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「ユーロ危機」は日本まで燃え広がるのか

2011年11月28日(月)

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 ユーロ危機が終わらない。2008年秋に起こったリーマンショックの後、春から夏にかけ、年中行事のように、ユーロの危機は叫ばれてきた。アイスランド、アイルランドという二人の前座役者を経て、昨年春に登場した中堅ギリシャは2年連続主役の座を譲らずに、大物イタリアやスペイン、さらには超大物フランスまで引っ張り出してきた。世界経済が混乱する中、十分な統治能力を発揮していないように見えるEU通貨同盟の対応に、年単位の混乱は月単位から週単位の混乱にサイクルを速め、世界はリーマンショックを超える金融危機の影に怯えている。

 混乱のサイクルが速まっている中でも、日本での報道は、比較的短期のシナリオに基づいた「対岸の火事」的な扱いのものが多い。

 だが、今回の金融危機は、日本経済に対して、円高を始め多くの影響、脅威と機会を与えている。本稿では、いつものように俯瞰的な視点に立ち、今回の危機の本質を捉えた上で考え議論するための材料と切り口を、提供する事を試みたいと思う。

世界はどのような状況になっているのか?

リーマンショックから現在に至るまで、米国やEUでは、金融緩和を進めつつ国債を発行、財政を拡大し景気対策を行ってきた。

 EUにおいては景気回復とインフレを見越し、ECB(欧州中央銀行)は2011年4月より政策金利を利上げに転じた。しかし現状において先進国経済は、先送りにされた国と民間の債務が経済の足を引っ張り続け、成長軌道に乗っていない。結果として早い利上げで危機に拍車をかけてしまったECBは、早くも11月には利下げに転じた。

 一方で、各国が発行する国債の消化は財政状況の悪化に伴い、徐々に難しくなってきている。ババを引きたくない国債の引き受け手(主として金融機関)たちは債券価格の下落にいら立ち、投機で稼ぐヘッジファンドは次の問題を探し、金融緩和で得た豊富な資金(その多くは結果として増幅された不安にさいなまれる金融機関からの資金であるところが皮肉)をもとに、不人気な順番で各国を標的にしていく。

 中央銀行であるFRB(連邦準備銀行)やECBは、問題の波及を防ぐためにひたすら国債や社債の購入を続けている。それが結果として、更なる金融緩和となり通貨安をもたらしているが、経済が回復しない状況に於いては、ばらまいた現金の過半は比較的安全と思われる国の国債購入や債務の返済に充てられており、経済の拡大に向かわない。「もっと値段が安くなる」あるいは、「もっと景気が悪くなるかもしれない」と思えば、いくらお金の供給を増やしても、それは経済活動に向かわない。

 日本を除く先進諸国も結局、資産デフレの影響を過小評価した日本のバブル崩壊以降の1990年代と、誰がどう違うと説明しようがほぼうり二つの様相を呈している。

 そのような状況において、通貨や金融に関しては、もはや国家間で対応が早い者勝ち(やったもの勝ち)の戦争状況にあると言える。

 そして日本の対応は常にと言っていいほど、後手かつ五月雨的であり、結果としてじりじりと敗北を拡大させ経済の足かせである為替レートや交易条件が重くのしかかる状況になっている。

今日のギリシャ

 ユーロ危機のトリガーとなったギリシャで、今回ようやく退陣に至ったパパンドレウ首相は、名門政治家の3代目である。

 全ギリシャ社会運動という当時の野党党首であった彼は、リーマンショックの余韻醒めやらぬ2009年秋に国民の期待を背負い政権交代を果たした。

 彼は国家財政を過去に遡って調べ、ギリシャの国家財政に関する粉飾を明らかにした。ゴールドマンサックスが販売した金融商品により、国家財政において為替スワップを用いた「飛ばし」が行われていた事実も明らかになった。彼は、彼の政党の支持基盤である労働組合を始め国内の各階層と対話をおこなうとともに共に、ユーロ圏のステークホルダーたちと対話を重ね多くの前向きな事を約束した。彼は危機におけるヒーローになろうとしたが、結果として果たせなかった。

 何故だろう? 理由は簡単である。残念なことに、その多くの約束は、楽観的な上内部的に矛盾しており、更に彼は決定的にリーダーとしての政治的実行力を欠いていたのである。ヨーロッパにおいて同様の危機に瀕したアイスランドやアイルランドは、着実に約束を履行しているにもかかわらず、世界は今、彼の出来もしない空約束の結果、恐慌の縁をのぞいている。

 ここまで読んできて、パパンドレウ首相に似た人物が思い浮かばないだろうか? そうビンゴ。彼は我が国の鳩山元首相にそっくりなのである(もっとも、内外の知人にこの話をすると、とりあえず2年間だまし続けるだけの力量を持つパパンドレウと、半年で馬脚を現した鳩山さんを比べるのは余りに失礼、といった声も多い)。

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「「ユーロ危機」は日本まで燃え広がるのか」の著者

大上 二三雄

大上 二三雄(おおうえ・ふみお)

エム・アイ・コンサルティンググループ株式会社 代表取締役/北九州市 参与

1981年東京大学工学部を卒業後、アンダーセンコンサルティング(現:アクセンチュア)入社。企業の戦略、オペレーション、IT、アウトソーシングを中心にしたさまざまな企業改革に従事。事業開発グループ統括パートナーとして事業開発・ベンチャー投資の責任者を務めた後、2003年に退社。現在、エム・アイ・コンサルティンググループ株式会社代表取締役。他に北九州市参与、立命館大学MBA客員教授、東京大学EMPアドバイザー、ISL幹事などを務める。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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