「日本キラピカ大作戦」

「微生物カプセル」でレアメタル回収

インジウムや白金…工業排水が「資源」になる

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2011年11月22日(火)

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 現在、森下仁丹が、2013年の実用化を目指し、大阪府立大学、長瀬産業と共同で、微生物を使ったレアメタル回収事業を推進している。これは、金属イオンを体内に吸着し還元することができる微生物をバイオカプセルの中に閉じ込めて回収しようというものだ。

 森下仁丹らは、まずは、これまで濃度が薄く採算が合わないため、回収されることなく廃棄されていた工業排水中のレアメタル回収に役立てる計画だ。

森下仁丹・研究開発本部・カプセル開発部の釜口良誠氏(左)と田川大輔氏
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 「微生物を閉じ込めたカプセルを工業排水の中に1日入れて置いておくだけで、排水中に溶けているレアメタルを簡単に回収できる。しかも、排水のpH(水素イオン濃度指数)を制御すれば、回収したいレアメタルだけを選択的に取ることができる」

 こう語るのは、森下仁丹の“ミスターカプセル”こと、研究開発本部・カプセル開発部の釜口良誠主幹である。釜口氏は入社以来、約30年にわたり、カプセルの研究開発に携わってきた。

「都市鉱山」生かす道

 森下仁丹と言えば、その名の通り、「銀粒仁丹」で一世を風靡した1893年創業の老舗企業である。その森下仁丹が、大阪府立大学の小西康裕教授らと共同で、レアメタル回収カプセルを開発した。現在、2013年の実用化を目指し、事業を推進中だ。2011年3月には、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「希少金属代替・削減技術実用化開発助成事業」にも採択されている。

 ことの始まりは2008年にさかのぼる。小西教授が、ある微生物が溶液中に溶けている金属イオンを体内に吸着し、常温常圧下で還元することを発見したのがきっかけだ。しかも、溶液のpHを変えるだけで、吸着する金属が変わるのである。

 そこで小西教授は、この微生物を使って、工業排水中に溶けているインジウムやパラジウム、白金などのレアメタルや希少貴金属を回収できないかと考えた。

 広く知られている通り、レアメタルは、今後、大幅な市場拡大が見込まれるすべてのハイテク製品に欠かせない。しかしながら、日本は、資源国の偏在による価格の高騰や供給制限により、大きな資源リスクにさらされている。

 その一方で、レアメタルを含む廃棄物の家電製品や小型家電の山は「都市鉱山」とも言われており、日本は、皮肉にも世界で有数の都市鉱山の埋蔵量を誇っている。

 それにも関わらず、いまだに都市鉱山の多くが不燃ごみとして廃棄処分されているのは、回収とリサイクルに手間とコストがかかるため、採算が合わないからだ。

 また、既存のレアメタル回収方法の場合、大量に薬品を使うため環境負荷が大きいという課題もある。さらに、工業排水中にも様々なレアメタルが溶けているが、濃度が薄いため、回収されることなく廃棄されてしまっている。

 それに対し、小西教授が発見した微生物であれば、低濃度の排水であっても、短時間で簡単にレアメタルを回収することができる。しかも、微生物自体、池や沼にいくらでもいるありふれた種類なので、コストもあまりかからない。

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著者プロフィール

山田 久美(やまだ・くみ)

 科学技術ジャーナリスト。都市銀行システム開発部を経てフリーに転身。月刊誌やウェブサイトでハードウエア、ソフトウエアのレビュー、IT関連の記事を多数執筆。2005年3月に技術経営(MOT)修士取得。現在はサイエンス&テクノロジー関連、技術経営関連の記事を中心に、執筆活動を行っている。研究者の研究内容を聞くのが最もワクワクする時間。希望ある未来社会を実現するためのサイエンス&テクノロジーの追求をライフワークにしている。Twitterアカウントはこちら



このコラムについて

日本キラピカ大作戦

 日本はCO2排出量の削減や高齢化、需要不足など、大きな課題に直面している。そのため、日本全体に閉塞感が漂い、希望ある未来社会が描きづらくなっている。しかし、これらの課題はいずれ世界のすべての国が直面するものでもあり、今の日本を「課題先進国」と位置づけることもできる。
 「これは日本にとって千載一遇のチャンスである」と言う東京大学総長室顧問で三菱総合研究所理事長の小宮山宏氏のインタビューを皮切りに、日本が世界をリードできる技術の最先端や“産声”を追う。エコ、スマート、シルバー…。日本にはサステナブルな社会を実現するためのピカイチ技術がたくさんある。これを存分に生かして、キラキラと輝く未来を創り出そう。

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