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サクセスストーリー、取り扱いに注意

誰かの「熱さ」が自分の弱さを浮き立たせることも

2011年11月11日(金)

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 どれほど部下たちを叱咤激励しても、その時は素直ですがモチベーションが続きません。遙さん的モチベーションの上げ方があれば…。(40代男性)

 遙から

 仕事のモチベーションをどうやって上げるかを考えさせられる貴重なシンポジウムがあった。

 テーマは“介護”。離職率が高いといわれる介護士たちの集まる会場で、それぞれのパネラーたちが討論しあうというものだ。斬新な介護を提唱実践しているカリスマ介護士(私が勝手につけた)と、素人介護経験を著した私と、同じく家族介護経験者の女性司会者だった。

 以前、私はそのカリスマ介護士と仕事をしたことがある。私が「ウンチのオムツ替えがつらかった」というと、「自分のウンチを他人に見られるほうがよほどつらい」と諭され、実に本当だ、なんと自分勝手な目線しか持たなかったのかと、心底納得したことがある。しかしそれ以降、そうでなくとも自責の念が拭えなかった介護体験にもうひとつ自責の要素が加わった。「つらい」という声を一刀両断に切られてみると、そんな感情を発した自分をも恥じるような自己嫌悪の感覚が生まれた。

 正しい人は、正しくない人の弱音を封印する。そして、元気を奪う。しかし、なんといっても正しくない側の人間のそれはしょせん愚痴だ。

 その日のシンポでも会場から介護士の弱音が出た。頑張ろうと思うのだけれど、労働のきつさにモチベーションが続かない、といったものだった。

 カリスマは諭した。

 仮に、認知症患者にみられる症状で、「カネを取られた」というのがある。親身な介護をしてもなお泥棒扱いをされることも介護士のモチベーションを下げるが、それは違う。あらゆるものを忘れていく患者が、泥棒とはいえ自分という人間のことは記憶してくれていた。他は忘れているのに、だ。患者のもっとも身近な人間に自分がなれたことに感動できないか。

 泥棒と名指しされたことに感動と喜びを、というカリスマの視点の転換に、会場は沸いた。
 会場から弱音を吐いた青年も「わかりました。有難うございました」と着席しようとした。

 その時だ。

 「本当にわかったんですか」と司会者が青年を止めた。その声にはかすかな叱責があった。
 「え?」と叱責の意味がわからない青年はたじろいだ。

 司会者は重ねて言った。
 「それでいいんですか? それで本当に明日から頑張れるんですか?」

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「サクセスストーリー、取り扱いに注意」の著者

遙 洋子

遙 洋子(はるか・ようこ)

タレント・エッセイスト

関西を中心にタレント活動を行う。東京大学大学院の上野千鶴子ゼミでフェミニズム・社会学を学び、『東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ』を執筆。これを機に、女性の視点で社会を読み解く記事執筆、講演などを行う。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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