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タイ洪水で日本企業が直面するジレンマ

なぜ日本の製造業が最も打撃を受けるのか

  • 水越 豊

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2011年11月1日(火)

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 タイで起きた大規模洪水によってサプライチェーンが寸断し、製品の生産停止を余儀なくされる事態が世界的に広がっている。東日本大震災で起きた混乱の再現だ。

 なぜ同じことが再び起きたのか。今回の事態を受けて、企業は経営の何を見直すべきか。ボストン コンサルティング グループの水越豊・日本代表が日本企業の直面する課題を指摘するとともに、いま実行すべき対策を提示する。

(取材構成は、中野目純一=日経ビジネスオンライン記者)

── 東日本大震災の時は、東北地方の太平洋側の沿岸部が津波で甚大な被害を受け、サプライチェーンが寸断し、製品の生産を停止する事態が日本だけでなく海外でも広がりました。今回はタイで大規模な洪水が起きたことが、同様の事態を引き起こしています。タイがこのように世界のモノ作りのアキレス腱になるほどの生産拠点に発展したのはなぜでしょうか。

水越:まずタイはほかのアジアの国々、例えば中国とは生産拠点として異なる発展をしてきた点を考慮する必要があります。

 基本的に企業が生産拠点を移転する際に最初に考えるのは、コストの低い労働力の確保です。ただし、進出先は労働集約型の産業とそうでない産業とで異なる。例えば、衣料品や靴、オモチャのような軽工業製品を生産する労働集約型の産業では、大規模な設備や機械を必要としないので、とにかく低いコストの労働力を追求する。

 まず中国に進出して、低コストの労働力を求めてどんどん内陸部へ拠点を移していく。今では進出先は中国だけでなく、ベトナムやラオス、カンボジアといった国々に広がっています。このように次々と生産拠点を移転できるのは、大規模な設備や機械が要らないので、短期間で立ち上げられるからです。

 一方、自動車のように労働集約型でない産業は事情が異なります。大規模な設備が必要だし、部品を供給してくれるサプライヤーも必要とされます。ですから産業集積や技術集積がない国には出ていけない。

 自国から主要なサプライヤーと一緒に進出する場合も多いですから、ある程度のインフラが整備され、質の高い労働者を確保できることなどが条件として求められます。

 タイはASEAN(東南アジア諸国連合)の加盟国の中では経済レベルが高く、そうした条件がそろっていた。日本人にとって生活しやすいこともあって、早い時期から自動車産業などの進出先になったのです。

代替の利かない「特注品」が生産停止を長期化する

 今ではマレーシアやインドネシアにも進出していますが、ラオスやカンボジアはまだ出ていける状況ではない。インフラが整備されておらず、質の高い労働者も確保できないからです。さらに市場としての規模もまだまだ小さい。

 労働集約型の産業でない限り、コスト全体に占める人件費の割合は低い。ですから、賃金の安い国かどうかということよりも、産業や技術の集積があるかどうかの方が重要になります。一方で、人件費が高いところには戻らないので、タイへの産業集積がさらに進んだというわけです。

── そのタイで洪水が起きて、製品の生産を停止する事態が広がっているのは、東日本大震災の時と同じ現象だと考えていいのでしょうか。

水越:産業が集積している規模には違いがありますが、基本的には同じ現象だと思います。東日本大震災の時に判明したのは、被災した小さな工場でしか作っていない「特注品」を調達できないことが生産停止の引き金になったということです。

 例えば、自動車のドアの周囲にゴムがついています。あれは同じ自動車メーカーの車でも車種ごとに違っているそうです。何が違うかというと、添加剤だという。その添加剤は中小規模の会社が製造している。そこが被災してしまうと、その添加剤の入ったゴムを使用している車種まで製造できなくなる。

 ドアのゴムくらい別の添加剤の入ったもので代替すればいいではないかと思うけれども、そうはいかない。ドアの閉まり具合が違ったり、高速で走行している時に揺れで音が生じたりするから、同じ品質を保てないと。だから車まで作れなくなるというわけです。

 そうした細部にまでこだわって高品質の自動車を製造しようとしている日本の自動車メーカーならではの話ですが、そうした代替の利かない部品がタイにどれだけあるかによって、生産停止が長引くかどうかが決まります。

コメント6件コメント/レビュー

 野放図に,当然のように国内の産業を空洞化させて海外移転すれば、こんなことは普通に起きること。 リスクを予測できない企業の自業自得。同情する余地はない。中国、ベトナム、インド、何処をとっても同じ事が起きる危険は普通に存在する。 国内で企業活動をすることの社会的責任や存立の意義を再考すべき時では。(2011/11/03)

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 野放図に,当然のように国内の産業を空洞化させて海外移転すれば、こんなことは普通に起きること。 リスクを予測できない企業の自業自得。同情する余地はない。中国、ベトナム、インド、何処をとっても同じ事が起きる危険は普通に存在する。 国内で企業活動をすることの社会的責任や存立の意義を再考すべき時では。(2011/11/03)

ゴムの例が引き合いに出されているが、心臓部のエンジンに至るまでそういう状態である。特注部品を無くせば、昔の油漏れするガタピシ車に戻ってしまうし、慣らし運転は絶対に必要になる。慣らしてもアウトバーンクラスの高速道路なんて危険で走れなくなる。■リスクはメリットとの引き算でどこまで許容するか考えるべきで、バランスが肝要ですが、バランスを取るのは時間がかかるものです。(2011/11/01)

今回のタイの洪水を考え直す材料を提供してくれた。『想定していなかったリスクが顕在化した時に素早く対処できるような体制』とは例えばどの様なものなのか今一歩踏み込んでもらえるともっと良かった。私もアメリカや中国での勤務経験を持っていてグローバル・サプライチェーンに実態も間近に見て来たので他人事ではない。私なりに考えると『リスクが顕在化』に対応するには情報、物、人のバックアップ体制を常に用意しておくと言う事だろう。情報は設計図にしろ配合表にしろ用意にバックアップを持てるが、問題は物と人。物は、例えば部品であるが、どの会社も在庫削減を目一杯進めているので災害等で生産設備がやられると途端に鵜供給がストップしてしまう。この記事でも紹介されている様に部品によっては複数の供給拠点を持たない物もあり、結局は全ての生産品目を『万一』の場合にはどの様に生産継続するのか各社が計画書に纏めて準備しておく、という事だろう。例えば、X工場のA部品が生産出来なくなった場合はY工場で作る為にX工場の担当エンジニアと生産現場の要員若干名を直ぐに派遣できる様に該当国の政府の協力も得られる事を確認しておく。 新製品が出たり、生産拠点が変わる度に『バックアップ』は見直しを行う、といった内容になるだろう。災害の度に会社幹部がおたおたするのは情けない。(2011/11/01)

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