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“清武の乱”とベイスターズ買収騒動に通じるあの問題

2011年11月17日(木)

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 昨年来、世間を騒がせていた横浜ベイスターズ買収問題がディー・エヌ・エー(DeNA)への売却でようやく落ち着いたと思った1週間後、今度は読売ジャイアンツの清武英利球団代表兼ゼネラルマネージャー(GM)が、読売新聞グループ本社代表取締役会長・主筆の渡辺恒雄氏を内部告発しました。

 この2つの騒動で、歴史と伝統ある日本シリーズの存在感がすっかり霞んでしまったのは大変残念なことですが、私はこの2つの騒動には共通した違和感を覚えます。「適切なリーグマネジメント」という視点の欠如です。

求められるリーグマネジメント

 まず、清武氏による内部告発ですが、米国ではオーナーによる人事介入はよくある話とまでは言いませんが、度々起こることがあります。米国では個人がチームを保有することが多く、その点で日本とは事情が少し異なりますが、渡辺氏もジャイアンツの親会社である読売新聞の代表取締役会長であり、実質的なオーナーと目されています。

 球団経営では、オーナーが金を出し、GMが選手を獲得し、監督が采配を振るうという役割分担が一般化しています。レストランに例えれば、オーナーが金を出し、GMが食材を購入し、監督が料理を作るというイメージになりますが、中には購入する食材や調理方法にまで細かく指示を出すオーナーもいます。

 米メジャーリーグ(MLB)ニューヨーク・ヤンキースのオーナーで、昨年亡くなったジョージ・スタインブレナー氏や、米プロフットボールリーグ(NFL)オークランド・レーダーズのオーナーで、こちらも先月亡くなったアル・デービス氏はそうした“金も出すが、口も手も出すオーナー”の典型例と言えるかもしれません。

 スタインブレナー氏は自分の意に沿わない人物はすぐに解任することで有名で、1973年にオーナーに就任してから2010年に亡くなるまでの37年間に延べ14名のGMと25名の監督を迎えています。デービス氏はGMも兼務していましたが、度々選手起用にも口を出すことが現場との軋轢を生み、多くの監督が去っていきました。

 しかし、こうした場合でもGMや監督が在任中にオーナーを批判したり、内部告発することは通常ありません。トップダウンでの球団経営が常である米国では、自分の生殺与奪権を握るオーナーの方針に楯突けば、ハッピーエンドにならないことを良くわきまえているからです。

 もちろん、オリンパスのように重大な法令違反の可能性があれば話は別ですが、人事介入は単に組織内部の役割分担が乱されたという“内輪揉め”のレベルの話であって、コンプライアンス(法令順守)とは次元の違う話でしょう。この点は多くの方が既に指摘されているかと思います。“鶴の一声”による人事介入が良いと言うつもりはありませんが、わざわざ日本シリーズの前日に文部科学省で内部告発の記者会見を行うのが相応しかったかどうかは意見が分かれるところでしょう。

 私が感じたもう1つの違和感は、清武氏が「プロ野球界の私物化」に言及している点です。渡辺氏による人事介入を「ジャイアンツの私物化だ」というなら納得しますが、それをプロ野球界全体の問題に広げるのはいささか敷衍しすぎのように感じます。こうした思いの裏には、ジャイアンツがプロ野球の誕生から「球界の盟主」としてプロ野球界を盛り上げてきたという強い自負があるからだと思います。

 実際、読売テレビの独占放送により全国にファンを増やし、ジャイアンツ戦のテレビ放映権が今日の野球界を支えてきたのは事実ですから、その思いは分からなくもありません。しかし、球団経営者がリーグ経営を語るのは利害相反があります。「プロ野球界の私物化」を問題視するのは、一球団経営者ではなくコミッショナーの仕事です。

 ジャイアンツのテレビ放映権頼みの「全国放送モデル」は、視聴率の低下に伴う放映権料の下落で既に陳腐化しており、球団経営には地域密着型の自助努力が求められています。プロスポーツリーグ経営の本質とは、「強くて儲かる球団を作る」という個別最適と、「プロ野球界全体の市場を広げる」という全体最適のぶつかり合いです。しかし、ジャイアンツが事実上この2つの機能を同時に果たしてきたという特殊性から、日本球界では独立した後者の機能が育っていません。

 今日本球界に求められているのは、清武氏や渡辺氏の手を煩わせる必要のないよう、リーグ全体の利害を考えて各球団経営とバランスさせる独立したリーグマネジメントの存在でしょう。

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「“清武の乱”とベイスターズ買収騒動に通じるあの問題」の著者

鈴木 友也

鈴木 友也(すずき・ともや)

トランスインサイト代表

ニューヨークに拠点を置くスポーツマーケティング会社、「トランスインサイト」代表。一橋大学法学部卒、アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア)出身。スポーツ経営学修士。中央大学非常勤講師

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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中谷 巌 「不識塾」塾長、一橋大学名誉教授