東京大学総長室顧問で三菱総合研究所理事長の小宮山宏氏のインタビューを皮切りに、日本が世界をリードできる技術の最先端や“産声”を追う。エコ、スマート、シルバー…。日本にはサステナブルな社会を実現するためのピカイチ技術がたくさんある。これを存分に生かして、キラキラと輝く未来を創り出そう。

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